皇子と王女は珍道中!

三条

文字の大きさ
8 / 9
曹帝国編

4話

しおりを挟む
   


   馬車を走らせること一月。

   私と晴凱は、曹帝国の西にある都市、珱圭ヨウケイへと到着した。

  そこは想像していたよりもずっと大きな都市で、かつてはかなりの大きさの国家が栄えていたそうだ。
  珱圭には、西征の為の要塞があり、本来であるならば、晴凱がそこの主をしているのだ。

  しかしまあ、当の本人は弟にその役目を押し付けて、世界中をブラブラとしている歴史オタクときた。
  それを皇帝は黙認しているのだから、一体この国はどうなっている事やら・・・。


  「それにしても、噂では帝国の侵略ぶりは聞いてたけど、まさかこんな所まで来ているとはねぇ・・・。」
  「なんだ、知らなかったか。」
  「私も忙しいのでね、その頃は丁度帝国の裏側の国にいたよ。」
  「ふ。さあ、見えたぞ、あれが我が帝国が誇る無敵の要塞、玄英城ゲンエイだ。」
  



ーーー



  そこからはトントン拍子に話が進み、私も顔見知りの将軍達がかなりいたので、挨拶回りを済ませながら要塞の奥へと進む。 

  ちなみに今私がいるのは、玄英城の中でも中枢機関が収まっている鴻臚棟コウロトウだ。これから憐れな弟君、晴明殿に会いにゆく。


  ギイイイ、と音をたて、開いた扉の向こうには、紙の束、束、束。そして紙の塔、塔、塔。
  中からは、何やら人の呻き声まで聞こえる。

  「元気か、晴明よ!」
  「呑気に挨拶しとる場合か!見ろよこの書類の山!」
  キラリと歯磨き粉の宣伝よろしく、白い歯の爽やかスマイルをかました晴凱は、目の前の現実に軽く現実逃避をしたようだ。


  何だかんだで書類の山に埋もれていた弟君、晴明殿を発掘し、そのへんにいたいた文官をとっ捕まえてそれらを捌いた後、やっとこさ私は彼に挨拶が出来た。
  「久方ぶりです。晴明殿。」
   書類の山が片付いたので、窓から差し込む光がやや眩しい。さっきは暗かったので彼の顔は見えなかったが、先程から晴明殿の顔が良く見える。

  昔はあんなにあどけなくて可愛らしかったが、今ではすっかり煌めく美丈夫ぶりだ。連日の忙しさからか、少し頬がコケてはいるが、街を歩けば間違いなく、老若男女関わらずナンパされそうなくらいだ。
  「はい。お久しぶりです。アナスタジオ王子、晴凱兄上。」
  ニッコリと微笑み、茶をすする彼は、ヤバイくらい綺麗だ。
  「それで、兄上。今回帰国を促した件についてですが・・・。」
  「ああ、知っている。あの件だろう。」

  (?あの、件・・・?)

  「はい。どうなさるのです?」
  「・・・・・・。」

  はいは~い!質問質問!
  「あの件ってなに?!」
  さっきからあれだのこれだの、私にはサッパリ分からん!

  「兄上の結婚に関してですよ。」

  ・・・・・・・・・。結婚?
  「すればいいじゃん。同棲遅かれ早かれするもんなんだし、どうせ家には滅多にいないんだし。」

  「っはぁ~~。そういう問題じゃねえんだよ。」
  「じゃあ一体どういう事よ?」
  「王子、家は一夫多妻制ですよ?兄上は時期皇帝、後宮を持つことを許される立場ですから、正妃争いだの何だの、男でも色々面倒なんですよ。」

  へー。話聞いてる限り、そちらの皇帝は、昔は正妃そっちのけであちらこちらに寵姫をつくっては子供拵えてたって聞いてるけど、普通は皇帝でもそのへんは配慮するものなんだね。
 
  「李家の姫君と紫家の姫君、それから朴家の姫君二人が後宮入りをしていますよ。」
  「既にか。」
  「既に、です。どの姫君も、父君の身分が無駄に高いので、そう易々と断ることも出来ないのです。」

  何でも、それに便乗して次々と後宮入りしているお姫さん達が沢山いるらしく、問題になっているそうだ。

  本人は国にすらいないっていうのに・・・。
  「わぉ、肉食系女子ってやつだねぇ。うちの国にはそういう問題、隠し子とかご烙印とかでしか浮上しないから。」
  かくいう私も、先王の隠し子だし。

  「どこかに使い勝手のいい姫君はいないものか・・・・・・。」
  「勘違いせず、穏便に、かつ迅速に後宮を畳んでくれるある程度身分があり、教養のある人・・・。」




  結局この話は有耶無耶に終わり、首都に向かう三日後までに対策を考えるのだそうだ。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~作者より~

  御拝読ありがとうございます。
  曹帝国編に入りましたが、おそらく、曹帝国編は、かなり長く続くと思います。
  是非、お付き合い下さい。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

異世界の花嫁?お断りします。

momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。 そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、 知らない人と結婚なんてお断りです。 貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって? 甘ったるい愛を囁いてもダメです。 異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!! 恋愛よりも衣食住。これが大事です! お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑) ・・・えっ?全部ある? 働かなくてもいい? ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です! ***** 目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃) 未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。

最高魔導師の重すぎる愛の結末

甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。 いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。 呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。 このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。 銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。 ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。 でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする…… その感は残念ならが当たることになる。 何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...