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曹帝国編
4話
しおりを挟む馬車を走らせること一月。
私と晴凱は、曹帝国の西にある都市、珱圭へと到着した。
そこは想像していたよりもずっと大きな都市で、かつてはかなりの大きさの国家が栄えていたそうだ。
珱圭には、西征の為の要塞があり、本来であるならば、晴凱がそこの主をしているのだ。
しかしまあ、当の本人は弟にその役目を押し付けて、世界中をブラブラとしている歴史オタクときた。
それを皇帝は黙認しているのだから、一体この国はどうなっている事やら・・・。
「それにしても、噂では帝国の侵略ぶりは聞いてたけど、まさかこんな所まで来ているとはねぇ・・・。」
「なんだ、知らなかったか。」
「私も忙しいのでね、その頃は丁度帝国の裏側の国にいたよ。」
「ふ。さあ、見えたぞ、あれが我が帝国が誇る無敵の要塞、玄英城だ。」
ーーー
そこからはトントン拍子に話が進み、私も顔見知りの将軍達がかなりいたので、挨拶回りを済ませながら要塞の奥へと進む。
ちなみに今私がいるのは、玄英城の中でも中枢機関が収まっている鴻臚棟だ。これから憐れな弟君、晴明殿に会いにゆく。
ギイイイ、と音をたて、開いた扉の向こうには、紙の束、束、束。そして紙の塔、塔、塔。
中からは、何やら人の呻き声まで聞こえる。
「元気か、晴明よ!」
「呑気に挨拶しとる場合か!見ろよこの書類の山!」
キラリと歯磨き粉の宣伝よろしく、白い歯の爽やかスマイルをかました晴凱は、目の前の現実に軽く現実逃避をしたようだ。
何だかんだで書類の山に埋もれていた弟君、晴明殿を発掘し、そのへんにいたいた文官をとっ捕まえてそれらを捌いた後、やっとこさ私は彼に挨拶が出来た。
「久方ぶりです。晴明殿。」
書類の山が片付いたので、窓から差し込む光がやや眩しい。さっきは暗かったので彼の顔は見えなかったが、先程から晴明殿の顔が良く見える。
昔はあんなにあどけなくて可愛らしかったが、今ではすっかり煌めく美丈夫ぶりだ。連日の忙しさからか、少し頬がコケてはいるが、街を歩けば間違いなく、老若男女関わらずナンパされそうなくらいだ。
「はい。お久しぶりです。アナスタジオ王子、晴凱兄上。」
ニッコリと微笑み、茶をすする彼は、ヤバイくらい綺麗だ。
「それで、兄上。今回帰国を促した件についてですが・・・。」
「ああ、知っている。あの件だろう。」
(?あの、件・・・?)
「はい。どうなさるのです?」
「・・・・・・。」
はいは~い!質問質問!
「あの件ってなに?!」
さっきからあれだのこれだの、私にはサッパリ分からん!
「兄上の結婚に関してですよ。」
・・・・・・・・・。結婚?
「すればいいじゃん。同棲遅かれ早かれするもんなんだし、どうせ家には滅多にいないんだし。」
「っはぁ~~。そういう問題じゃねえんだよ。」
「じゃあ一体どういう事よ?」
「王子、家は一夫多妻制ですよ?兄上は時期皇帝、後宮を持つことを許される立場ですから、正妃争いだの何だの、男でも色々面倒なんですよ。」
へー。話聞いてる限り、そちらの皇帝は、昔は正妃そっちのけであちらこちらに寵姫をつくっては子供拵えてたって聞いてるけど、普通は皇帝でもそのへんは配慮するものなんだね。
「李家の姫君と紫家の姫君、それから朴家の姫君二人が後宮入りをしていますよ。」
「既にか。」
「既に、です。どの姫君も、父君の身分が無駄に高いので、そう易々と断ることも出来ないのです。」
何でも、それに便乗して次々と後宮入りしているお姫さん達が沢山いるらしく、問題になっているそうだ。
本人は国にすらいないっていうのに・・・。
「わぉ、肉食系女子ってやつだねぇ。うちの国にはそういう問題、隠し子とかご烙印とかでしか浮上しないから。」
かくいう私も、先王の隠し子だし。
「どこかに使い勝手のいい姫君はいないものか・・・・・・。」
「勘違いせず、穏便に、かつ迅速に後宮を畳んでくれるある程度身分があり、教養のある人・・・。」
結局この話は有耶無耶に終わり、首都に向かう三日後までに対策を考えるのだそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~作者より~
御拝読ありがとうございます。
曹帝国編に入りましたが、おそらく、曹帝国編は、かなり長く続くと思います。
是非、お付き合い下さい。
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