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東の森遠征 3
しおりを挟む「ゼノ。グレンとルカは……」
「あー、うん……。ルカは聖属性の魔法を使って何とかしてみるそうだ」
いや、絶対に嘘に決まってるけど……。強いて言えば前回の時、ルカとグレンはそういう関係になってしまっていると推測すれば少しは安心してしまう自分は些か薄情なのだと思ってしまう。たぶん前回気付かなかったのはルカの部屋の隣がグレンと俺の部屋で俺はアンディと部屋でルートの確認をしつつ酒を飲んでいたのでそのまま酔いつぶれて部屋に戻っていないからだろう……。
「アンドレア。すまないがルカに頼まれ事をされてな。ちょっと手伝ってもらえるか?」
「それは構わんぞ? 薬草集めかなにかか?」
俺は首を横に振り、近くの侍従にこの場を離れることだけを告げて歩きだすと彼は無言でついてきた。野営地から少し離れた場所で立ち止まると俺は小声でルカに頼まれたことを伝えた。
「ルカが言うには誰かはわからないが、偵察をしている人がいるはずだから絶対に捕まえてと言っていた。それでだ、もし俺が偵察をするならばという想定で弾き出した場所へ背後から静かにいくぞ。アンディは風魔法で拘束をしてくれ。そしてこの縄で改めて拘束をする」
わざわざ遠回りして背後から確認するとアンディが魔法を使って捕まえることができた。
「俺を誰だと思ってる! こんなことをしてタダじゃおかないからな!」
「いやなんか変態の極みみたいに盗み見してる人に言われてもなぁ……」
「なっ! 変態だと!? 国王の命で来ている俺に変態だと!?」
その瞬間、俺とアンディは一気に殺意が芽生えた気がする。俺が5歳の頃からグレンを手に入れようと画策する変態というかゲスの命令ねぇ……。口を滑らせたのがコイツの運の尽きだわ……。あれ? そう言えばどことなくコイツ、グレンの色味に似てないか? 顔や声、性格とかは違うけども……。
「アンディ。さっき戦った場所にコイツを放置しておこうか……。モンスターに襲われなけりゃ、きっと朝まで生きてるだろうよ」
「あぁ、そうだな……」
アンディがバカを肩に担いで歩き出し、現在グレンが苦しんでいる原因のランプの血がまだ乾かずに滴る場所へと放り投げた。彼は手を後ろ手に縛っているから立ち上がれないのだろう。ジタバタともがいては顔や服は血で染まっていった。あのグレンが抑えきれないほどの衝動なのだから毒というか媚薬の効果としては相当なものなのだろう。
「一晩苦しめ」
俺は思いの外、冷たい声が出たのにビックリしたもののアンディと野営地に帰ると辺りはもう薄暗く、丁度食事が出来た頃だった。さすがにお腹すいたわ……。チラリとグレンのテントを見ると灯りはなく、真っ暗だった。魔法の壁は健在。もしくは症状が落ち着いて二人とも寝たか?
「あの、団長とルカくんの食事は平気ですかね……」
「大丈夫だよ。ルカもたぶん手ぶらではないと思うし、とりあえず俺とゼノが火の番をするからお前達は体を休めるように! 明日も朝食を済ませたらモンスター討伐だから夜更かしはするなよ!」
俺達は交互に休めばなんとかなるだろ……とアンディがくつくつと笑ってそう言った。ま、そのとおりと言えばそのとおりか……。そして団員が眠りにつき、日付が変わる頃にルカがテントからゆっくりと出てきた。寝てなかったのか、お前……。疲れたような元気のような、なんとも表現しづらいルカと少し話をし、あの変態の僕の報告をするとルカは頷いてから野営地に範囲のヒールをかけると「お休みなさい」とまたテントへ戻っていった。どうやらあの表現しづらかったのは眠かったのだと予測した。
早朝、侍従が朝食を準備するのに起きてきて、俺とアンディは昨日のヤツのところへ行った。
「クリーン!」
「てか、服の中身はどうしたんだ? 素っ裸でお出掛けとかなかなかすごいやつが現れたな。さすが変態の僕ってところか?」
ヤツの着ていた衣類と靴などの装飾品、ロープが全て残されていたのでロープだけを俺は回収した。
ソレからはルカや回復したらしいグレンと朝食を食べた。食後のお茶を飲みながらのミーティングでまるで王子のようなと揶揄される美人で優しいが代名詞のグレンと、この騎士団メンバーから天使のように可愛いと評判のルカ。そんな見目抜群の二人による珍しい兄弟喧嘩を見つつ、俺が前みたいに側にいるからとグレンを説得して昼までの時間制限をもうけた。
◆
グレンとアンディが団員を率いて森へ討伐のために入っていくのを見送ったので俺たちも行くかと歩き出したのだが俺は今、ルカの魔法で作った土のテントでホットワインなるものを作るルカをじっと見つめていた。作り方もそうなのだが、ホットワインと言うものを初めて見る。温かいワインってはたして美味しいのだろうか……。だがルカの手際はとてもよかった。惜しみ無く高そうなワインを使い、手持ちの果実を入れて煮たたせ、アルコールと言うものを消すためと湯気に火の付いた枝を近づけてアルコールを完全に飛ばすのだそうだ。鍋のなかはなんというか炎が立ち上がっている。しかも惜しみ無くと言えば例え貴族であろうと高くて手にいれるのも困難なシナモンやカルダモンと言ったスパイスも入れて作っていたので、これはかなりお高い飲み物になったんではないだろうか……。値段の換算なんてしたくない。怖すぎるから。
完成したワインの入った鍋を火から離して土の上に置いているのだがソレを冷ましている間にルカから質問をして来たのでそれに答えたりと会話をしていた。もしかして今なら誰にも邪魔をされずに俺もルカに質問できるのではないだろうか……。嫌われてないといいなぁ──。
「なぁ、ルカ……。俺はお前に嫌われるようなことをしたか?」
口に出せば何故かのし掛かってきた心の痛み。実は結構ショックだったようだ。ルカを見れば義理とはいえ兄のグレンにあまっあまに甘えて、そんなに絡んでいないアンディにはそれなりに甘えている。俺だけなんて言うか壁があるというか全くなついてくれないというか……。
「……あー、その……。えっと、ゼノさん。今までごめんなさい!」
「……は?」
ルカは急に謝ってきた。しかも深々と頭を下げている。すぐにやめさせたのだが、ルカはなんとも言えない顔をして俺を見つめていた。
とにかく謝る理由を聞けば夢で何度も何度も俺が国を裏切る姿を見たからだそうで、裏切る理由がわからなくて少し警戒していたらしい。まぁ、確かに同じものを何度も何度も夢とはいえ見せられたら疑ってしまう気持ちはわからなくもない。
「そしたらね? 昨日、神様のお告げみたいな感じでさ、グレン兄さんと親友の間に亀裂が生じる事案が発生。食い止めよ! みたいな言葉が聞こえてね? もしかして! って慌ててルイスに乗ってココにきたの……。間に合って本当によかったぁ! ゼノさんがあのまま兄さんに食べられてたらゼノさん、王様に脅されてきっと玩具にされてたよ!」
「うわ……」
やべえ! 今の言葉で俺、納得してしまった。最低最悪の想定ではあるがルカの言っていた俺が国を裏切る事に繋がるのではないだろうか……。俺はきっと国王がグレンを手にするためだけに使われる。そして俺はグレンを守るためになにも言わずにこの国を出て、音信不通となるのではないだろうか……。自分の起こりうる状況を把握して冷静に考えれば考えるほど俺はこの国から出ていくことにぶち当たる。
「ゼノさん。あの……。あのね? 今まで変な態度してて本当にごめんなさい。それで、ゼノさんからしたら都合のいいことを言うなって思うかもしれないですけど、これからは知り合いというか……。グレン兄さんのお友達のお兄ちゃんみたいな感じで接してもいいですか?」
うっわ……。マジでその顔、可愛いし……。さすが天使。グレンの友達というか幼馴染みだけども友達のお兄さんか……。まぁ、アンドレアと同じ順位ならそれでも良いかな……。
「あぁ、ありがとう。嬉しいよ。俺も弟みたいに思ってもいいか?」
「っ! はい! 僕も嬉しいです!」
そしていつもとは違う笑みを見せてくれて、手を繋ぎつつ仲良く採取に出掛けたのは言うまでもない。
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