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東の森遠征 2
しおりを挟む「お帰りなさぁーい、グレン兄さん! あれ? えっと、ゼノさんもいらっしゃーい」
グレンに抱きついて嬉しそうにしているその子は俺を見つけるなり「いらっしゃい」と言ってニコニコしているが俺の目にはなにしに来たの? と言いたげな顔に見える。とりあえずグレンがルカの部屋にでも行こうかと移動を促し、そばにいた執事のヨハンさんにお茶の用意をお願いしていた。そして俺達はルカに用意された部屋に来たのだが、内装にちょっとビックリしたのは内緒だ。
でもそれにしても、この部屋ははたして13かそこらの男の子の部屋なのだろうか……。簡単に言えばどことなくと言うよりも全体に可愛らしい感じがするのだ。デスクセットはパイン材を基調にしてあり、ソファーセットは茶でまとめられたシックなゴブラン織だった。どちらかと言えば男か女かと聞かれれば女の子な部屋の様な気がするが、ルカの見た目は女の子よりも女の子らしくて可愛いし、これはこれで似合っている気もする。
「そう言えばゼノさんはどうかしたの? お仕事はお休みなの?」
「あぁ、今日は私とゼノはお休みなのですよ。それでですね? 今日はゼノがちょっとルカに聞きたいことがあるらしくてですね?」
「え、僕に? ゼノさん、なぁに?」
あれ? コイツは「俺」って言ってなかったっけ? うーん、大人っぽく見せるのやめただけか? ……てか首かしげてあどけない顔で見つめられると逆に困るのだが……。それにしたって初めて会ったときよりも可愛くないか? コイツ……。 そんなことを思っていたらグレンにガンっと肘で脇腹を攻撃された。早く言えってことなのか?
「あーその……。ルカ、あえて聞くがテントを暖かくするにはどうしたら良いと思う?」
「テントを暖かく? テントの中を暖かくってことだよね? うーん……。えーっと、まず騎士団としてのテントは本来いくつあって、何個持っていく予定なの?」
と、予想外の返事が来たのでソレに関してはグレンがルカに丁寧に教えていた。グレンがテントの構造やメンテナンスしてるものなど含めて分かりやすく詳細に説明するとルカはうんうんと相づちしながら頷いている。
なんか男共に囲まれてるせいか、ルカは可愛くて癒されるなぁ~……。
「うん、なら重いとは思うけど全部持っていってテントをまず二重にしちゃいましょう! あと底冷えが一番の大敵だと思うのでこう言った絨毯などを何枚か重ねると良いと思います」
「ソレだけですか? 二枚になって変わるものなのか?」
「じゃあ、実験しましょ?」
そう言ったルカは小さな踏み台のようなロの形を筒状のものを持ってきて穴ではないけども空いた一面に厚地の布を細めの紐で固定するように張り、中に小さな蝋燭を倒れないように火が点いた状態で固定して立てた。
「ヨハン、風をお願いします」
「はい」
案の定、すぐに火は消えた。
そして同じ生地を2枚にして同じようにすると若干ではあるが通しにくくなっていた。この実験に使用した布はテントの生地よりもはるかに薄いのだが重ねるだけでこんなにも違うものなのか……。これは俺やグレンでは絶対に思い付かなかったし、有用かもしれないと思った。
「ルカ、偉いですよ~っ」
と、頭を撫で撫でして誉める姿は無表情な人形と揶揄されるグレンとはかけ離れていた。ただ、なんだろう? 褒め方がペットに対してみたいに見えるのですが……。
◆
「こ、れは……。皆! このランプの血は毒だ! 体に掛からないように最善の注意を払え!」
グレンの言葉に一斉に気を引き閉める。あー、なるほど。前にこれが出たとき夜にルカが具合悪そうだったのはそのせいか……。見事に血塗れになってたもんなぁ……。接近戦はやめて魔法で戦う事に切り替え、主に風の魔法を使って攻撃した。そして瀕死になったところで剣で注意しながら止めを刺す。それを繰り返し残り数体という時だった。気も少し緩んだのか「うわっ」という団員の声に対して「危ない!」というグレンの声が聞こえた。俺からは離れた場所なのだが最後の力を振り絞るように団員を襲った赤色のランプにグレンが止めを刺したのだが、あれほど注意していた毒の血は団員を庇ったのでグレンが思いきり被ってしまい、日はまだ高い位置ではあるが野営地へと戻った。
「アンドレア、ゼノ。私はテントで休むので絶対に誰も入ってこないように。お前達もだ。良いね? 後の事は頼んだよ」
外見はクリーンで綺麗になっているのでわからないが、いつも見ている俺たちからしたらすごく辛そうにそう言ってテントにこもってしまった。俺とアンドレアはお互い顔を見合わせると彼も心配そうな顔をしていたので思わず少し話をしてをグレンをとりあえず休ませてやろう……ということになった。
暫くすると団員が心配そうな顔で数人がやって来た。
「あの、団長のテントから苦しそうな声が聞こえるんです」
「回復薬は無理なのでしょうか……。毒消しの薬湯とか……」
「団長がそれらを用意するように言わないってことは効かないから無駄なことはしたくないんじゃないか? な、ゼノ?」
「そうだな。効かないのに苦い飲み物を誰しも飲みたくはないよなぁ……。まぁ、来るなと言われたが俺が様子を見てくるからお前達は敵襲に備えつつ体を休めてなさい」
俺はアンドレアに場を任せて桶に水をいれてタオルと共にグレンのいるテントの中へと入った。確かに団員の言うとおり、グレンが苦しそうに息を乱しながら横になっていて、俺はタオルを水を絞ってそっと顔を拭いてやったのだが何故か急に引っ張られて彼に押し倒されていた。というか馬乗り?
「絶対に来るなと言いませんでしたか?」
「いや、みんな苦しそうなお前の声が聞こえて心配していてな?」
「なら、お前の体を貸してくれますか?」
そう言って服を脱がせようとするので思いきり抵抗し、攻防戦のようになっていた。でも体力は消耗するだけで回復はしないから体重をのせるだけのグレンとは違い俺は体力を奪われていった。
あぁ、俺、清い体だったのにグレンにこのまま奪われてしまうのだろうか……。グレンのことは嫌いではないけども苦しそうな吐息ですら外にいる団員達に聞こえるのに……。見られてはいないけども何をしているのかは筒抜けな初体験なんて絶対に嫌だ!
「グレン、マジやめっ! ん……」
服も半分くらい脱がされて首辺りをペロリと舐められてビックリしたのは仕方ないと思われる。それにこんな関係になるとは思ってないんだよ! 昔も今も! 今現在も! お願いだから正気に戻ってくれ!
「兄さんっ! ゼノさんっ!」
そんな時、ここにいるはずのないルカが慌てて中にやって来た。タイミング的にもさすがに「神!」と思ったのは内緒。ルカが慌ててグレンを引き剥がすと俺は呆然とした感じで「助かった……」と呟いた。
俺の貞操ここで散るかと思った!
「えーっと、とりあえずゼノさん? 一体何が……。兄さんはどうしたの?」
「あー……。アイツがまた出たんだよ。ランプ。身に覚えがあるだろ? 今回は緑の他に赤いのがいてさ……。その赤いのが本当に素早くてなぁ……。グレンがランプの血を浴びるなと皆に忠告して気を付けながら戦ったんだがグレンが団員を庇って思いきり赤いのの血を被ったんだ……」
乱れた服を整えながら質問に対してちゃんと説明をするとやっぱり合意ではなかったか……と言われた。例えな? 体の関係があったとしてもこの場所はさすがに誰だって嫌だぞ、いやマジで……。合意してやりたくてもこんな薄い布二枚で中の声や音が遮れるわけじゃない。どちらかと言えばこのルカとの会話だって筒抜けだ。マジで疲れたわ……。グレンは体力ありすぎじゃね?
「あー、やっぱりコレは回復薬とか回復の魔法系統は効かないんですよね……」
「そうだな。聞いたことないな」
ルカがため息をついてから俺の耳打ちで話してくれたのはランプの血はどうやら強い媚薬効果らしい……。強い媚薬効果って毒以外の何者でもないわな……。マジでなんなのあのうねうね動く気持ち悪いモンスター。
「……わかりました。家族ですし、心配ですから僕が兄さんの側にいますね。ゼノさんは夜だからといってモンスターが襲ってこないとは限らないのでそっちをお願いしますね」
「いや、でも……。ソレはさすがに……」
ルカを置いていくと俺の二の舞になるしと渋っていたらルカが耳打ちでとあるお願いをしできた。まさか! と思ったのだが彼は俺を外へ追い出すと中に来るなと魔法で土の壁を作ったようだ。辺りはすごく静かでテントからはグレンの苦しそうな声もルカの心配そうな声もなにも聞こえなかった。
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