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東の森遠征 1
しおりを挟むまぁ、何となく気にはなっていた。俺の幼馴染みで親友のグレンやアンディと話す時のルカと俺と話すときのルカの態度が微妙に違う事にはさ……。ただ、アンディと俺が同じ扱いなら別にココまで気になることはない。あまり絡みの無いにアンディよりも扱いが悪いって……。何となく悔しいというか……。それでそれをなんとなしに二人に言うと気のせいではないか? と言われた。気のせい……。気のせい? はたして本当にそうなのだろうか……。なぁ~んかなぁ……。ちょっと違う気がするんだよなぁ……。あー、もしかしてルカを密かに観察してた事を怒ってるのかなぁ……。確かにあの時の俺は『ルカ』という存在を怪しんでいた。事故に遭ったとしても常識的な部分の記憶だけが抜け落ちる……なんて都合のいい事があるだろうか……。しかし、ルカに警戒させてしまったのは自分の落ち度なのだろう。いつかソレが溶けるまでは俺は見守るしかない。
だっていつも笑っていても寂しそうなグレンを昔みたいな優しい笑みに変えてくれたのはルカなのだから──。
ルカと出会ってから俺たちの前でだけだとしても、幼い頃の……。いや、昔のように楽しそうにしているグレンを見れて本当に嬉しいんだ。この国は水属性というだけで嫌悪の対象となってしまう──。
『よくよく考えたら水って大事ですよ? 今飲んでる水がなくなったらどうします? 俺はグレンさんから絶対に離れないですね……。人も動物も作物も水は必要なものだもの……』
あの言葉でどれだけグレンを救ったのだろう。魔力検定で水と判断されたあの日から今日まで……。俺たちだけではグレンを救えなかったのに、ルカはあどけない顔で普通に救いの言葉を発した。そんなことを思いながらも目の前のドアをコンコンコンコン……と早めのテンポで叩くと中から返事が聞こえた。ふむ、ちゃんと部屋で仕事をしているらしい。善きかな善きかな──。
「グレン、少し相談なんだが…………え、お前なにしてんの?」
グレンの寮の部屋へ足を運ぶとグレンは桶に魔法で水を注いでは首をかしげていた。え、お前、ほんとに何してんの? 仕事はどうしたよ? そう思って机を見ると書類が山積みだった。え、終わったの? それともサボってんの? いまだに「ウォーター」と言っては水を出して首をかしげる幼馴染みを見つめた。
「ゼノ? どうかしたんですか?」
「あ……あぁ、ちょっと相談を、な……。ソレよりもなにしてんの?」
「え? あぁ、ルカが前にいったお湯を出せたら良いなと思ってたんですけど、なかなか難しいものですね……。ウォーター」
桶には水が溜まる一方で、グレンはため息をつくと桶に並々と注がれたらしいその水を一気に消して「難しい」と呟くなりため息を付いた。お湯……。あぁ、あの時のか……。ルカがイメージで頑張れ! みたいな無茶ぶりしたやつだよな? そんなことを思いながら空っぽになった桶を見つめた。
「俺さ、ルカの言ってたこと何と無くわかってきたんだよな……。今、グレンが水を消したことで更にわかった。いや、わかったというか、理解した」
「え? 何を理解したって?」
「ん? ほら、水は生活に一番必要な属性ってことだよ。ルカが言ってたろ?」
とりあえず話をするのでお茶を飲むことにしたのだが、侍従を呼ぶまでもない。ドアの向こう側で居座られても困る。それにお茶くらいなら自分で淹れられるので茶器を勝手に借りて淹れるとグレンに手渡し、自分もゆっくりと飲み始めた。
「俺達、こうやってお茶を飲むけど水がなければ結局飲めないだろ? もし、雨が全く降らなかったら水はどこで確保する? 川か井戸か? 天変地異か起こってソレも乾いたら? もしこの世に水属性が居なかったら人類だけでなく動物や植物。生あるものはほぼ消滅するだろうな」
「それはまたずいぶんと極論ですね」
「喉が乾けば水を飲む。当たり前すぎて気づかなかったんだよ。天変地異で雨が全く降らなかったらって……。日照りで干ばつが進んだ先の事なんて考えたこともなかった。水は見渡せばそこら辺にあるありふれたもので、魔法で出さなくたって手にはいるものだと貴族も庶民もみんな根底では同じことを思っているんだ」
そう、水が枯渇なんて考えないほどにこの世の中にありふれているものを大事にしようなんて思っていない。
「そして雨季で大雨が何日も続いたとしたら、今度は川の氾濫や地盤の緩みで水の災害が起きる。でもグレン、お前はさっき何をした?」
「あ~……。なるほど、水属性がその地にいればいるほど個々の負担がなく溢れた消せるんですね」
「13歳のガキに負けた気がしてしょうがねぇ。でも、相手がルカならなんでか悔しくはない。時々変なことを言ってるなぁ~とは思うけど、空いた時間にその事を考えると有用なことをアイツは言っている。その場で理解できなかったのが正直悔しくて仕方ないんだよなぁ……」
ルカはとにかく外面も中身も可愛い。それだけでも守らないといけないと思うのに頭もいいとか……。とにかく! 本当に、マジで、王族や貴族に狙われないようにしないといけないのだと思った。
「あー、えっと? ゼノ、それで相談とはなんですか?」
「うん……。あー、その……さ? 思い過ごしとかじゃなくて、何て言うのかな……。まぁ、簡単に言えば俺、やっぱりルカに嫌われてねぇか?」
「…………騎士団の事かと思って質問を待ってみたものの、思いきり個人的な相談内容でしたね。うーん、個人的な意見をいうならばルカはゼノを嫌っているとかそう言うことはないと思いますけど……。逆にルカがゼノを嫌いになったのだとしたらゼノが知らない間に無意識下で嫌われるようなことしたんじゃないんですか?」
俺がルカに嫌われるようなことをした……。うん、何て言うか心当たりは大いにあるのがなんとも言えない。だってアイツ、そこら辺に生えてるキノコを躊躇せずにポイポイとザルに入れていくんだぞ? それはさすがにあり得なくないか? 毒キノコだって軽い症状のものから猛毒と呼ばれるものまで混在してそこら辺に生えているのに……。しかもプロでも難しいとされる簡単には見分けのつかないものもちゃんと見極めていた。これはなんで食べられない? なんてちょっと意地悪だったかもしれないが理由を聞いたらあの子は困ったような顔で「なんかよくわからないけど食べちゃダメな気がするの」とか言って遠くに投げて棄てていた。その姿に思わずため息をついてしまうが仕方ない。
「そう言えばゼノ。本格的な冬に入る前にモンスター討伐が東の森でありますが十中八九ウチになりそうですからそのつもりで」
「わかっているさ……。でも初冬とはいえテントあっても外はさすがに寒いよなぁ……」
「そうですね……」
そう言えば前にルカにテント内で火を使ったら中毒死するから絶対にダメ! って侍従の誰かが怒られてたな……。
「グレン。ルカになにか良い方法がないか聞いてくれないか?」
「ルカに……? 私たちよりも年下のあの子に聞くのもなんかおかしな話ですけど、逆にルカと仲良くなるためにゼノが聞いたらどうですか?」
「俺? うーん、なぁ~んか俺の様子をうかがっている気がすんだよなぁ……。あとさ、グレン? お湯を出すとかあの時ルカが言った名称はウォーターじゃなくてホット・ウォーターって言ってなかったか?」
とりあえずそう言うとグレンが「ホット・ウォーター」と唱えて空の桶に出した物は本当に……。いや、お世辞抜きで生温い水だった。試しに空にしてから「ウォーター」で出した水はひんやりとしたものだったのである意味実験は成功なのだろうか……。
翌日、俺とグレンは共に仕事が休みだったのでルカのいるウォルター家の別邸(本邸はランドルフ領地)へお邪魔することにした。今の季節はモンスターも大人しくなっていく時期なので騎士団としては少し暇なので休みをとりやすく、個人的にはとても助かる。
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