裏側・クソゲーの異世界で俺、どうしたらいいんですか?

けいき

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うちの息子達

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 ガタゴトと馬車は音を立てながら我が領地に向かうために寄り道などせずに突き進む。

「ハイネ様。顔色が悪う御座いますが」

 ヨハンが心配そうに声をかけてきた。

「ヨハン。ハイネ様はアレですよ、アレ。いつものヤツです」
「あぁ、乗り物酔いですか……」

 現在、自分の馬車には御者にユリアン。中は俺、ヨハン、アンリ、元魔法副師団長だったジェラール殿。彼に至っては肩身が狭そうで申し訳ない。ただ彼にも彼用の馬車はあるのだが、彼の馬車には新たに息子となる元第四王子であるナイトリンガー殿下。現在は本人の意向でヤトと呼んでいるが彼の乳母、そして侍女数名が乗っている。一応彼女達の父親が領地のない子爵や男爵といった爵位を与えられている一応子女達だからである。そんな彼女たちを幌馬車に突っ込むのも気が引けるのでジェラール殿には申し訳ないがこちらに乗っていただいている。

「ハイネ様。回復薬をお飲みになりますか?」
「……それはいい。所でジェラール殿は魔法はどこまで覚えられましたかな?」
「ジェラールで構いません。そうですね、属性が風、火、土なのですがなかなか魔力操作が上手くいきませんね……」

 ルカ考案のカイロと言う物に彼は挑戦していた。今までは魔法をもってしてモンスターを倒していたのだから当たり前か。小さく細々とした使い方など初めてなのだろう。ただ魔導師としての視点からいうと魔力操作としてかなり有能らしい。確かに危険ではないな……。

「しかしご子息の魔法の概念はとても面白く、興味が湧きます」

 仕事中は氷の(ような)副師団長と呼ばれていた彼がなんとも楽しそうにしている。ぐっちゃんと同い年なはずだから年相応と言ったところなのだろうか……。

「そうだね。ルカとヤトは何かとやらかしてくれるからこちらとしてはハラハラしてしまうが……」

 その言葉に全員が苦笑いしていた。

「坊っちゃん達の作り出す料理を俺としては早く習いたくてしかたありませんよ」
「そうだな。それにしてもルカは今まで良く秘密にしていたものだ……。今朝の食事は素晴らしかった」

 いつものかたいパンとは違い、フワフワした物を薄めに切り、それを軽く焼いたものにバターを塗ったらしい。そしてこれもフワフワした炒った卵。薄切りの豚肉を焼いたもの。これは塩漬けにしたらしく、ほんのりとした塩味に肉の脂の甘味だろうか……。至極簡単な調理だと言うのに味付けの違いなのかとても美味しかった。

「あのトロトロとしたポタージュと言うスープは初めて飲みましたが素晴らしかったです」
「あれはヤトが作ったらしい。あの子達は本当に素晴らしいな」

 出発したばかりだと言うのにお昼がとても待ち遠しい。

「ただ、旅の予定の日程なのだが、一週間でかなり太りそうな気がしてなりませんね」

 分かる。美味しくて食べるのをやめなければならないのはわかるが美味しくて食べ続けてしまう。

「あんなにも美味しいのに坊っちゃん達は適量で止められていることに驚きましたよ」

 確かに。ヤトとルカは私達からしたらしっかりと食べなさいと言いたくなる量だけ食べて仲良くお茶を飲みながら離れたところで、嫉妬しちゃうくらいに仲良く話をしていた。後でなぜ食べないのか聞くと「起き抜けにたくさんは食べられない」と言われた。ヤトは食事が嫌いだったから今までもそうだったらしいし、ルカは今までの食生活が違うから無理~っと笑っていた。どうやらルカ達の国は朝はそんなに食べないらしい。
 それからと言うもの魔法の話をしながら休憩までの時間を過ごした。

「……お呼びしたのですがグレン様たちが降りてらっしゃらないようです」

 ヨハンが苦笑いをしている。まぁ、降りてきてないのはわかる。土の壁が無いからな……。皆が馬車や馬から降りてきたもののぐっちゃん達は一向に降りてこないので迎えに行くと中で鍵が掛かっている。

「まぁ、当たり前か……」

 出てくるまで仕方ない。叩くか……。壊れる前に出てくるといいんだが……。

 ドンドンドンドン──と何度も何度もしつこく叩くとやっとドアの鍵が開く音がしたのでこちらからドアを開けるとルカは寝ているが4人は何やら楽しそうだった。

「父上?」
「あれ? パパさん? どう…………んっ!? やべ、昼の休憩だわ」

 ヤトがそう言うとルカ以外は一斉に手に持つものを片そうとした。

「4人とも、そのカードみたいなのは何かな? あと、お尻に敷いているものも気になるところだね」

 怒らないように気を付けようと思ったが自分でも驚くほどに低い声が出た。そして怒らないように気を付けたせいで顔は笑みをくっつけていた。

「とりあえずヤトは土の壁を作ろうか?」
「はい……」

 おや、なにやら怯えられてしまった。


   ◆


「さて、何から話してもらえばいいかな」

 4人はこちらはなにも言わないのに仲良く一列に正座をして座っている。しかしルカは熟睡しているのか起きる気配を見せず、ヤトの膝に頭を、脚はぐっちゃんの膝に乗せて布団の中でスヤスヤ寝ていた。

 とりあえずルカは可愛いからそのままにしておこう。

「お尻の下に敷いていたのはなんだろうね。パパにはとても座り心地が良さそうに見えたよ」
「あー、それはですね……。俺が魔法で作ったものです」

 そう、ヤトのやらかしってことなのかな? そんなことを思ってみていればぐっちゃんがヤトを止めて「自分が煽るような事を言ったせいです」と俺を見ながらそう言った。ゼノ君とアンドレア君は「自分は止めずにいたので同罪です」と逃げようとせず、仲が良いなぁと内心関心していた。

「とりあえずあのマットは振動をそれなりに抑えてくれるみたいなのですべての馬車に使えば楽になるかなってことが判明しましたよ? 後は騎馬の鞍にも使えそうかと……」
「そう、ありがとうねぇ……で? あのカードは何かな? あと座面にあったボードみたいなのはなに?」
「カードみたいなのはトランプと言い、ボードはオセロと言いまして、玩具の類いですかね……」

 あのカードのセットで色んなゲームができるのだそうだ。そしてボードのものは表と裏で黒と白の色が塗られたものを使う頭脳ゲームだそうだ。誰が作ったかを聞くとヤトは無言。ぐっちゃんも明後日の方向を見た瞬間にスヤスヤ寝ている我が家のやんちゃな天使さんが目に入った。

「……ルカか──」

 そのぼやきにぐっちゃんとヤトはニコッと笑みを見せた。うん、ぐっちゃんは聖母のような優しい笑みを浮かべるのは止めようか? そしてヤトは綺麗な顔の作りで艶めいた笑みは止めよう?

 騎士達男どもが色めき立つでしょ!

「とにかく! 馬車での移動が楽になるのがわかったならすぐに教えてくれてもいいのではないか? ヤトはともかく3人は馬車での移動の辛さを知っているだろう!」

 思いの丈を思わず大きな声で怒鳴るように言うとルカの顔がピクッと動いた。

「うにゃーっ! うるさいにゃ! ぼきゅはねみゅ……い…………んだ……?」

 …………ルカ、お前は天使なのか? 可愛すぎるだろう!! ルカ狙いも増えたではないか!

「ぶはっ! 久し振りにルーが寝惚けた……。うん、可愛い、可愛い」

 何が起きたかわかっていない顔をしているルカの頭をヤトが可愛がるように思いきり撫で、ぐっちゃんは愛しそうに頬を撫でている。とりあえずルカの寝惚けが覚めるまでは危険だし隔離しておこう。

「ルカ、ちょっとパパと2人でお話ししようか」
「やだぁーーーーっ! 兄ぃ、兄さぁーん、たーすーけーてぇーーーー……」

 嫌がるルカをひょいっと肩に担ぎ、出したままの馬車に一緒に入ると鍵を閉めた。

「ルカ」
「はいっ! ちゃんと起きたです!」

 あーもぉ! ここ最近は特に甘えていいと理解したのか甘えん坊で、以前よりも幼い。可愛すぎるだろう。ヤトに聞けば住んでいた国は20歳が成人なのだが、精神的には少し幼い国なのだそうだ。この世界みたいに貴族などおらず、しかも男尊女卑はなく女性も仕事をし、政治にも携われる。平等なのだそうだ。結婚も本人達の意思なので俺と同じ年で独身も普通なのだとか──。え、子供とか大丈夫? と聞けば少子化で大問題と笑っていた。この国では嫌でも大人にならなくてはいけないが、ルカの年齢は親に甘えても全然おかしくないらしい。それを聞いた後では3人の中でこの世界の危険さを理解していないルカが本当に可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて……。無限に言い続けたくなるほど可愛くて仕方がない。思わず膝に乗せて座らせるとギュッと抱き締めた。

「ルカは可愛いなぁ……。ぐっちゃんは素直に甘えてくれないし、ヤトは甘える年ではないとか言うし、ルカだけだよ……。あぁ、癒される……」

 やっぱりこの子は天使だわ……。ぐっちゃんとヤト以外の魔の手から守らねば! 決意を新たに抱き締めているとルカはなぜかホッとしたように息をはいた。あぁ、怒られると思ったんだ?

「……それはそれ、これはこれ。さて、ルカからちゃんと話を聞こうか? トランプとオセロとはなんだい?」
「僕と兄が住んでた世界の子供も遊べる娯楽グッズです」

 どうしてルカはいつも俺に秘密にするのかな。ジーっと拗ねたように見つめるとルカは慌てたようにジタバタし始めた。ふふ、可愛いからもう少しこのまま拗ねたフリをしていよう。

 ちょっとしたお仕置きだよ、ルカ──。



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