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ルカの脳内に居る人達
しおりを挟む「辞書る。ちょっとルカが現実逃避し始めたですノヨ」
「ん? ルカの現実逃避ならいつもの事でしょ? そんな慌てることはないって……」
書類を見ながら話しているとキュキュがドォーンとやっと机の天板が見えたその場所に紙の山をおいた。………………だぁ~っ! なんでこんなに仕事が滞ってんだよ! 毎日毎日、毎日毎日! 本の活字ならどんなに良いことか……。書類の活字なんて誰も求めちゃいないんだよ!
えーっと? それでキュキュの訴えはルカの現実逃避だっけ?
俺はとりあえず立ち上がり、ルカの淹れてくれたコーヒーを複製したものを手にしてまた席へ戻るとルカの脳内にリンクするヘッドセットを身に付けた。
◆
《ルカ、本当に大丈夫なのかい? もっと違う場所でも……》
えっと? この声はルカの義理のパパだったっけ? 何が大丈夫なの? うんと? 何が起きたの? マップルを呼ぶとルカの現在地がわかったので思わず頭を抱えてしまったのは仕方ない。確かに、確かにね? ミドリがストレスでポキッと折れそうだと寝起きのルカに伝えたよ? 伝えたけどさ、しかもルカとの通信を切ってからの短時間でどうしてオークの巨大化したコロニーに到着してんのよ!
ちょっと! ミドリ? ミドリさんっ? 説明求む!
ミドリに経緯を聞いたらルカがお散歩中のオークを見つけて、自分を鞘から抜いたからそのまま走って追いかけたんだよ~♪ 超楽しかったぁ~♪ といつになくキャピキャピしていた。
【ライターあるけどパパがじっと見つめてるから無理だよね。だって火の属性の人の尊厳がなくなっちゃう! 火を出せることが自慢って言う小さな器を破壊することだもんね──】
ライター? あぁ、ルカを引き殺したやつの私物の一つだっけ? ……あぁっ! もぉ! イライラする。勝手にルカの住んでた世界というか国の司法に介入したい……。交通事故&殺人したんだから死刑でよくない? 的な? そんなことを思っていたらルカの独り言はまだまだ続いていた。そもそも途中から話を聞いてるから状況がよくわかんないや……。でも釘は刺してあげないとだよね?
「でもね、ルカ? 火を出せることが自慢の器の小さい人間ってキッパリ言うのはやめなさいね? それ、その世界で言ったら殺される案件なんだからね?」
…………おいおい、忠告を無視かよ! でも負けない!
【パパは風があるし、俺のやっちゃったイメージで新たに作ってしまったらしいヒーターとかあるけど……】
「いやいや、ルカ? 火の属性はさ? 戦うための魔法だからね……。君のやってることは常識外れなんだからね? 自尊心の破壊はやめなよ? 特に──」
【うん、火しか属性ない人のプライドがね……。って、話が反れちゃったかぁ……。えっと、辞書るさぁ? さっきから何が言いたいのさ……。小言?】
はぁ、俺だって小言を言いたくなんかないのよ? これも理解してくれませんかね……。
「とりあえずさっきから放置してるパパの言葉に反応してあげて? 可哀想だから!」
【うん、まぁ、確かに?】
そしてルカはまだまだ脳内で色々話していた。
オークのコロニー目の前だもんね。
A.あぁ、確かに巨大化したコロニーのアジトの前ですね。
オークは殲滅というか、全滅したとは言えど犠牲になった女性達の墓の前。しかも俺が大泣きした原因が眠るであろう場所なのだから──
。
A.はぁ!? ルカ、泣いたの? ねぇ、泣いたの? 俺のルカを泣かせた……? よし、オークは消滅決定で!
「ぎゃー! ちょっ! 辞書る、変な採決しないでほしいですノヨ!! あれは質の良いほぼ豚肉なんですノヨ!?」
キュキュによってオークを消滅させる書類を奪われた。ちっ、残念……。
違う場所に移動した方が精神衛生上は良いかもしれないよねぇ~……。彼女達はきっとグレン兄さんとゼツさんが苦しみから解き放つために殺──ううん、手に掛けているとしてもそれはこの世界のルールなんだと思う。それはどんなに苦しくても、悲しくても受け入れなきゃいけないことだと思う。
A.あぁ、なるほどね。コロニーの中に人間を連れ込んで子作りというか牧場を作ってたのか……。最悪だな、あの豚共……。やっぱり消滅させよう……。
「たから、質の良いほぼ豚肉だって言ってるんですノヨ! やめろやー!」
……またしても奪われた。ちっ……。
だって現代とは違って女性の社会進出なんてものは認められていないし、王や貴族の社会で平民の女性なんて下の下。貴族の女性だって自由なんかたぶん無い。家と家を繋ぐために嫁入りし、子供を産めばもう用はないんじゃないかと思ってしまうのは仕方ない。ココはそんな世界設定なのだから──。
A.あぁ、それはその通りだよね。女は家に入るものって文化は覆らないよね……。もう少し時代が進まない限りは無理かもなぁ……。
なら彼女たちへの供養のためにも美味しい料理をお供えしたいではないか。まぁ、オークの焼き肉しか出来ないのは皮肉でしかないけども……。
A.あー、大きなお墓にしちゃったんだね? ……でもお供え物は彼女達を苦しめたほぼ豚肉なわけね?
そこら辺がなんともルカらしいというか……。可愛いらしいと言うか……。そんなことを思いながら書類を見ていると組立隊の隊長が何かを持ってバタバタと走ってやってきた。
「オークの皮がなめし革になったゼヨ! うちの小飼達が一点止めのマントに加工したゼヨ! 凄かろ? 凄かろ?」
「あー、緑のきれいな(……というか無印オークの)なめし革だねー……」
ルカが使うのならやっぱりオークの王さまの薄ピンクが似合うと思うんだよねぇ~……。可愛いと思うんだよね~……。
「オークの王さまの皮、欲しいなぁ……。ルカ、絶対身に付けたら可愛いのに……」
「そのオークの王さまの皮ならさっき剥いだので今は乾燥させてるところだゼヨ。使えるようになったらちゃんとあの子様に作るゼヨ!」
サムズアップされちゃったよ……てか、王さまの皮を手にいれたのね? そして彼女(隊長)は辞書るの好みのデザインで服を作ってあげようか? と、ニヤニヤされたが「じゃぁ、その時は宜しく」と言っておいた。でも俺とルカが出会うとしたらルカが現実を捨てて深層世界に逃げ込むか、時期が来ないと難しいかもなぁ~……。服だけをプレゼントするのは出来るよ? 出来るけどさ、好きな人に服をプレゼントってソレは脱がせたいからじゃん? 俺の送った服を着てあの大好きなお兄さん二人組に脱がされるのはマジ勘弁っ感じ? そんなことを悶々と思っていたら遠くで隊長とキュキュがニヤニヤしている。
【……あ! ローストポーク? ポーク? ……えと、ローストオーク? 作ってみようかな……。いや、角煮? それともチャーシュー? どれも捨てがたいよねっ!? うーん、青空焼き肉……じゃなかった。焼き終えてから食べるからバーベキューか……。うんうん、バーベキューだ! でも肉だけだとやっぱり味気ないし、スープも作ろうかな! この寒空だから体もポカポカするトロリとしたシチュー系! コンポタとか? それともカボチャ? 普通にシチュー? ビーフシ…………ポー──オークシチュー……とか? いやいや、オークの肉ならほぼ豚だし白い方が絶対に美味しいよね! よし、残ったら保存できるし、多目に作っちゃおう♪】
おぉ、色々考えてたらルカが凄いマシンガンのような脳内独り言を言っていた。何て言うかルカはオークの取り扱いに困ってるんじゃないのか?
「ローストオークの作り方……え? 角煮──じゃなくて、コン……カボ……でもなくてホワイトシチューに変更? ルカ、早く! 早く私を呼ぶですノヨ! うおーっ! 燃えてきたぁ~っ!」
キュキュ、うるさい! マジうるさい! 料理の講師が久しぶりだからって張り切りすぎなんだよ、お前! ちっ、もう少し俺の中で可愛いルカを堪能したかったなぁ……。
残念だ──。
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