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閑話・それぞれの思い
弟、ジェイル・アメジール
しおりを挟む俺の姉上は国一番! いや、世界一可愛い!! いや、宇宙一かもしれない!!
細く小さなその体に月の無い夜空を思わせる漆黒の髪。睫毛も人形のようにばっさばさ。
目もパッチリと大きく、紫の瞳に金が混じったようなそれはなんとも不思議な紫黄水晶のような色をしている。でもそれがまたなんとも似合っているし、そしてとても可愛いと思うんだ!! あとはシミ1つない白く柔らかな素肌にふっくらとした桜色の唇。そこから紡がれる変わった口調ーー。
ホントに俺の姉上は可愛いっ!!
今は社交シーズンで姉上は遠く離れた辺境の領に、俺はフランドール国の王都と離ればなれになっているけれど、このシーズンが終わったら7ヶ月近くの間はずっと姉上のお側に居られる。それをこのシーズンを頑張ったご褒美と思って毎日毎日、色味のないつまらない日々をどうにかやり過ごしている。…………と、言うか今年もまた王子様のお仕事とかマジ勘弁して欲しい。なんでうちの父上様は運が極端なの? 続行で喜んでたのは仕事もなにもしないタダ飯食らいの愚弟達だけだよ? ホントに殿堂入りしてくれないかなぁ……。王子様するのは本気でもう嫌なんだけどっ!?
「はぁ……。姉上~……。姉上~……。姉上が恋しい……」
なぜか数年前に今のように帰るときに執事がくれたぬいぐるみだったが、数日前に姉上が抽選会の少し前。ちゃんと王都に帰ったので偉い偉いと頭を撫でてくれた。そしてそのまま髪を結ぶリボンをくれたので、その日のうちにぬいぐるみの首もとに結んでみた。可愛い! 姉上のかわりにしよう! そうしよう! ……と、毎日恋しくなるとベッドに寝そべり抱き締めつつゴロゴロしている。
よし、今日も頑張ろう……。
毎日規則正しい生活を送っているために王都へ戻っても習慣は変わらない。つまりは朝、起こしに来る者よりも早く起きてしまうので一人で着替えも行う。強いて言えば世話役などほぼ不要と言うところだ。
8年前、自領であるアメジール領で暮らすにあたってほぼ自分でそれなりに出来るようになった。本来は貴族の子息として着替えなど解除してもらうのが普通なのだが、向こうで暮らしはじめてからお茶だって淹れられるし、お風呂も一人で入れる。現在は介助など一切要らない。コレも全部姉上のおかげ。一人で出来るようになって、世界が変わった気がした。やってもらうのが当たり前のように感じていたけれど、一人でするようになってから世話をしてくれる一人一人をちゃんと見るようになれた。人として成長できたのかな……。出来てたら良いな……。
まぁ、愚弟達はこの世に産まれてから城での生活しかしたことがないから多分、結婚して追い出され……ゲフンゲフン。えっと? 婿入り、嫁入りしたら結構大変だと思う……。領へ行く前の俺と同じで何も出来ないし。
いや、ホントにあの時の俺以上に何も出来ないし……。
それにしてもそろそろ夜明けかぁ……。なら今頃、姉上はご飯食べてるのかな? それでお風呂に入って、寝巻きでベッドにダイブしてるのだろうな……。想像したらなんとも可愛かった。うちの姉上は閏日生まれで四年に1才しか年を取らない珍しいタイプだった。他の貴族や俺の数少ない友達も「可哀想な人」と認識しているようだ。確かに今現在、弟である俺が兄のような見た目だし、愚弟や愚妹ですら年上の見た目だ。ーーと言うか生きてる年数ではなく誕生日を迎えた年齢で言うと確実に我が家の末っ子だ。
多分、うちの家族は俺がもし結婚して子供が出来たとしてもきっとその子も姉上に看取られるのだと思う。閏日生まれは滅多にというか、全くいないから寿命がどうなるのか誰も予想できない。吸血鬼の平均寿命の4倍で息絶えるのか、はたまた平均寿命を過ごした年月。つまりは若い見た目で息絶えるのか……。
願わくば姉上が幸せに暮らせますように……。
「ん~っ! さてと、暇潰しに仕事でもするかな……」
早く起きてしまったので朝食の時間まで机に積まれた書類に手をかける。……おや? どうみても愚弟達の仕事も混じってる気がするが俺のサインをすれば父上の反応でわかるだろう……。そもそも文字読めるのかも最近心配になる愚者っぷりな弟達。サインは書いたら不正出来ないように消せない仕様になっているのだがきっとそんなことも忘れてしまったであろう愚弟達の頭には一体何が詰まっているのだろうか……。姉上と何故こうも違うのかと……。いや、姉上と同じ出来だと俺の立場がなくなる……。
ーーあぁ、姉上。………………まだ日にちは経っていないのにもう恋しいです。
思わずため息をついた。つまらない1日を何とか、何とかして暇を潰さねば……。
END
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