80 / 134
妾じゃなくても……再び?
3
しおりを挟む「うにゃ? うにゃにゃにゃにゃ? …………ここはどこじゃぁ~っ!」
目を開けたら知らない天井だった。妾の部屋でもなく、城の与えられた私室でも父上の部屋でもなく、アールの家でもない。
…………え? 妾、まさかの誘拐? いやいや、あの領館はそんな生易しい警備ではない。
護衛騎士の採用試験はまず一人で数体のオークやオーガが倒せること。それをクリアしたらあの大鬼さんの執事とタイマン勝負。執事に負けたとしても使えそうなら採用決定。まぁ、執事との勝負はモンスターの課題が自身の力で終わらせたか、ズルをしていないかの見極めなのだが……。
なんと言うか騎士と言うよりも傭兵と言う言葉が似合ってそうではある。
さて、話を戻すが妾は見も知らぬ部屋のベッドで眠っていた。遮光のカーテンが太陽の光を遮ってくれている。ここに関しては妾の体質を理解してくれている人が側にいるのかもしれない。
「…………あっつ! この部屋、暑いのじゃ……」
体を起こすと自分が着ていた衣服をチェック。うん、安定のプライベートブランド服のメイドインコーデリア。つまりはフリッフリ……。とりあえず首と胸元を手で探るとペンダントは首から下げた状態で、取り上げられていないところを察するに金目的の誘拐は消えた。
「とりあえず……」
ペンダントに魔力を注ぐと服の中に戻した。実はこのペンダントに使われている石は魔石で以前、ダンジョンでレアモンスターが落とした代物。氷や熱といった上級属性魔法の物で適正があれば誰でも簡単に氷や熱を扱える。今はほんのりと冷気を出すだけの力を注いだので服の中を体が凍らずに快適な冷気が放流されている。
「清浄」
寝ている間にかいた汗でベタベタの肌をスッキリさせるとベッドから下りて部屋を見渡した。
「うーむ、調度品は中々の物だの……。つまりは貴族か……。このベッド脇のサイドテーブルの素材は確か……マロニエの木だったか?」
特産品として扱ってるのは国の北部に位置するエメラール領。妖精族の領主が統治するアメジールと同じ辺境伯爵家。ベッドの足やベッド部分。ペンダントライトの足。それ意外にも家具と言う家具にマロニエの木が使われているところを見ると趣味、土産として買ったと言うよりも伯爵家の屋敷に来たと受けとるべきなのだろう。だがこの家とは接点が全くないはずだ。
うーん、迷う。このまま残って様子を見るか、転移して帰るか。
武器さえあれば残っても良いのだが……。魔法は……。妾、ちょっとぶっ壊れ性能らしくて殺しかねないので使わない。
よし! 逃げ出すのはいつでも出来そうだからここは大人しくしていよう。
「………………リアちゃん。そろそろ機嫌を直してくれるとありがたい」
「ちーちーうーえー?」
「悪かったってば。ただ、今日から数日間だけど仕事が少ないからリアちゃんと思いきり遊ぼうと思ったんだよ。気になるでしょ? 南のアメジールとは真逆の北のエメラール領のダンジョン」
その瞬間、妾の怒りは消え、ワクワクと言うかウズウズと言うべきか……。いろんな感情が駄々もれしていた。
「父上……。本当……なのかの? 遊んでくれるのかの?」
「うん! まぁ、私は早朝のお勤めはしないといけないけど、この地の領主である宰相も一緒に潜るけど構わないよね?」
「うむ!」
「わぁ、リアちゃんは本当に可愛いなぁ……。そんなに嬉しいの? 幻覚だろうけど猫みたいな尻尾が大きくパッタンパッタンと振ってたのが垂直に立った感じがするよ」
フローライトはご機嫌のクリスタリアを抱っこした。
「猫……。うぅ、父上~っ! ダンジョンで魔物肉! 魔物肉を集めるのじゃ!」
「うんうん、何が出るかね~っ!」
機嫌が良くなったついでにフローライトはクリスタリアの着替えを選んであげ、着替えをしている間に誰かと話していた。
着替えを終えて側にいくと紹介をされた。なんと相手はエメラール領主である宰相だった。
「第一王女様。ちゃんと挨拶をするのは初めてとなりますが、今年度の宰相を勤めております。アラン。アラン=エメラールと申します」
「クリスタリア=アメジールと申します。今年は父ともどもお世話になるかと思いますがどうぞよろしくお願い致します」
フローライトに頭をポンポンされた後、クリスタリアは丁寧に挨拶をすると彼(アラン)は驚いたような顔をしたがすぐにニコリと笑みを見せた。
「お前、アイツ等と同じように見てたな? リアちゃんがそんな出来損ないみたいなことするわけないだろ!」
「いや、なんか……こう……ねぇ? 噂では聡明だって聞いてても王様の子供=……ってなるでしょ?」
「父上~……」
抱っこしろとジャケットをクイクイと引っ張るので抱っこするとクリスタリアは大人しくなった。
じゃって見上げると首、疲れるんじゃもん……。
「可愛らしいですね……。あれらが嘘みたいなくらいに」
「あげないよ?」
「念を押さずともわかってますよ? あ、そうでした。第一王女様、なんとお呼びしましょうか……。さすがにあの抽選会の様子を見たら王女呼びは嫌でしょう?」
抽選会? ……あぁ! そう言えば捲し立てるように父上に領主として頑張るって言ったな……。遠回しに王女の仕事をする気はないと……。
「えっと、父上と同じリアちゃんで構わんよ? ーーあぁ、失礼しました。リアちゃんで構いません。あと、私に対して敬語は無用です。普通に話していただけると幸いです」
「宜しいのでしょうか……。では、俺のこともアランと名前で呼んでくれるかな? あ、俺はエルフだけど真名は別だから安心して? 話し方はいつもの通りで大丈夫だよ?」
「リアちゃん。お兄ちゃんが出来て良かったねぇ。アランはリアちゃんよりも遥かに年上だけど話も合うんじゃないかな」
フローライトのその言葉にクリスタリアは少しばかり嬉しそうな顔をしていた。
「お兄ちゃん……。えっと、兄上その1で良いのかの?」
「わぁ~っ! 可愛い妹が出来たみたいで嬉しいなぁ」
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
楠ノ木雫
恋愛
朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。
テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。
「お前との婚約は破棄だ」
ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中婚約者に婚約破棄を言い出された。テレシアは承諾したが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢った。そのせいでテレシアはべろんべろんに酔っ払い、次の日ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服では……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
※この作品は短編を新たに作り直しました。設定などが変わっている部分があります。(旧題:無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜)
聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました
さら
恋愛
王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。
ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。
「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?
畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。
俺、異世界で置き去りにされました!?
星宮歌
恋愛
学校からの帰宅途中、俺は、突如として現れた魔法陣によって、異世界へと召喚される。
……なぜか、女の姿で。
魔王を討伐すると言い張る、男ども、プラス、一人の女。
何が何だか分からないままに脅されて、俺は、女の演技をしながら魔王討伐の旅に付き添い……魔王を討伐した直後、その場に置き去りにされるのだった。
片翼シリーズ第三弾。
今回の舞台は、ヴァイラン魔国です。
転性ものですよ~。
そして、この作品だけでも読めるようになっております。
それでは、どうぞ!
妖精の森の、日常のおはなし。
華衣
ファンタジー
気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?
でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。
あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!?
「僕、妖精になってるー!?」
これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。
・毎日18時投稿、たまに休みます。
・お気に入り&♡ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる