吸血鬼領主~体は子供体型でも妾、大人じゃもん!~

けいき

文字の大きさ
8 / 134
これでも領主です

6(人族の少女目線)

しおりを挟む

 ふふ、簡単なくらいに上手くいったわ! こんな田舎なんてさっさと出ていって華やかな王都で暮らすのよ! それでそれでオシャレなカフェで仕事して、イケメンなお客さんにナンパされてぇ……。うふふ、うきゃぁぁぁぁっ! イ、ケ、メ、ン、のぉ~、彼氏を作ってぇ~っ! やだぁ、素敵! 素敵過ぎるわ! そして、そしてぇ~、私は誰よりも幸せに暮らすんだわっ! あぁ! こんな辺鄙なところから何事もなく出られるなんて幸せぇ~っ! 家族も友達も、親戚も! みんなみんな一緒に出られるなんて! ほんとに夢みた~い!


 夢見る私、アマギ・カスターネット。16歳。学年は10年生。じゃなかった! 専修学校1年。髪も瞳もありふれた栗色だけど、私はこれでもモテるんだから! つまりは可愛いってことでしょ? 人生薔薇色。 お父さんもお母さんも平凡な顔してるけど、きっと私は選ばれたんだわ! だって平凡な顔をしてる妹はモテてる気配ないし! でも私はモテるの! 勝ち組なのよ!

 ……っと、失礼。それにしたってまさか領主があんなちんちくりんだとは思わなかったけど、イケメンの学園長のほぼ裸! バスローブ姿が見られるとは思わなかったわぁ……。御馳走様です!

 もし学園長の奥さんになったら……。

 あぁ、やだ! 私ったら! でもなぁ……と、湧水のように枯れることを知らない妄想は休憩を挟むことはなく荷造りする手は動いては止まり、動いては止まり……。結局真夜の3の鐘が鳴り響く頃、やっとこさ自分の部屋の荷造りが終わった。あとは家具を荷台にのせて、早朝を待って畑の野菜を引っこ抜くだけだ……と思ったら事件が起きた。

「なんだこれは!」

 父の焦った声に家族が全員が慌てて集まった。そして目の前に現れたのは異常ともとれる警告文だった。

 目の前には「この家具は借家の備え付けの一部のため外へ持ち出せません」との文章。

「借家だと……?」

 ここを皮切りに次から次と各家から怒声が上がった。とりあえずこうしてても時間の無駄だし、持ち出せるものを探そうと皆でやってみると自分達が自作した物と買ったものは外に出せるようだった。

「てか、お前ら煩いんだよ! 何時だと思ってんだ! あぁんっ!? 毎度毎度、言われなきゃわかんねぇのかっ!! 学習能力不足共がっ!」

 怒鳴りに来たのは数人のご近所の獣人族の旦那衆だった。

 最後の夜なのに煩いのが来たなぁ……と内心思っていると彼らは綺麗になった家の中を見て「あれ? 夜逃げでもするのかい?」とか「こりゃ夜は特に静かになって良いな!」等々笑いながらも剣呑な目で見つめていた。どうしてそんな目で見るんだろう。私、可愛いでしょ? 愛されるべき存在でしょ? あ、そっか……。照れ隠し。やだ、なんか可愛い!

「あ、あぁ……。こんな時間に煩くしてすまない。ところでフォースさん? ちょっと聞きたいのだが、この家ってどうなってるんだね……」

 代表して父が下手に出て質問をすると鼻で笑われた。

 ……訂正。可愛くない! ムカつく! 獣の癖に! 人間になり損ねたやつの癖に! なんなの? 私たち人族より下の癖に! 私はイライラしながらも話を聞くためと我慢しているとあり得ない言葉が聞こえた。

「は? 申し訳ないがもう一度言ってもらえますかな……」
「だーかーらーっ! 飾りじゃないんだから耳をかっぽじってよく聞きな! この領地の家は全て領主様から借りてる借家なんだよ。メインストリートの店も、宿も俺達農家は家と畑を領主様から低料金で借りてんの! そしてお前らの妬みの根底の税金は国民の義務である国に納めるべき血税と、領主様にお借りしてる家と畑を含む家賃なの! 本来ならそれ以外に領土に納める税金があるんだが、農家は免除されてんだよ! 商人は売り上げの何%か徴収されてるはずだぜ? 入学1年いや、2年で習っただろ? なに? 忘れたの? さすがは空っぽだな! どうして俺らよりも年下なのに忘れられるんだ。金の無駄じゃね?」

 と、またもや入学1年生の話を出された。

 そんな昔の話を出してくるなんてここの人たちは非常識すぎる! ちんちくりんな領主も学園長もお前らも! 人のことをバカにして! バカにして! バカにして! ーーまあ良いわ! 朝にはここを出ていくんだから! こっちが清々するわ!? 後で謝ってきたって絶対に許してあげないんだから!

「あ、この家を出ていくならこの額は忘れないようにな? これ、この家の契約書だし……。もし燃やしたら賠償金が発生するぞ? 金を少しでも残しておきたいなら領を出るその時まで大事にしておくことだ!」
「あぁ、あと! うちの子供が寝てるんだ。もう騒ぐんじゃねぇぞ!」

 旦那衆は睨んでから去っていった。そして私たち家族は家のなかで契約書と言う額を見ていた。

「こんなもの! 燃やしちゃえば良いのよ! 何が契約書よ!」
「やめろ! お前は話を聞いていたのかっ!? 賠償金でうちの金がなくなるだろうがっ!」
「でもっ! ………………なによ! なんでお父さんもお母さんも睨むのよ! ふざけないでよ!」

 なによっ! なんなのよっ! 何で怒られるのよっ! 私は悪くないっ! 子供は親を選べないんだからっ! 私だって金持ちの家に生まれたかったわよ!

 そして険悪なまま朝を迎えた。








しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

俺、異世界で置き去りにされました!?

星宮歌
恋愛
学校からの帰宅途中、俺は、突如として現れた魔法陣によって、異世界へと召喚される。 ……なぜか、女の姿で。 魔王を討伐すると言い張る、男ども、プラス、一人の女。 何が何だか分からないままに脅されて、俺は、女の演技をしながら魔王討伐の旅に付き添い……魔王を討伐した直後、その場に置き去りにされるのだった。 片翼シリーズ第三弾。 今回の舞台は、ヴァイラン魔国です。 転性ものですよ~。 そして、この作品だけでも読めるようになっております。 それでは、どうぞ!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

楠ノ木雫
恋愛
 朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。  テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。 「お前との婚約は破棄だ」  ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中婚約者に婚約破棄を言い出された。テレシアは承諾したが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢った。そのせいでテレシアはべろんべろんに酔っ払い、次の日ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服では……!? ※3連休中は一日5話投稿。その後は毎日20時に一話投稿となります。 ※他の投稿サイトにも掲載しています。 ※この作品は短編を新たに作り直しました。設定などが変わっている部分があります。(旧題:無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜)

転生美女は元おばあちゃん!同じ世界の愛し子に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!《『転生初日に~』スピンオフ》

ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。 私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。 そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。 早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯ 私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。 『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』 そのために私は⋯ 『地上に降りて冒険者になる!』 これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯ ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の可愛いくまの編みぐるみ、おばあちゃんこと凛さんの、天界にいる本体が主人公! が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。 また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。 こちらも、よろしくお願いします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

処理中です...