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またね
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「……ありがとう、マオ」
血の気がないフィーリアが横たわるベットの周りにはオレたちしかいない。
楽しい時間は早く過ぎていくものと言うけれど、本当に早かった。一日を大切に過ごしていったけど、足りないと感じた。
一度家に帰ってからまたこっちに来て、もう二百三十年が経つ。
たまに地球に帰ると、家では母さんとリオにリルのことを詳しく聞かれるようになった。リルも母さんとリオのことが気になってるみたい。直接話せたら一日中話してそうだなぁ。
「ごめんなさいね、こっちに縛り付けちゃって」
「フィーリア、何言ってるの」
「私達がいなければマオはこちらにいることはなかったでしょう?」
「怒るよ?」
「そんなつもりはないの。ただ、おもってしまったの」
フィーリアは儚げに微笑む。
「全てはめぐりあいによるもの。アストールが死んだのも、クラス転移が起きたのも、再びフィーリアに出会えたことも、全て必然だったのだから」
たらればのもしこうだったら、あのときこうしていたらなんて思うことが多々ある。オレだっていっつもそんなこと考えてばかりだ。
でも、それを後悔してはいけないと思うし、マイナスなことだったとしてもプラスに考えようとする。
フィーリアは自分やリル、ガイオス、クラディアがいたからオレがこちらにとどまっていたと考えて、そこから更にそれで今の家族との時間を取ってしまったなんて思ったのだろう。
「かっこいいことを言っているようだけど、そんなお顔では台無しよ?」
フィーリアたちと過ごした時間はとても素晴らしいものだった。母さんたち家族との時間と比べられないくらいに。
フィーリアもわかってはいるのだろう。
「泣かないで?」
「それは無理。できないお願いだよ」
「えー、困ったわね。笑って送り出して欲しいんだけど……」
笑って、送り出して欲しいか……
「……」
あー、表情筋が言う事聞いてくれない。ねぇ、ほんの少しの間だけでいいから脳の伝達をしかと聞き届けてくださいよ。
最後のお願いを聞いてあげたいんだよ。もう、最後なんだから。
口角をあげようとしてもあげられない。そして、涙だってこらえようとしても溢れ出てくる。
「お願い、マオ。それに、リルもガイオスもクラディアも。ね?」
リルなんか大泣きだし、ガイオスも大粒の涙をボロボロとこぼしている。クラディアなんかは静かにただ静かに涙を流している。
「もしかしたら私もマオみたいに転生しちゃうかもしれないわよ?そしたら、また会えるかもしれないわ」
「ははっ……ありかも知れないな」
転生して、転移して、再び出会うなんていうミラクルが一度は起きたんだから。そんなミラクルが二度あってくれたっていいじゃないか。
「それで、今度はマオと一緒にリルたちに会いに行くのよ?」
「お祖母様も、一緒に?」
「そうよ。ね、また会いましょう?」
「また、お話しよう」
リルがふにゃりと笑った。それにつられて、ガイオスとクラディアも控えめだが笑みを浮かべた。
「大好き、愛してるわ……」
「オレもフィーリアのことを……フィーリア!」
愛してると言われてオレも、と返そうとしたのに。フィーリアは静かに目を閉じ、眠るかのように息を引き取った。寿命だったのだ。これでも長く生きたほうだったのだ。
「フィーリア……、フィーリア……」
あぁ、でも笑って送り出すことはできた。しかし、もう笑っていられそうにないかも……。
「うぇ……うぅ、お祖母様……!お祖母様……!」
しばらくは泣いていたと思う。どれくらい時間が経ったかな、朝日が上り始めていたのをはっきりと記憶している。
誰だったかが、フィーリアのことをアストールの墓の隣に入れてあげようと言って、オレがフィーリアを運んでそれから……。
「もう、行っちゃうんだねマオ兄」
リルが捨てられた子犬のようにしゅんと落ち込んでいる。よし、帰るのやめるか……っと、ヤバイヤバイ。リルのことが可愛すぎてやめそうになってしまった。
「うん、あっちとは時間の流れが違うから頻度は低くなっちゃうけど時々遊びに行くから」
「……私、転移使えるようになって、いつか私がマオ兄のとこにいくからね」
「そっか、待ってる」
「早速練習しなくちゃ!またね、マオ兄!」
そう決めるやいなや、リルは大きく手を振って行ってしまった。
「孫に振られたかな?」
「我も転移習得しようか……面白そうだ」
ガイオスが面白半分で習得しようとしてるし!ガイオスならやりかねない。しかも、速攻で!
「じゃあ、また」
「過労で倒れないようにね?」
「今のところは平和だから大丈夫だ」
「なら、いいんだけどさ。またね」
寂しいけど、全く会えないわけではない。こんなときはチートな力をとてもありがたく感じる。
「転移」
…
……
………
「お兄ちゃん!」
「マオ!」
「息子よ!」
リオ、母さんときてなんで父さんでコケるかな?息子よってなんじゃい!
「ただいま」
血の気がないフィーリアが横たわるベットの周りにはオレたちしかいない。
楽しい時間は早く過ぎていくものと言うけれど、本当に早かった。一日を大切に過ごしていったけど、足りないと感じた。
一度家に帰ってからまたこっちに来て、もう二百三十年が経つ。
たまに地球に帰ると、家では母さんとリオにリルのことを詳しく聞かれるようになった。リルも母さんとリオのことが気になってるみたい。直接話せたら一日中話してそうだなぁ。
「ごめんなさいね、こっちに縛り付けちゃって」
「フィーリア、何言ってるの」
「私達がいなければマオはこちらにいることはなかったでしょう?」
「怒るよ?」
「そんなつもりはないの。ただ、おもってしまったの」
フィーリアは儚げに微笑む。
「全てはめぐりあいによるもの。アストールが死んだのも、クラス転移が起きたのも、再びフィーリアに出会えたことも、全て必然だったのだから」
たらればのもしこうだったら、あのときこうしていたらなんて思うことが多々ある。オレだっていっつもそんなこと考えてばかりだ。
でも、それを後悔してはいけないと思うし、マイナスなことだったとしてもプラスに考えようとする。
フィーリアは自分やリル、ガイオス、クラディアがいたからオレがこちらにとどまっていたと考えて、そこから更にそれで今の家族との時間を取ってしまったなんて思ったのだろう。
「かっこいいことを言っているようだけど、そんなお顔では台無しよ?」
フィーリアたちと過ごした時間はとても素晴らしいものだった。母さんたち家族との時間と比べられないくらいに。
フィーリアもわかってはいるのだろう。
「泣かないで?」
「それは無理。できないお願いだよ」
「えー、困ったわね。笑って送り出して欲しいんだけど……」
笑って、送り出して欲しいか……
「……」
あー、表情筋が言う事聞いてくれない。ねぇ、ほんの少しの間だけでいいから脳の伝達をしかと聞き届けてくださいよ。
最後のお願いを聞いてあげたいんだよ。もう、最後なんだから。
口角をあげようとしてもあげられない。そして、涙だってこらえようとしても溢れ出てくる。
「お願い、マオ。それに、リルもガイオスもクラディアも。ね?」
リルなんか大泣きだし、ガイオスも大粒の涙をボロボロとこぼしている。クラディアなんかは静かにただ静かに涙を流している。
「もしかしたら私もマオみたいに転生しちゃうかもしれないわよ?そしたら、また会えるかもしれないわ」
「ははっ……ありかも知れないな」
転生して、転移して、再び出会うなんていうミラクルが一度は起きたんだから。そんなミラクルが二度あってくれたっていいじゃないか。
「それで、今度はマオと一緒にリルたちに会いに行くのよ?」
「お祖母様も、一緒に?」
「そうよ。ね、また会いましょう?」
「また、お話しよう」
リルがふにゃりと笑った。それにつられて、ガイオスとクラディアも控えめだが笑みを浮かべた。
「大好き、愛してるわ……」
「オレもフィーリアのことを……フィーリア!」
愛してると言われてオレも、と返そうとしたのに。フィーリアは静かに目を閉じ、眠るかのように息を引き取った。寿命だったのだ。これでも長く生きたほうだったのだ。
「フィーリア……、フィーリア……」
あぁ、でも笑って送り出すことはできた。しかし、もう笑っていられそうにないかも……。
「うぇ……うぅ、お祖母様……!お祖母様……!」
しばらくは泣いていたと思う。どれくらい時間が経ったかな、朝日が上り始めていたのをはっきりと記憶している。
誰だったかが、フィーリアのことをアストールの墓の隣に入れてあげようと言って、オレがフィーリアを運んでそれから……。
「もう、行っちゃうんだねマオ兄」
リルが捨てられた子犬のようにしゅんと落ち込んでいる。よし、帰るのやめるか……っと、ヤバイヤバイ。リルのことが可愛すぎてやめそうになってしまった。
「うん、あっちとは時間の流れが違うから頻度は低くなっちゃうけど時々遊びに行くから」
「……私、転移使えるようになって、いつか私がマオ兄のとこにいくからね」
「そっか、待ってる」
「早速練習しなくちゃ!またね、マオ兄!」
そう決めるやいなや、リルは大きく手を振って行ってしまった。
「孫に振られたかな?」
「我も転移習得しようか……面白そうだ」
ガイオスが面白半分で習得しようとしてるし!ガイオスならやりかねない。しかも、速攻で!
「じゃあ、また」
「過労で倒れないようにね?」
「今のところは平和だから大丈夫だ」
「なら、いいんだけどさ。またね」
寂しいけど、全く会えないわけではない。こんなときはチートな力をとてもありがたく感じる。
「転移」
…
……
………
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「マオ!」
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「ただいま」
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