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おわりのはじまり

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「ふぅ……」

 中二で転移してから、一度戻ってさらに一年。気づけば中学校は卒業であった。
 オレが戻ってきたのは卒業の少し前で、クラスメイトと今入ったほうがいいかな、元勇者たちと倫太郎たちとほんの少しの時間だったけど再び同じ教室で過ごすことになった。

 オレより前に日常を取り戻していたクラスメイトたちにとってオレは非日常の象徴のようであった。日常を過ごしていたい彼らがとった行動は何か、とても簡単なことだ。

 オレを見ない。スルースキルを早急に育てたようで、いないものとして扱う。別にわざとぶつかるとかそんなことはしてこない。まるで、彼らとオレのいる次元が違うように触れてこない。
 オレはそれが最善策なんじゃないかと思っている。なにせ、オレとの溝は浅くはないのだ。戻ってきました、仲直りしましょう、僕たちはまた仲良さんだよ……なんてことはできるはずがないのだから。

「ま、しょうがないもんな」

 お互いのためにも。
 寂しくないわけではないけど、しょうがないという一言で片付けてしまうしかない。

「ねぇ、倫太郎」
「なんだ?」

 クラスメイトたちはスルースキルでスルーを徹底してきているけど、倫太郎たちは例外に入る。
 はじめの方はオレのほうが倫太郎たちまでスルーされるようにならないかと心配だったが、クラスメイトたちはそこのスルースキルもすごいようで、オレといるときといないときで分けているようだ。
 すごいんだかなんだかね。

「高校、どこ行くの?」

 卒業してしまえば子の教室のメンバーはバラバラになってしまう。もちろんオレと倫太郎も恐らくは。

「保育科のあるところだな」
「意外だなぁ」

 倫太郎は身体能力が高いから、それを活かせるところに行くのかなとか勝手に思っていたよ。でも、倫太郎は優しい人だからいいかもしれないね。

「意外とかいうなよ」
「理由聞いていい?」
「いいけど……」

 どれどれ、聞いてみようじゃないですか。

「リルちゃんがきっかけだ。その後もいろんな人物に出会った」

 まさか、本当はロリコンに目覚めてたと?いやいや、そんなはずないよね。倫太郎に限ってねぇ。

「それで?」
「決定打になったのはマオだな」
「オレ……?」

 どこがどうなったら保育科に行くことになるのかな?うむ……。

「そう。マオって結構面倒見いいじゃん?それ見ていいなって」
「そっかな」

 あんまり思い当たるフシがない。
 オレとしては昔っから結構自由に過ごしてきたつもりで、わざわざ面倒見たりとかした覚えないんだけど。

「じゃないと昔俺にあんなことはしてくれないよ」
「ん、あれってなんだっけか」

 なんか大きなことあったっけ?

「マオが力の受け流し方とか教えてくれただろ?」
「あぁ、そんなこと」

 当たり前じゃないかなぁ。知っているものが知らないものに教えるってごく普通にする行為だと思ってたけど。日本でもそうじゃなかったかな、ならそんなにすごいことでもないと思う。

「俺にとっては、大きかったんだ」
「そっか。そうなの」

 はは、うれしいね。オレのちょっとした行動がこうも選択の理由になっているとは。さっきまでロリコンに目覚めたんじゃないかとか疑ってごめんなさい。

「マオの方は?」

 倫太郎が自分が答えたことだしとオレにも聞いてくる。なんて答えようかな。
 実はこんな時期なんだけど、決まっていないのだ。

「ニート?」
「え……」

 倫太郎が口を開けて動かない。実にコミカルな光景だ。面白い。

「嘘嘘、流石にならないよ」

 オレは笑って訂正する。
 ニートになるくらいなら株で生きていく所存でございます。

「よ、よかった……」
「ごめんね?」
「お、おう」

 ニートにはならないといったけど、どうしようか?高校は……今から行けるところないよね。え、いや、どうよこれ。ヤバくないかな。ねぇ、どうしたらいいこれ。

 アストールは魔王さんをやっていたのだ。それに地球人ではない。異世界とここはいろいろなことが違う。
 オレ今ピンチ?

「そうだ、留学しよう」
「いきなりどうした」
「医学学んでくる」
「だから、いきなりなんでそうなる」

 人って追い詰められると変な考えに至るよね。なので、そんな顔しないで倫太郎。ニッコリ笑った顔が怖いよ、怖いんだけど。

「ほら、三鷹を聖女から取り戻そうとしたときあったでしょ」
「あったな」
「その時、毒学だかを手に入れてさ、薬学もゲットしたいなーって」

 今までファンタジーな世界で生きてきたため、科学というものに興味があるのだ。薬学とか面白そうじゃない。薬学は化学だったかな?

「そんな、思い立ってすぐ留学なんかできるの?」
「どうかな。ま、とにかく先生に話してくるよ」
「そうか」

 思い立ったが吉日と倫太郎に背を向けたオレは倫太郎が悲しそうな顔をしていたことに気づくことはなかった。

「マオはいつもオレより先にいるな……」

 倫太郎がそうつぶやいてたことも知らないのであった。
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