クラス転移させられた元魔王

華乃アオ

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面倒くさい展開

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「勇者様がた、無事で何よりです」

 旅に出る前よりもやつれたであろう王女さんがほとんどメイドさんに支えられる形でオレたちの前に姿を表した。
 大丈夫なのか、この人。王子が居なくなってから日に日にやつれて……倒れないかな。王女さんのことはあんまり好きではないけど、息子のことを心配しているって言うのはわかるから。

「フーガの村で魔人が見つかりました。まず、魔人についてキラから説明があります」

 キラが説明したのはオレがキラに説明したことに加えて、第二書庫にあった魔人についての書物から得た情報もだった。
 第二書庫に一冊だけあったみたい。魔族の言語の書物だったらもっとあるかもしれないね。

 魔人は限りなく回復魔法に弱いっていうのは知らなかった。ゾンビかよって話だよな。ゾンビとかに回復魔法をかけると苦しむって言うしね。
 
 魔人に回復魔法が毒になるっていうんなら、魔族にも毒になるのかって言ったら違うんだよな。
 普通に人族のかけた回復魔法で魔族は回復することができる。これはガイオスから聞いたことだから情報は確かだ。
 効率は七割くらいに落ちるらしいんだけどね。

 やっぱりどう考えても三鷹は選ばれるよね。

「そして、魔人はセレンティア教国に送ります。回復魔法についてはセレンティアの専売特許のようなものですので」

 王女さんも回復魔法をかけてもらいに行けばいいのにね。簡単にそうするわけにも行かないんだろうけど、本当に倒れられると困ることになるかもしれないから。

 後でコッソリかけてやろうかね……。

「騎士団が行く予定なのですが、騎士団だけでは対処しきれない可能性があります。なので、勇者様がたのうち、五名についていっていただきます」

 五名……か。多いな……オレが選ばれないよね?

「ミタカ様、イマカワ様、ゴトウ様、オオイワ様、ヒライ様、お願いします」

 三鷹、今川、五嶋、平井に大岩か。
 大岩は弐番パーティーのメンバーだ。弐番パーティーの男子は倫太郎と大岩と野村の三人だったのだ。
 大岩は前衛組で、槍が得意らしい。

「は、はい!」
「わかりました」
「はい」
「了解です」

 良かった。さっき、フラグ立てちゃったかと思ったんだけど、フラグがボキンと折れてくれてオレは嬉しいよ。
 フラグはクラッシュされるものだね。

「四名は後でメイドが案内するので、会議室に来てください。そこで詳しい説明をさせて頂きますので……」

 よし、会議室には弐番パーティー用の使い魔を潜ませようか。こういうときのために隠密性の高い形の使い魔を召喚しようかな……。

 王女さんは退室していって、勇者と騎士だけがこの部屋には残っている。

「ヒナミ、ソラ……怪我をしないようにね?」
「ヒカル、ヒロト。お前たちにかかっているが、自分たちの身を一番に考えろ。命あってのものだねだからな」

 キラとユーゴが四人と話し込んでいる。二人とも教え子であるあいつらの身を心配するのか……安心したな。特にユーゴ。自分の命を投げ打ってでも……とか言い出したら軽蔑してた。

「久しぶりに書庫にでも行くかね……」

 今度はしっかりと言語を見分けないとね。うっかり魔族の言語で書かれている書物を普通に読んでるところとか見られたら大変なことになりかねない。
 でも、あそこは広いからなかなか人と合うことがないだろうからな。

 第二書庫には相変わらず魔王についてよりスライムについての書物が多い。本当におかしいですよね?あれですか、もしかしてスライムはそんなに危険がなくて可愛いと思う物好きが多いからですか?
 そう言うので差別するのは行けないと思うんです。

「……誰?」
「え?」
「君は誰?ここはどこ?僕は誰?」
「へ?」

 書庫でいきなり声をかけられたかと思ったらなに、少年は記憶喪失ですか。
 銀髪に銀縁のメガネ、空色の瞳を持つ少年はオレよりほんの少しだけ年下のように見えた。

「オレは結城マオ。ここはレステリア王宮の第二書庫だけど……?」

 オレがレステリア王宮だといった途端、少年の雰囲気ががらっと変わった。

「レステリア王宮……?壊さないと……潰さないと……!」
「何言ってんの!」
「エグスプロー……」
「ワープ!」

 とっさに少年の手を掴んで、テオドールを召喚した広い場所に出た。
 いきなり何エグスプロージョンとか放とうとしてるの?頭おかしいの?おかしいんだね。

「マオ、なんで止めたの」
「書庫で火属性の魔法ぶっ放そうとすんじゃないよ……。書物が燃えるだろ」

 燃えてしまったらあの中に埋まっているであろうお宝が読めなくなってしまう。

「……そっか。ごめんね?」
「で、なんでエグスプロージョンなんか放とうとしたわけ?」
「レステリア王宮だから。レステリアは壊さないといけない」

 そのことを当たり前のように、そのことを当たり前と考えていないオレを不思議そうに少年は言った。
 少年、人族だよね?
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