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ずっと変わらない
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弐番パーティー全員を眠らせて、倫太郎だけを即席で作り出した小屋へと運んだ。一応、外に残してきた四人には使い魔をつけて危険があれば呼ぶように言っておいたから、命の危険はないだろう。
一時間たった今でも全く目が覚める気配がない。参番パーティーに使ったのと同じ系統のものを使ったんだけど、毒薬学のおかげかな。
「ほーら、早く起きないと襲われちゃうぞー……なんてね」
いやー……目を覚まさないね。毒薬学スキルは強力らしい。使うときに気をつけないと、植物状態になってしまうことが出てくるかもしれない。
……目を覚まさないな。落書きをしてやろうか……油性ペンがない。髪の毛をイタズラしてやろうか……短髪じゃないか。
起こそう。
二、三回頬を叩くと倫太郎が目を覚ました。最初からこうしておけばよかったんだ。
目を覚ました倫太郎から、三鷹がおかしくなってしまったという話を聞いた。
セレンティア教国から帰ってきた平井がセレンティアであったことを倫太郎に話して、なんとかするためにオレに手を貸してほしいという話だった。
なんでも、魔人をセレンティアに送りとどけたあとセレンティアに来たら誰でも、礼拝堂で祈るのがセレンティアの礼儀だと言われて言われたとおりに礼拝堂で祈ったらしい。
三鷹以外の四人には何も起きなかったが、三鷹だけに聖女像からの光に照らされたそうだ。
その後のことだったらしい。助けて、と小さな声で叫んだあと倒れて、次に目を覚ましたときには三鷹であって三鷹ではない聖女が存在していたのだという。
普通にしていると三鷹なのだが、言動のはしばしに違和感があると言う。そして、三鷹は自ら聖女であると聖王に告げ、本当に聖女の地位についたのだという。
三鷹は緋色が嫌いになったそうだ。そして、薬学を習得したらしい。
三鷹は名前を変えたそうだ。マリアナ=セレンティアと。あの女の名前に。
そこまで聞いて、オレの頭に浮かんだのはあの女が三鷹に取り憑いたのではないかということ。聖女像が光ったのはそこにあの女の亡霊が憑いていて、聖女の称号のあった三鷹に移動したのではないかということ。
もしそうなら最悪だ。
「三鷹が、ね……」
はぁ……。結構複雑だなぁ。
一応三鷹の肩書は勇者と聖女。そんな人物を魔族側のオレがどうにかしてしまっていいものか。
どっちからも文句言われそう。
そうなるのは嫌だから、倫太郎に手順とそれを実行するための道具を渡した。大丈夫かな。
理論上はそれで三鷹とあの女を引き離すことができるんだけど、実際はどうなることだか……。
倫太郎の話が終わったため、オレの方も話を切り出す。
「オレも真面目な話ししていい?」
「いいぜ。オレの話を聞いてもらったんだし」
回りくどいのは面倒だから、直球で行かせてもらいます。
「倫太郎はオレが魔族側に行ってどう思った?」
「あのとき行って正解だったと思う……」
一息ついてから再び続けた。
「アイツらな、玉が示していることを疑いもせずに信じてしまった。マオのことを敵である魔族に、倒すべき魔族にしか見なくなった」
倫太郎は冷静だね。
「あのときにマオが違うって言い訳をしても、信じてくれなかっただろう」
「やっぱり……」
「今さ、マオの顔が勇者してるときよりいきいきしているんだ」
自覚ないんだけど。
「オレはそれならいいって思う。あ、でも。戦うのは嫌だな」
「ふーん……」
「ま、だからといってオレたちと戦うことになったときに手加減しろって言っているわけじゃないんだけどな」
もとより手加減する気は一切ございません。一人一回最低限の回復をする以外は普通に戦わさせてもらいますよ。
売られた喧嘩はしっかりと買わないとだからね。
「わかってるよ」
「生きて地球に帰ったら、敵対していたことは水に流して……」
「五十年くらい帰れないかもよ?」
すいませんね、これから時魔法をゲットする予定なものでして……。
「いいんだよ。帰れないっ思うより、帰るって思っている方がな」
「倫太郎らしいのかな」
「だろ?」
自信満々に胸をはらなくてもいいんだけど。しばらく合わない間に、熱血系にでもなった?
「マオ、ありがとう」
「倫太郎もね」
「最後に一つだけ」
「何?」
「オレとマオはいつまでも仲の良い幼馴染だから」
「うん」
最後に倫太郎がそう言ってくれてオレは嬉しかった。倫太郎に裏切り者として睨まれる可能性だってあったのに、そう言ってくれるなんて。
「倫太郎、頑張れ」
「おう。魔王が言う言葉じゃないけどな」
「一つ訂正。元、ね?」
「はいはい」
倫太郎はオレがあげた道具二つを持って小屋の扉から出ていった。
「倫太郎のほうが大人みたいだね」
何百と生きていたオレが倫太郎に安心させられるなんて、変な感じ。
さて、これ以上ここにいたら倫太郎以外の勇者に見つかってしまう可能性があるから今度こそ魔王城まで戻ろうか。
帰ってリルに改めてお礼を言わないとだしね。
一時間たった今でも全く目が覚める気配がない。参番パーティーに使ったのと同じ系統のものを使ったんだけど、毒薬学のおかげかな。
「ほーら、早く起きないと襲われちゃうぞー……なんてね」
いやー……目を覚まさないね。毒薬学スキルは強力らしい。使うときに気をつけないと、植物状態になってしまうことが出てくるかもしれない。
……目を覚まさないな。落書きをしてやろうか……油性ペンがない。髪の毛をイタズラしてやろうか……短髪じゃないか。
起こそう。
二、三回頬を叩くと倫太郎が目を覚ました。最初からこうしておけばよかったんだ。
目を覚ました倫太郎から、三鷹がおかしくなってしまったという話を聞いた。
セレンティア教国から帰ってきた平井がセレンティアであったことを倫太郎に話して、なんとかするためにオレに手を貸してほしいという話だった。
なんでも、魔人をセレンティアに送りとどけたあとセレンティアに来たら誰でも、礼拝堂で祈るのがセレンティアの礼儀だと言われて言われたとおりに礼拝堂で祈ったらしい。
三鷹以外の四人には何も起きなかったが、三鷹だけに聖女像からの光に照らされたそうだ。
その後のことだったらしい。助けて、と小さな声で叫んだあと倒れて、次に目を覚ましたときには三鷹であって三鷹ではない聖女が存在していたのだという。
普通にしていると三鷹なのだが、言動のはしばしに違和感があると言う。そして、三鷹は自ら聖女であると聖王に告げ、本当に聖女の地位についたのだという。
三鷹は緋色が嫌いになったそうだ。そして、薬学を習得したらしい。
三鷹は名前を変えたそうだ。マリアナ=セレンティアと。あの女の名前に。
そこまで聞いて、オレの頭に浮かんだのはあの女が三鷹に取り憑いたのではないかということ。聖女像が光ったのはそこにあの女の亡霊が憑いていて、聖女の称号のあった三鷹に移動したのではないかということ。
もしそうなら最悪だ。
「三鷹が、ね……」
はぁ……。結構複雑だなぁ。
一応三鷹の肩書は勇者と聖女。そんな人物を魔族側のオレがどうにかしてしまっていいものか。
どっちからも文句言われそう。
そうなるのは嫌だから、倫太郎に手順とそれを実行するための道具を渡した。大丈夫かな。
理論上はそれで三鷹とあの女を引き離すことができるんだけど、実際はどうなることだか……。
倫太郎の話が終わったため、オレの方も話を切り出す。
「オレも真面目な話ししていい?」
「いいぜ。オレの話を聞いてもらったんだし」
回りくどいのは面倒だから、直球で行かせてもらいます。
「倫太郎はオレが魔族側に行ってどう思った?」
「あのとき行って正解だったと思う……」
一息ついてから再び続けた。
「アイツらな、玉が示していることを疑いもせずに信じてしまった。マオのことを敵である魔族に、倒すべき魔族にしか見なくなった」
倫太郎は冷静だね。
「あのときにマオが違うって言い訳をしても、信じてくれなかっただろう」
「やっぱり……」
「今さ、マオの顔が勇者してるときよりいきいきしているんだ」
自覚ないんだけど。
「オレはそれならいいって思う。あ、でも。戦うのは嫌だな」
「ふーん……」
「ま、だからといってオレたちと戦うことになったときに手加減しろって言っているわけじゃないんだけどな」
もとより手加減する気は一切ございません。一人一回最低限の回復をする以外は普通に戦わさせてもらいますよ。
売られた喧嘩はしっかりと買わないとだからね。
「わかってるよ」
「生きて地球に帰ったら、敵対していたことは水に流して……」
「五十年くらい帰れないかもよ?」
すいませんね、これから時魔法をゲットする予定なものでして……。
「いいんだよ。帰れないっ思うより、帰るって思っている方がな」
「倫太郎らしいのかな」
「だろ?」
自信満々に胸をはらなくてもいいんだけど。しばらく合わない間に、熱血系にでもなった?
「マオ、ありがとう」
「倫太郎もね」
「最後に一つだけ」
「何?」
「オレとマオはいつまでも仲の良い幼馴染だから」
「うん」
最後に倫太郎がそう言ってくれてオレは嬉しかった。倫太郎に裏切り者として睨まれる可能性だってあったのに、そう言ってくれるなんて。
「倫太郎、頑張れ」
「おう。魔王が言う言葉じゃないけどな」
「一つ訂正。元、ね?」
「はいはい」
倫太郎はオレがあげた道具二つを持って小屋の扉から出ていった。
「倫太郎のほうが大人みたいだね」
何百と生きていたオレが倫太郎に安心させられるなんて、変な感じ。
さて、これ以上ここにいたら倫太郎以外の勇者に見つかってしまう可能性があるから今度こそ魔王城まで戻ろうか。
帰ってリルに改めてお礼を言わないとだしね。
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