32 / 34
似たもの同士 2
しおりを挟む
「箱入りのガキにいきなりやれったって無理な話か。オマエも村とは悉く違う環境になって大変そうだな」
「うん、大変大変。すっごく大変」
「雑にシメようとすんなって。まだあの話がついてないだろ?」
「なに…?」
「オマエの一人称の話だよ」
かなりイライラしてる時にイヤな話を…。モンスターはイヤなことばっかり話に出してくる。というかこれってそんなに掘り下げないといけない話なんだろうか?モンスターの感覚がわからない。
「俺の予想じゃあ、一人称を『ジブン』にしてるのはミナライの最後の意地なんじゃないかと思ってるが…実際どうなんだ?」
「なにそれ?何が言いたいの?」
「『ジブンはモンスターに騙されてなんかない』っていう意地だよ」
言われてみれば、そうかもしれない。本当の名前は言ってないからまだ大丈夫というような…。着いて行ってるんなら完全にアウトなのもわかってはいるんだけど。
「お、図星か?」
「少しはそうかもしれないけど、ほぼ合ってないね。残念!」
「じゃあどう違うのか全部説明してもらおうか?」
「もう、しょうがないな」
あれ?なんか喋る流れになってる…。
まあ、ドラーゴンもこっちが言わなきゃわからないだろうし…話してあげるとしよう。
「モンスターの誘いには乗ったけど、心まで売り渡した訳じゃないって感じかな」
「そんなの思い込みだろ?オマエ、割と船長のこと頼ってるじゃねえか」
「だって、頼らないと!モンスターを相手にするのなんて初めてなんだから、モンスターの船長に頼るのは普通でしょ?船長だってジブンに頼られたがってるし」
「へえ、割と気付いてんのな」
「なにが?」
「あいつの、ミナライへのキモイ親心だよ」
「…ほんとに頼られたがってるってこと?」
「じゃなきゃ、あそこまでうざ絡みしねえだろ」
うう、何度考えても気持ち悪い。
普段は話半分で流してるけど、ほんとの本気となるといたたまれない。
「オマエは全く心開いてないんだな。船長が憐れで仕方ないぜ」
「そんなのジブンの勝手でしょ」
「ふうん。じゃあ本名を明かさないのも自分で決めたつてことだ。どういう理由があったんだよ?」
「それは話したでしょ?」
「さっきのは『本名を話さない原因』だろ?今回のは『本名を話さないって決めるに当たった理由』を聞いてるんだ」
「質問ばっかりじゃない?うざったいんだけど」
「そう言うなって。話したくないなら話さなくていい、なんてニンゲンの間でしか通用しねえぞ?」
呆れる。そんなの、ジブンの周りでも通用したためしがない。
村に帰れないままのくせして、村に居たころと同じことが起こってる。どこにいても辛いことばっかりだ。モンスターはみんなイヤなヤツだから仕方ないのかな。
あれ?だとしたら村のヤな大人って、モンスター並みの性格してるってこと?はあ…?あんなヤツらの言うこと聞いてたのがバカらしくなってきた。
「おい、早く話せって。寝かせてやんねえぞ」
「はいはい。ええと、村での「自分」と村の外での「自分」とは分けて考えないと頭がパンクするからだよ」
「なんだそりゃ?」
「話すのめんどくさい」
「急に消極的になんなよ…」
「だってドオルにもした話なんだもん」
「しつこくされたくなかったらとっとと話せ」
勝手なヤツだ。ドオルに説明をせがむのも回りくどいし、話した方が早いな。
「ドオルと話してる時、『自分』をいくつか持て』って言われたの。『仕事場での自分』とか、『友達の前での自分』とか。そうは言われたってすぐにできるものじゃないから、村の中と外とで分けてみようとはしてるけど、まだまだ難しいんだよ」
「そうか?やろうと思えばできそうなもんだが。ここに居る奴は初日で察してると思うぞ。この船では素の自分でいるのは不味いってな」
「そりゃ、皆は大人なんだからわかって当然でしょ」
「物わかりの良い子どもだっているはずなんだけどな。村で甘やかされすぎてクソガキになっちまったってオチか」
「考えてもわからないことくらいたくさんあるし!」
大人は余裕ぶって見下してくるけど、ジブンだって考えているのは間違いない。
経験があるんだかなんだか知らないけど、子どもが何にもわからないのは考えてないからだなんて大間違いだ。
「ジブンが考えを変えないのは単にイヤだからじゃないよ。そもそもやり方がわからなかったり、『自分をいくつか持つ』って言葉がよくわからないからだよ。初めてのことなんだから、わかんなくたって良いでしょ」
「そりゃそうだが、正解を提示されてるんならわかるもんなんじゃないのか?」
「やり方を教えられなきゃわかんないよ」
「面倒な性質だな」
ああもう、いい加減なんだから。なんで教えるのを面倒臭がるんだ?自分ができることは相手もできるとは限らないのに。こっちができないのをうざがられても、ジブンは変われないままだ。そうなったらコイツはまた面倒臭そうな顔するだろうに。
「はあ、最悪だよ。モンスターは何においてもいい加減なんだから…。教えられなきゃ何にもできないなんて、考えたらわかるってのに」
「オマエの教育環境は劣悪って訳だな。ご愁傷様」
「努力しようって気はないわけ?」
「ないな。俺のオマエのお守りのために生きてない」
「いちいちうざったがられるこっちも辛いんだけど?」
「そう言われてもな」
とことんどうでも良さそうにされる。こういう反応、最初は苛ついてたけど最近は傷付くようになってきた。
「やっぱりモンスターってダメだな」と思っていても、否定されることが多くなると「ジブンってダメなのかな」と落ち込んでくるようにもなる。
村に帰りたいと思うのだってそうだ。だんだん変わってきてしまった。
最初の頃はただ村に帰りたいと思ってた。でもモンスターに村でのことを色々掘り起こされたせいで、「村にもイヤな子がいた」とか、「大人たちはこっちが本当に危ない目に遭っても助けにも来てくれない」とか、「ジジババがまだ生きてる」みたいな、村に居た頃にジブンを取り巻いてたもろもろの問題点が浮かび上がってきた。
おかげで本気で「帰りたい」とは願えなくなってきたのが今の本音だ。
「まさかオマエと船長がそんな騙し合いしてるとはな」
「え?そんな話してた?」
「やってたやってた。若い奴が忘れっぽいと洒落になんねえぞ」
いや、ドラーゴンがいかにダメな大人かっていう話だった。さては、話をそらしたな?あのまま話続けてものらくらかわされただろうから、忘れてやることにしよう。ほんとうにどうしようもないヤツだ。
「…で?騙し合いってなに?」
「信頼し合ってるふりして、お互いに隠し事だらけなとこだよ」
「言うほどやりあってる?船長は嘘つけないタイプでしょ」
「そうとは限らんぞ?なんならオマエがなんか隠してるって気付いてるとか…」
「ええ?まさか、ねえ」
「船長のこと舐めきってんのな?」
「そうじゃないよ。これ、アイツにバレたら大変なことになる話だからさ」
「ああ、オマエに依存気味なんだもんな」
「たぶんね」
船長がジブンにどれだけヤバい気持ちを持ってるのはわからないけど、船員が口々に言うからには深刻なんだろう。
仲が良くない船員同士でも、そればかりは口を揃えて「船長はミナライを構いすぎだ」って言う。モンスターは危ないことでもテキトーな感じで言うから、ほんとうはもっと好かれているのかもしれない。
だったら尚のこと、村に関係する相談は誰にもしちゃいけない。船長はもちろんもってのほかだけど、船員の耳に届くのもマズい。
船員もだいぶ減ったけど、だからって秘密が船長に伝わらないとは限らない。今までは「すぐにバラすヤツがどこかにいる」くらいの認識だったから、正確には誰がバラしたがりなのかわかっていない。もしかしたら今の船員の中にそういうヤツ残ってるかもしれない。
それも理由の一つだけど、船員からからかわれるかもしれないのもイヤだ。
「じゃあなんのためにここにいるんだよ」なんて、ジブンをまるごと否定するようなことを言われそうだから。そこまで言われたら、「やっぱモンスターってクソだ!」なんて怒る元気もなくなっちゃう。
船長にバレたらバレたで、ジブンの心だけじゃなくこの先の時間まで良いように使われそうで怖い。船長はモンスターの中じゃ話が通じる方だけど、周りに流されやすい。
船長だけが好き勝手やってるようで、出て行く前の船員たちがそう見えるように仕立て上げてたんじゃないだろうか?自分たちは注目されなくするため、ミナライに目を向けさせようって。面倒臭がりのヤツらがやりそうなことだ。
船員のほとんどは、船長のことを本来の性格よりも悪くでっちあげてた。船長は「悪い」というより変わってる。迷惑をこうむることには変わりないけど、ただ悪いヤツと言うのとは少し違う。
船員になってから日が浅くて、やむなく誤解してるモンスターもいたんだろうけど…どっちにしろ、マズイことを引き起こしていたかもしれない。
船員たちが、ふざけて「一生飼い殺しにされるかもな」とか「骨になっても離して貰えないんじゃないか?」なんてアホみたいな悪ふざけを言ってても、船長はそれを「その手があったか」なんて素直に受け取っていたのだとしたら怖すぎる。
だからこそジブンは誰を相手取っても気が抜けない。どちらかというと船長の方が危ない。
そうだな、船長にバレちゃったら「自分とミナライだけの秘密」として隠し通したあげく、勝手に話を進めちゃうかもしれないから…うん、船長にだけはバレちゃダメだ。
「どうしたよ、そんなに頷いて」
「船長なんかアテにならないなって思っただけ」
「酷え奴だな、あんなに尽くして貰ってんのに」
「どこがよ!今まで全然大陸に連れてってくれなかっのに」
「船長は気晴らしに島に行ってやってたのかもしれないぞ?一旦は旅を楽しむってのも有りだったんじゃねえか?」
「ヤだよ!村にいないでいるのに慣れちゃったら、村に帰ること諦めちゃうかもしれないもん」
「気色悪いな、オマエ」
「は!?」
「故郷に執着しすぎなんだよ」
またこいつは…モンスターはこの手の話をほんとうにわかってくれない。
「元いたとこに帰りたいって思って当然でしょ?」
「本当にそれだけが理由か?」
思わず、ぎくりとする。
「マジかよ、カマかけてみるもんだな」
「え…?ハッタリってこと?」
「まあな。バレたからには大人しく話した方が良いぜ?」
うそっぱちのくせに偉そうに…。もう、仕方ないな。
「いま村に帰ることを諦めたら、他にやるべきことが見つからなくて…どうしていいかわからなくなるからだよ」
「やりたいこととか無かったのか?」
「ないよ。ジジババから逃げるので精いっぱいだったもん…はあ」
「なんだよ。そんなに湿っぽい話か、これ?」
「だって…」
「ああ?言わなきゃわかんねえぞ」
とか言って、自分が知りたいだけだろうに。話すのも考えるのも馬鹿らしくなってくる。
「そもそも、「どうしていいかわからなくなる」こと自体がとてつもなく怖いの。そんなの想像しただけでぞっとする」
「そんなにか?誰でもあることだろ」
「ひとりぼっちの時にそうなったらお先真っ暗でしょ!」
「何を怒ってんだ?オマエには船長が付いてるだろ」
「付きまとわれてるだけだよ」
「文句ばっかだな。故郷に帰りたいくせして、帰ったら帰ったでやりたいことも無いとか…帰る意味ないだろ。本当にやる気あんのかよ?」
ひどい言われように、声が出なくなった。なんでそんなこと言うんだろう。
大人だってひとりになることはあるかもしれないけど、こっちは一人になったことなんてない。だったら大人より不安が大きいのなんて当たり前のことなのに、なんでそんなこと言われなきゃいけないんだろう。
第一、それ以外にもジブンは誰よりも不安が積み重なってるっていうのに。
村にいた頃からイヤなことはあった。村に帰れなくなったのもすごくイヤだった。船での生活もイヤなことだらけだ。モンスターに相談なんか出来たものじゃないから。
村でも相談がうまく行かなかったことが多かったから、相談すること自体が怖くなってきちゃってる。
モンスターは村のヤな大人と同じかそれ以上にイヤなヤツが多いから、相談なんて自分の弱みを見せに行くようなものだ。
誰に話しても、船長と船員の両方にバレて一気に生活しづらくなるのは目に見えている。最近は相談しようどうかなんてハナから考えなくなった。
この船じゃ一人で黙っているのが一番良いんだ。キツいけど。それでも、もしかしたら明日にでも村に帰れるかもしれないって思えば、どうにか…。
耐えられないこともあるけど、部屋に隠れてたら泣いていてもバレない。
「なんだよ、マジで泣きそうになって。紛れもない事実じゃねえか」
「もう話しかけないで」
「は?そりゃねえだろ。おい__」
あんまりドラーゴンがクズなものだから、自分から話を切り上げて離れた。
泣きそうって時に追い打ちをかけてくる。こっちのことなんて何も考えてないくせして、心を読んでるんじゃないかってくらいにイヤなタイミングで。
「モンスターのせいで」っていう文句がいくつもわいてくるけど、村にも同レベルでロクでもないヤツはいた。どこにいたってイヤなヤツはいるのかもしれない。そんなこと知りたくなかった。色んなやる気がなくなっちゃう。
こんなことになるなら、お母さんの言いつけを守ってたら良かった。「村の外に出るときはちゃんと友だちが集まってからにしなさい」って。言いつけなんて、少ししか守ったためしがない。
たとえ言いつけを守ったって、大人が嬉しそうにするだけでジブンはこれっぽっちも楽しくない。
一人になってから大人の言ってたことは合ってたんだって気づいたけど、全部が全部そうだったわけじゃない。
今思えば、モンスターは村で聞いていたほど悪い奴じゃないもの。でも、村で聞いていた以上に面倒くさい連中なのに変わりはない。それがけっこう厄介だ。
村で聞いていたようなヤバいヤツであれば船長に言いつければどうにかなる。なまじ話が通じて、こちらの文句をのらりくらりとかわして、船長の前では上手いことやるヤツを除けものにするのは難しい。
船長から見たら、そういうヤツらを叱るのはやり過ぎな気がするらしいから。
船員は最後までヤな感じなヤツばっかりだけど、船長は誰にでも良い顔をしたりしなかったりではっきりしない。
船長は自分自身が大人のつもりなのか子どものつもりなのか知らないけど、ジブンにとっては大人なんだからしっかりしてもらわないと!
船長はどうにも、「ミナライにとっての1番でありたい」のと「この船の責任者を気取っていたい」のとじゃ、どっちが大切なのか怪しいところがある。どっちもやりたがってるから中途半端なんだろうけど。
ジブンだって「お城に行きたい」とか「船員の態度をどうにかしたい」とか色々な悩みがあるけど、「村に帰りたい」っていう一つに絞ってるんだから。船長は大人なんだし、その辺はちゃんとして欲しい。
こんなの、もし本当に相談したとしてもわかってもらえない気がする。モンスターは的外れなことばっかり言うから。
ほんとうに、なにが「ニンゲンはみんな似たようなもの」だ。村の子よりも、他の町とかお城にいる子よりもジブンの方が一番考えてて悩んでて苦しんでるに決まってるのに。
村の大人は「困ったらすぐ相談して」って言ってたけど、相談したい時にそばにいなけりゃ意味がないじゃないか。いらない時にだけ口出しして、みんな似たようなことばかり言って…ああ、そこはモンスターと似てるかも。
ダメだダメだ、村の大人までモンスター並みに嫌いになったらもっと帰りたく無くなっちゃう。
早く帰れるように…誰にも言わないで頑張らなきゃ。帰りたいんだって思わなきゃ。
「うん、大変大変。すっごく大変」
「雑にシメようとすんなって。まだあの話がついてないだろ?」
「なに…?」
「オマエの一人称の話だよ」
かなりイライラしてる時にイヤな話を…。モンスターはイヤなことばっかり話に出してくる。というかこれってそんなに掘り下げないといけない話なんだろうか?モンスターの感覚がわからない。
「俺の予想じゃあ、一人称を『ジブン』にしてるのはミナライの最後の意地なんじゃないかと思ってるが…実際どうなんだ?」
「なにそれ?何が言いたいの?」
「『ジブンはモンスターに騙されてなんかない』っていう意地だよ」
言われてみれば、そうかもしれない。本当の名前は言ってないからまだ大丈夫というような…。着いて行ってるんなら完全にアウトなのもわかってはいるんだけど。
「お、図星か?」
「少しはそうかもしれないけど、ほぼ合ってないね。残念!」
「じゃあどう違うのか全部説明してもらおうか?」
「もう、しょうがないな」
あれ?なんか喋る流れになってる…。
まあ、ドラーゴンもこっちが言わなきゃわからないだろうし…話してあげるとしよう。
「モンスターの誘いには乗ったけど、心まで売り渡した訳じゃないって感じかな」
「そんなの思い込みだろ?オマエ、割と船長のこと頼ってるじゃねえか」
「だって、頼らないと!モンスターを相手にするのなんて初めてなんだから、モンスターの船長に頼るのは普通でしょ?船長だってジブンに頼られたがってるし」
「へえ、割と気付いてんのな」
「なにが?」
「あいつの、ミナライへのキモイ親心だよ」
「…ほんとに頼られたがってるってこと?」
「じゃなきゃ、あそこまでうざ絡みしねえだろ」
うう、何度考えても気持ち悪い。
普段は話半分で流してるけど、ほんとの本気となるといたたまれない。
「オマエは全く心開いてないんだな。船長が憐れで仕方ないぜ」
「そんなのジブンの勝手でしょ」
「ふうん。じゃあ本名を明かさないのも自分で決めたつてことだ。どういう理由があったんだよ?」
「それは話したでしょ?」
「さっきのは『本名を話さない原因』だろ?今回のは『本名を話さないって決めるに当たった理由』を聞いてるんだ」
「質問ばっかりじゃない?うざったいんだけど」
「そう言うなって。話したくないなら話さなくていい、なんてニンゲンの間でしか通用しねえぞ?」
呆れる。そんなの、ジブンの周りでも通用したためしがない。
村に帰れないままのくせして、村に居たころと同じことが起こってる。どこにいても辛いことばっかりだ。モンスターはみんなイヤなヤツだから仕方ないのかな。
あれ?だとしたら村のヤな大人って、モンスター並みの性格してるってこと?はあ…?あんなヤツらの言うこと聞いてたのがバカらしくなってきた。
「おい、早く話せって。寝かせてやんねえぞ」
「はいはい。ええと、村での「自分」と村の外での「自分」とは分けて考えないと頭がパンクするからだよ」
「なんだそりゃ?」
「話すのめんどくさい」
「急に消極的になんなよ…」
「だってドオルにもした話なんだもん」
「しつこくされたくなかったらとっとと話せ」
勝手なヤツだ。ドオルに説明をせがむのも回りくどいし、話した方が早いな。
「ドオルと話してる時、『自分』をいくつか持て』って言われたの。『仕事場での自分』とか、『友達の前での自分』とか。そうは言われたってすぐにできるものじゃないから、村の中と外とで分けてみようとはしてるけど、まだまだ難しいんだよ」
「そうか?やろうと思えばできそうなもんだが。ここに居る奴は初日で察してると思うぞ。この船では素の自分でいるのは不味いってな」
「そりゃ、皆は大人なんだからわかって当然でしょ」
「物わかりの良い子どもだっているはずなんだけどな。村で甘やかされすぎてクソガキになっちまったってオチか」
「考えてもわからないことくらいたくさんあるし!」
大人は余裕ぶって見下してくるけど、ジブンだって考えているのは間違いない。
経験があるんだかなんだか知らないけど、子どもが何にもわからないのは考えてないからだなんて大間違いだ。
「ジブンが考えを変えないのは単にイヤだからじゃないよ。そもそもやり方がわからなかったり、『自分をいくつか持つ』って言葉がよくわからないからだよ。初めてのことなんだから、わかんなくたって良いでしょ」
「そりゃそうだが、正解を提示されてるんならわかるもんなんじゃないのか?」
「やり方を教えられなきゃわかんないよ」
「面倒な性質だな」
ああもう、いい加減なんだから。なんで教えるのを面倒臭がるんだ?自分ができることは相手もできるとは限らないのに。こっちができないのをうざがられても、ジブンは変われないままだ。そうなったらコイツはまた面倒臭そうな顔するだろうに。
「はあ、最悪だよ。モンスターは何においてもいい加減なんだから…。教えられなきゃ何にもできないなんて、考えたらわかるってのに」
「オマエの教育環境は劣悪って訳だな。ご愁傷様」
「努力しようって気はないわけ?」
「ないな。俺のオマエのお守りのために生きてない」
「いちいちうざったがられるこっちも辛いんだけど?」
「そう言われてもな」
とことんどうでも良さそうにされる。こういう反応、最初は苛ついてたけど最近は傷付くようになってきた。
「やっぱりモンスターってダメだな」と思っていても、否定されることが多くなると「ジブンってダメなのかな」と落ち込んでくるようにもなる。
村に帰りたいと思うのだってそうだ。だんだん変わってきてしまった。
最初の頃はただ村に帰りたいと思ってた。でもモンスターに村でのことを色々掘り起こされたせいで、「村にもイヤな子がいた」とか、「大人たちはこっちが本当に危ない目に遭っても助けにも来てくれない」とか、「ジジババがまだ生きてる」みたいな、村に居た頃にジブンを取り巻いてたもろもろの問題点が浮かび上がってきた。
おかげで本気で「帰りたい」とは願えなくなってきたのが今の本音だ。
「まさかオマエと船長がそんな騙し合いしてるとはな」
「え?そんな話してた?」
「やってたやってた。若い奴が忘れっぽいと洒落になんねえぞ」
いや、ドラーゴンがいかにダメな大人かっていう話だった。さては、話をそらしたな?あのまま話続けてものらくらかわされただろうから、忘れてやることにしよう。ほんとうにどうしようもないヤツだ。
「…で?騙し合いってなに?」
「信頼し合ってるふりして、お互いに隠し事だらけなとこだよ」
「言うほどやりあってる?船長は嘘つけないタイプでしょ」
「そうとは限らんぞ?なんならオマエがなんか隠してるって気付いてるとか…」
「ええ?まさか、ねえ」
「船長のこと舐めきってんのな?」
「そうじゃないよ。これ、アイツにバレたら大変なことになる話だからさ」
「ああ、オマエに依存気味なんだもんな」
「たぶんね」
船長がジブンにどれだけヤバい気持ちを持ってるのはわからないけど、船員が口々に言うからには深刻なんだろう。
仲が良くない船員同士でも、そればかりは口を揃えて「船長はミナライを構いすぎだ」って言う。モンスターは危ないことでもテキトーな感じで言うから、ほんとうはもっと好かれているのかもしれない。
だったら尚のこと、村に関係する相談は誰にもしちゃいけない。船長はもちろんもってのほかだけど、船員の耳に届くのもマズい。
船員もだいぶ減ったけど、だからって秘密が船長に伝わらないとは限らない。今までは「すぐにバラすヤツがどこかにいる」くらいの認識だったから、正確には誰がバラしたがりなのかわかっていない。もしかしたら今の船員の中にそういうヤツ残ってるかもしれない。
それも理由の一つだけど、船員からからかわれるかもしれないのもイヤだ。
「じゃあなんのためにここにいるんだよ」なんて、ジブンをまるごと否定するようなことを言われそうだから。そこまで言われたら、「やっぱモンスターってクソだ!」なんて怒る元気もなくなっちゃう。
船長にバレたらバレたで、ジブンの心だけじゃなくこの先の時間まで良いように使われそうで怖い。船長はモンスターの中じゃ話が通じる方だけど、周りに流されやすい。
船長だけが好き勝手やってるようで、出て行く前の船員たちがそう見えるように仕立て上げてたんじゃないだろうか?自分たちは注目されなくするため、ミナライに目を向けさせようって。面倒臭がりのヤツらがやりそうなことだ。
船員のほとんどは、船長のことを本来の性格よりも悪くでっちあげてた。船長は「悪い」というより変わってる。迷惑をこうむることには変わりないけど、ただ悪いヤツと言うのとは少し違う。
船員になってから日が浅くて、やむなく誤解してるモンスターもいたんだろうけど…どっちにしろ、マズイことを引き起こしていたかもしれない。
船員たちが、ふざけて「一生飼い殺しにされるかもな」とか「骨になっても離して貰えないんじゃないか?」なんてアホみたいな悪ふざけを言ってても、船長はそれを「その手があったか」なんて素直に受け取っていたのだとしたら怖すぎる。
だからこそジブンは誰を相手取っても気が抜けない。どちらかというと船長の方が危ない。
そうだな、船長にバレちゃったら「自分とミナライだけの秘密」として隠し通したあげく、勝手に話を進めちゃうかもしれないから…うん、船長にだけはバレちゃダメだ。
「どうしたよ、そんなに頷いて」
「船長なんかアテにならないなって思っただけ」
「酷え奴だな、あんなに尽くして貰ってんのに」
「どこがよ!今まで全然大陸に連れてってくれなかっのに」
「船長は気晴らしに島に行ってやってたのかもしれないぞ?一旦は旅を楽しむってのも有りだったんじゃねえか?」
「ヤだよ!村にいないでいるのに慣れちゃったら、村に帰ること諦めちゃうかもしれないもん」
「気色悪いな、オマエ」
「は!?」
「故郷に執着しすぎなんだよ」
またこいつは…モンスターはこの手の話をほんとうにわかってくれない。
「元いたとこに帰りたいって思って当然でしょ?」
「本当にそれだけが理由か?」
思わず、ぎくりとする。
「マジかよ、カマかけてみるもんだな」
「え…?ハッタリってこと?」
「まあな。バレたからには大人しく話した方が良いぜ?」
うそっぱちのくせに偉そうに…。もう、仕方ないな。
「いま村に帰ることを諦めたら、他にやるべきことが見つからなくて…どうしていいかわからなくなるからだよ」
「やりたいこととか無かったのか?」
「ないよ。ジジババから逃げるので精いっぱいだったもん…はあ」
「なんだよ。そんなに湿っぽい話か、これ?」
「だって…」
「ああ?言わなきゃわかんねえぞ」
とか言って、自分が知りたいだけだろうに。話すのも考えるのも馬鹿らしくなってくる。
「そもそも、「どうしていいかわからなくなる」こと自体がとてつもなく怖いの。そんなの想像しただけでぞっとする」
「そんなにか?誰でもあることだろ」
「ひとりぼっちの時にそうなったらお先真っ暗でしょ!」
「何を怒ってんだ?オマエには船長が付いてるだろ」
「付きまとわれてるだけだよ」
「文句ばっかだな。故郷に帰りたいくせして、帰ったら帰ったでやりたいことも無いとか…帰る意味ないだろ。本当にやる気あんのかよ?」
ひどい言われように、声が出なくなった。なんでそんなこと言うんだろう。
大人だってひとりになることはあるかもしれないけど、こっちは一人になったことなんてない。だったら大人より不安が大きいのなんて当たり前のことなのに、なんでそんなこと言われなきゃいけないんだろう。
第一、それ以外にもジブンは誰よりも不安が積み重なってるっていうのに。
村にいた頃からイヤなことはあった。村に帰れなくなったのもすごくイヤだった。船での生活もイヤなことだらけだ。モンスターに相談なんか出来たものじゃないから。
村でも相談がうまく行かなかったことが多かったから、相談すること自体が怖くなってきちゃってる。
モンスターは村のヤな大人と同じかそれ以上にイヤなヤツが多いから、相談なんて自分の弱みを見せに行くようなものだ。
誰に話しても、船長と船員の両方にバレて一気に生活しづらくなるのは目に見えている。最近は相談しようどうかなんてハナから考えなくなった。
この船じゃ一人で黙っているのが一番良いんだ。キツいけど。それでも、もしかしたら明日にでも村に帰れるかもしれないって思えば、どうにか…。
耐えられないこともあるけど、部屋に隠れてたら泣いていてもバレない。
「なんだよ、マジで泣きそうになって。紛れもない事実じゃねえか」
「もう話しかけないで」
「は?そりゃねえだろ。おい__」
あんまりドラーゴンがクズなものだから、自分から話を切り上げて離れた。
泣きそうって時に追い打ちをかけてくる。こっちのことなんて何も考えてないくせして、心を読んでるんじゃないかってくらいにイヤなタイミングで。
「モンスターのせいで」っていう文句がいくつもわいてくるけど、村にも同レベルでロクでもないヤツはいた。どこにいたってイヤなヤツはいるのかもしれない。そんなこと知りたくなかった。色んなやる気がなくなっちゃう。
こんなことになるなら、お母さんの言いつけを守ってたら良かった。「村の外に出るときはちゃんと友だちが集まってからにしなさい」って。言いつけなんて、少ししか守ったためしがない。
たとえ言いつけを守ったって、大人が嬉しそうにするだけでジブンはこれっぽっちも楽しくない。
一人になってから大人の言ってたことは合ってたんだって気づいたけど、全部が全部そうだったわけじゃない。
今思えば、モンスターは村で聞いていたほど悪い奴じゃないもの。でも、村で聞いていた以上に面倒くさい連中なのに変わりはない。それがけっこう厄介だ。
村で聞いていたようなヤバいヤツであれば船長に言いつければどうにかなる。なまじ話が通じて、こちらの文句をのらりくらりとかわして、船長の前では上手いことやるヤツを除けものにするのは難しい。
船長から見たら、そういうヤツらを叱るのはやり過ぎな気がするらしいから。
船員は最後までヤな感じなヤツばっかりだけど、船長は誰にでも良い顔をしたりしなかったりではっきりしない。
船長は自分自身が大人のつもりなのか子どものつもりなのか知らないけど、ジブンにとっては大人なんだからしっかりしてもらわないと!
船長はどうにも、「ミナライにとっての1番でありたい」のと「この船の責任者を気取っていたい」のとじゃ、どっちが大切なのか怪しいところがある。どっちもやりたがってるから中途半端なんだろうけど。
ジブンだって「お城に行きたい」とか「船員の態度をどうにかしたい」とか色々な悩みがあるけど、「村に帰りたい」っていう一つに絞ってるんだから。船長は大人なんだし、その辺はちゃんとして欲しい。
こんなの、もし本当に相談したとしてもわかってもらえない気がする。モンスターは的外れなことばっかり言うから。
ほんとうに、なにが「ニンゲンはみんな似たようなもの」だ。村の子よりも、他の町とかお城にいる子よりもジブンの方が一番考えてて悩んでて苦しんでるに決まってるのに。
村の大人は「困ったらすぐ相談して」って言ってたけど、相談したい時にそばにいなけりゃ意味がないじゃないか。いらない時にだけ口出しして、みんな似たようなことばかり言って…ああ、そこはモンスターと似てるかも。
ダメだダメだ、村の大人までモンスター並みに嫌いになったらもっと帰りたく無くなっちゃう。
早く帰れるように…誰にも言わないで頑張らなきゃ。帰りたいんだって思わなきゃ。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる