ミナライの旅

燕屋ふくろう

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風邪引いた 3

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「船長はなんで怖いモンスターも仲間にしたの?」
「というと、どんな奴だ?」
「すぐ攻撃しようとしてくるヤツとか、船長に取って代わろうとするヤツ。」
「ああ、それか。」



船長は顎に手をやってうつむいた。
船長は船員を大切にしていないのかと言うとそうじゃない。自分が旅を楽しみたいのも、船員を引き連れたいのもたぶん本心だ。

なのにどうして、それが叶わなくなるようなことをしたんだろう。
「怖いモンスター」の例を挙げたらすぐに納得したから、区別がついていなかった訳じゃないみたいだけど…。



「どうしてだろうな。誰でも良かったのかもしれん。」



かと思えばテキトーな答えが返ってきた。



「でも、あんな奴ら仲間にしたら危ないじゃん。旅ができなくなって、船長じゃいられなくなるって思わなかったの?」
「考えはした。だがあの頃はまだ、旅が終わっても良いと思っていたからな。」



はあ…?何を言ってるんだコイツは?
船長になりたてなのに?これから旅をするぞってところなのに、終わっても良いだって?



「じゃあなんでジブンを仲間にしたの?」
「いや、なんというか…オマエのことをよく知らなかったから。」



知らなかったから仲間にした?初対面だから何も知らないのは当たり前だけど、わからないからこそ仲間にしたって意味に聞こえたような。



「謎が多いヤツが好きってこと?」
「いや、全く。」
「だったらなんでジブンを選んだの?」
「ええと…。」



また、しどろもどろになった。



「どうせすぐに逃げ出すだろうと…旅なんて一夜の夢になるはずだった。」



さっきから、話がつながっていない。



「ほんとうは旅をしたくなかったってこと?」
「いや、そうじゃなくてだな…あの頃は特に疲れていたんだ。船長になりたい夢は本当だ。」
「なら休んでからにしたら良かったのに。」
「そうもいかなかった。港町のニンゲンの目があったし、その…あそこは城に近かった。」



お城?あそこから近かった、というとフェガリ城のことだろうか。



「フェガリ城に行ったことあるの?」
「は?」



船長は急に顔を上げて見つめてきた。



「「は?」ってなに?聞いただけじゃん。」
「え。ああ、そうだな。その、なんだ。ミナライはあの城に関係があるのかと思ってな。」
「なんで?」
「城の名前なんてそうそう知らないだろう。」
「知ってるよ!ジブンの村とか港町以外の人も知ってる。世界地図にのってるでしょ?」
「そうなのか。で、どうなんだ?あの城と関係があるのか?」



船長が前の話題を掘り返すなんて珍しい。ちょっとしつこい気もする。



「無いよ。行ったこともないし。」



船長は何度か小さく頷いて、膝の上で手を握りしめていた。



「そうか。安心した。」
「お城がキラいなの?」
「ああ、嫌いだ。」
「ジブンの行きたいところに連れてってくれるんじゃなかったの?」
「…いきなり何の話だ?」
「ジブンね、お城に行ってみたいの。今まで一度も行ったことないから。」



ヨロイが震えて、一息ついたような間があった。船長がさっきよりも姿勢を正した気がする。
まるでジブンがとんでもないことを言ったみたいな…?



「どうしたの?」



声をかけると、落ち着かないようにさまよっていた船長の頭が止まった。



「駄目だ。あそこは危ない。」
「え?危なくないよ。」
「とにかく駄目だ。」



首をかしげる。何をそんなにガンコになっているのやら。モンスターは兵隊さんにやられるかもしれないけど、ジブンはそんなことないのに。



「じゃあジブン1人で行く。船長は待ってて。」
「駄目だ駄目だ、あそこには…。」



船長は大きくかぶりを振って、地団駄を踏みそうな勢いで足を浮かせてはゆっくりと床に下ろした。



「子どもが1人になるものじゃない。とにかく城は駄目だ。他のところになら連れて行ってやるから。」
「ほんとう?じゃあ島旅は終わりにして、大陸に行こうよ!」



来た、とばかりに船長を覗きこんだ。
やっと、ジブンの希望を聞いてくれるのかも!



「…少し待ってくれ。針路を考えるにも時間がいるから、ええと…すぐには大陸に行けない。わかるな?」
「わかった。でも約束だよ!ね?」
「ああ、約束だ。」



よし、やったぞ。ああでも、ほんとうに陸に行ってくれるとは限らないか…いいや、さすがに風邪の時の約束を破ったりしないよな?うん、きっとそうだ。



「街に潜入する時は船長のヨロイの中に入ろうかな?船員も何匹かいた方が良いよね。人にバレないようにしないといけないし、ゴースト系が良いかな?」
「いや…皆、変身魔法が使える。ニンゲンに扮することは可能だ。」

「えっ、人の姿になれるの?じゃあ前からそうしてくれたら良かったのに。船長から言っておいてよ。」
「いいや、一度でもモンスターとしての姿を見たことがある者には変身魔法は効かない。街のニンゲンには効くが、ミナライの目には変わらずモンスターの姿が映るだろう。」
「えー、もったいないな…!」



ほんとうに残念ではあったけど、心が沈みきることはなかった。
ふと、船長のヨロイが傾いた音がした。



「…オマエは本当に人里で育ったんだな。」
「え?うん。」



他に何があるっていうんだ?
楽しくなってきたところだったのに、コイツは変なことばかり言う。ひと睨みしようとしたら、船長はまた黙ってしまった。

今日の船長はやっぱりおかしいな。なんで悩んでるのかわからないし、気にしなくて良いか。さっきの話の続きを聞こう。



「その変身魔法が使えるのは誰なの?」
「モンスターなら皆使える。」
「魔法が苦手な種族もいるよ?」
「最近は事情が変わったからな。全員使えるようになった。既にニンゲン社会に紛れ込んでいるモンスターも、そこそこ存在する。」
「えっ、危な…!」
「そうだな。だが、そうでもしないと生きられない。」



なんだか変な答えが返ってきた。
ジブンは人の街にモンスターがいるなんて危ないって言ったのに、船長は「ミナライはモンスターの心配をした」という意味で受け取ったのか?

そんなことする訳ないでしょ…気持ち悪いな。



「街には何匹くらいで向かう?」
「それは追い追い決めよう。一気に決めると良くない。」
「そう?」
「船員と共に決めた方が意見が纏まりやすい。船員のケンカを聞くのは嫌だろう?」
「そうだね、わかった。」



うんうん、船長はちゃんと陸旅に真剣だ。様子が変だけど、気にせず畳みかけて良かった。

ジブンは船長の前ではいつも以上に良い子ぶらなきゃいけないし、船長もそういう「ミナライ」が好きっぽいけどやってみるものだな。

とはいえ、船室じゃなきゃこんなことできなかった。
ピッシュの件を思い出すと、甲板でこんな話を持ちかけるのは怖かったから。



「…元々、近いうちに陸に舵を切るつもりだったんだ。」
「そうなの!?」



ぎょっとして、身を乗り出してしまう。



「危ないだろう、ちゃんとベッドで寝ていろ。」
「う、うん。大陸に行くつもりなら早く言ってよ。ずっと前から頼んでたじゃん。」
「すまない。潮時だとわかってはいたんだが。」



じゃあなんでやらなかったんだ?ジブンに意地悪してただけ?さすがにそれは無いか。



「なんで陸に行こうって思ったの?」
「ミナライや、皆のためをと思ったんだ。だが決めきれずにいて…先ほど、船員たちから詰め寄られたのが決め手になった。島旅ばかりするからミナライが参って風邪を引いたんじゃないかと。」
「そんなこと言ってたの?船員が?」
「ああ。」



なんだ、アイツらもたまにはやるじゃん!それなりに仲良くしておいて良かった!ずっと「村に帰りたい」って言い続けてたのが実ったんだ。

船長はいよいよ、ジブンを含めた全員に詰め寄られている状態にある。船長として応えない訳にはいかなくなったんだろう。


今の船長が大人しいのは、皆から悪口みたいに「針路を変えろ」と当たられるのが辛かったからなのかもしれない。
ざまあみろだ。人の言うことを無視し続けたバチが当たったんだ。



「ねえ、大陸にはいつ行く?」
「それはさっき言っただろう…。」
「だいたいの目安を聞いてるの!」
「最低でも、オマエの風邪が治ってからだ。」
「今すぐ行こうよ!」
「駄目だ。風邪が治るまで、大陸のヘリでじっと待つのも辛いだろう。」



確かに、目の前に大陸があるのに待つだけなのはイヤだな。
とはいえ、もう陸に近づいた気さえしてくる。船長が針路変更の話をするなんて夢みたいだ。



「嬉しそうにして…本当に故郷が好きなんだな。」
「うん、早く帰らないと。」
「帰れると良いな。」



島旅を長引かせたヤツがなにを言っているのやら…。
それにしても、引き止めてこなかったのは意外だった。船長はミナライに構いすぎだって、船員からくどく言われてきたから。

今までのは全部思い過ごしだったのかも。そう思いたくもなる。
だって、島旅から抜け出せるなんて!こんなに嬉しいと思ったのは久々だ。



「さて、そのためにも船員と薬草を採って来なくてはな。」
「うん、お願い。待ってるね。」
「ああ。それはそうと、ミナライはどうして風邪を引いたんだ?」



__おいおい、今のは完全に出て行く流れだったでしょ…!



「なに、急に…。」
「そういえば、風邪の原因を聞いていないと思ってな。今度からは未然に防がないといけないだろう。」
「そうだね。」



とりあえず返事をして、急いで頭をめぐらせる。
テキトーな言い訳…なにかないか?



「最近、キレイな星が見えるようになってさ。夜に甲板に出ることが多かったんだよね。」
「…それで風邪を引くのか?」
「うん。寒いから。」
「ニンゲンは寒いだけで風邪を引くのか?」



ええ…そんなことも知らないの?
でも、今はその方が助かるな。風邪を引くってなったらかなりの時間外にいないといけないけど、星の観察にそこまで本気になる訳がないから。

のちのち可笑しいと思われても、流れ星を見ようとムキになってた、なんて言っておけばバレないだろう。



「そうだよ。星を見てたら寒くてもガマンできちゃうの。」
「寒いと感じた時点で部屋に戻らないと駄目じゃないか。今度からは気をつけるんだぞ。」
「はーい。」



お前に言われなくてもわかってる。ぐっとこらえたら、冷たいわだかまりがお腹に落ちていった。


『早く部屋に戻らないと』。
一昨日もそれ以外の日も、そう思ってた。眠くなかったけど、あのまま甲板にいたら寝られる気がした。

一昨日は夢うつつだった時、船長と船員の話し声で目が覚めた。寝るために話し声を聞きに行って、そのせいで変に目が覚めて、もっと眠くなって甲板で寝て風邪を引いた。

全く、何をしてるんだ…。今思えば、いくら寂しくても部屋で寝るべきだった。
風邪を引いて、昼でも一人で部屋にいなきゃいけなくなるなんて本末転倒だ。

船長が訪ねてくるだろうから、本格的な一人ぼっちではないけど…自由に動けない窮屈さで、余計に眠れなくなるかも。



「俺はそろそろ甲板に戻る。必ず薬草を持ってくるからな。」
「船長…。」
「なんだ?」
「風邪が治るまで外に出ちゃダメ?」
「当たり前だ。海の上は風が強いじゃないか。最近は涼しくなってきたし…。」
「じゃあ、船長がここに来てよ。絶対にヒマになるもん。」
「構わないが、元はと言えばオマエが外で寝るからだろう?皆にあまり心配をかけさせるな。」
「ああ、うん。」



そんなに怒らなくても、船長以外に心配してるヤツなんてほぼいないだろうに。有り得るとしたら、ティチュとキャノヤーとスケルトンくらいだ。



「船員もここに来させよう。面倒臭がりな奴は除外するから安心するといい。」



船長が頭を撫でてきた。頭が痛くなるくらい冷たい。



「じゃあ、船員に色々と説明してからまた来るからな。」
「うん。」



船長が出て行った。

寝返りを打って、ベッドに頬を寄せる。部屋の中は目を閉じても開いても変わらない暗さだった。

まだ夜じゃないのに寝かせられて、目を閉じては開いて、外で聞こえる話し声や波の音に耳を傾けて…いつの間にか寝てる。
村で風邪を引いた日はそうやって過ごしてた。

今日と大体同じだけど、気分は全然違う。


こんな日までも、船長には焦らされっぱなしだ。
名前のことも、「なんで風邪を引いたんだ?」って聞かれた時も。

特に、風邪の理由については言い訳を考えてなかったからかなりヒヤヒヤした。

怒られるから「誤魔化さないと」と焦ったのか、船員に知られてバカにされるのがイヤだったのか、自分でもわからない。


目を閉じても、手なぐさみを探しても何にもならない。ああ、イヤな時間だ。なんで風邪を引くような真似をしたんだろう…考えたらわかったのに。


でも、なんで風邪を引いたのかはわかってる。何日もの間、夜中に甲板に出ていたからだ。
こうも原因がわかりきっているのも珍しいや。


最近、あまり眠れていなかったのが始まりだ。
そんな日が続くと、波が追い詰めてくるような音に聞こえだして他の音を探さなきゃいけなくなった。

船員に事情を話そうかと思ったけど、海の近くの村で育ったのに波の音が怖い時もあるなんてバカにされそうで言えなかった。


何か、特別イヤなことがあったわけじゃない。でもなんでか急に不安な気持ちが襲ってくることが続いて、寝づらい日が出てきた。


眠れない夜は部屋を抜け出して甲板に忍び込むようになった。
甲板に行けば、誰かが別のことをしてるかもしれない。その物音だけでも気分転換になるかと思いついたのがきっかけだった。


たびたび、誰かの話し声が聞こえた。こそこそと木箱の裏に隠れて、ただ話を聞いていた。

話し声というのは案外、安心できた。
なにも考えなくても、誰かが代わりに考えてくれてるような気がしたから。それに、会話を聞くことだけに集中したら不安なことを考えずに済む。


心がざわざわしなくなったらすぐに部屋に戻っていたけど、そのうちずっと聞いていないとダメになった。ジブンが平気になる前に話が終わると思うと怖くなっていった。

でも、話し声でうとうとしても眠りにくいことに気付いた。眠れたとしても、変なところで目を覚ましてしまう。

声っていうのはぐっすり寝られなくなるものなのかもしれない。だからといって、声を聞きに行かないで寝るのはもう無理だった。

ふと目が覚めて、まだ空が真っ暗だと辛くなる。
なんでこんなところで寝たんだろうと思いながら部屋に戻っても寝られなかった。



誰かがたまに船室を抜け出して甲板で話しているのを知ったのはたまたまだった。
おしっことかうんちを捨てる用のバケツを甲板まで持っていく時だ。

あの日もたまたま話をしていただけだったんだろう。甲板に毎日のように張り込んだけど、誰かが話をしていたのはほんの数日だったから。

それでもその数日を逃がすかと思うと怖くて、毎夜甲板に行かないといけなかった。


寝室で眠れそうになっても、隣の部屋からのイビキがうるさい。何度もそのことで文句を言ってきたから、今さら「ちょっと話をして」なんて言えなくて…だから、自然と会話が発生する甲板に行くしかなかった。


誰かを待っているようで、一人で甲板に行っているだけだった。そんなのわかってた。夜がそのまま過ぎて、誰も来ない日は悲しかった。

それはそれで、静かな中だと波枕が聞こえて少しは心が安らぐ気がした。

村で聞いた音だからと思えば、安心できない自分がおかしいような気持ちさえした。どんな小さなことでも自分を責めるようになってきて、甲板にいる時間が長くなっていった。



何日も夜の海風のそばにいたから、風邪を引くのは当たり前だ。「子どもは風の子」とは言っても、さすがに限界がきたみたいだった。

甲板で夜通し過ごしたのは一昨日が初めてだけど、免疫力はずっと下がってたんだろう。

風邪を引いた原因はわかりきっているけど、誰かに言えるような話じゃない。特に、この船のヤツらには絶対に。


風邪を引く前から、誰かにバレるのだけは避けようと決めていた。見つからないために、甲板の隠れ場所を度々変えて過ごした。スパイみたいでイヤだった。


スパイになれるなら、船長の秘密を探りたいけど…「幸せな夢」の一件以来、船長は夜中に誰かと会話しなくなった。

つい昨日か今日かのことだから、一昨日がイレギュラーだったのかも、ほんとうに誰とも会わなくなったのかはわからない。

なんにせよ、スパイは無理だ。
風邪を引いたからには甲板に行くどころか部屋から出られない。皆に注目されちゃったから、夜中に見張りがつくのはジブンの方になるだろう。


今は船長のことなんかどうでもいいか。
船員にはいつか風邪の原因がバレるかもしれないけど、テキトーに誤魔化せば良いだろう。アイツらは気になることにはしつこいけど、こっちだって負けじと追い払えば大丈夫なはず。もうわかってるから平気だ。


長いこと考えて、頭が熱くなった。喉のイガイガを取り払おうとうなってみる。

こんなになるまで風邪を引いたとわからなかったのは、甲板に出るために無理をするのが当たり前になっていたからかもしれない。


甲板には眠りやすくするために行っていたのであって、あそこで寝るつもりじゃなかった。すぐに部屋に帰るつもりだったのに…。

船長たちが話を始める前に寝ちゃったなんて、相当疲れていたのかも。


今回は気付きがあったというより誤算が痛い。甲板に行きづらくなるのは、寝苦しい夜の逃げ道がつぶされたようなものだ。


今回のこと、船員から「いらん仕事が増えた」なんてグチグチ言われなきゃ良いけど。

アイツらも、風邪はわからなくても体調不良はわかるだろう。ティチュたちがそのところを説明してくれるだろうし、船員のご機嫌取りは必要ないかな。


船長はつきまとってきそうで厄介だ。薬草集めやら陸旅の針路やらで忙しくしていてほしい。
来てくれるのがスケルトンたちなら嬉しいな。


でも、誰にもほんとうのことは言えない。

眠れないなんて、別に隠すようなことでもないのに。村に居た頃は、部屋から出たらお父さんかお母さんがジブンに気付いて、当然のように相手をしてくれた。

ここにいるのはどうしようもないヤツばかりだしな…。顔を合わせただけで目が覚めるだろう。


想像ばかりしても良くない。今の自分について考えよう。

甲板に出られないならどうしようか。でも、陸旅が始まるなら苛立つことも減るし寝苦しくなくなるかも。ほんとうに陸旅が始まるなら、の話だけど。


さすがに大丈夫だよね?今度こそ大陸に行けるよね?

一応、甲板に出る以外で眠れる方法を…ダメだ、そんなの思いつかない!甲板に出るくらいしか対策がわからない。


これからも隠れて甲板に出るにしても、また風邪を引いたらおのずと「隠れて甲板に出ていた」ってバレるしな。

そうなったらこっぴどく怒られる。言い訳が通用しないし、船員にだってイヤな顔をされてジブンがおバカだと思われちゃうかも。

それに、風邪は治ってからも油断は禁物だってお母さんが言ってた。今は風邪を引きやすい体になってるかもしれないから止めておこう。


いや、夜中に外に出なくたって風邪を引くことはある。それを言い訳にすればなんとか…いや、そんな誤魔化しが通用するだろうか?


さすがのモンスターも「子どもは体が弱い」ってことくらいは予想がつくだろうけど、限界があるだろう。何回も風邪を引いたら「なんでこんなに?」って疑われるだろうし。


今までの船旅で風邪を引いてこなかったから余計に「なんで急に風邪引くようになったんだ?」って疑われて、ジブンの行動がバレる未来が見える。


自分の健康さを呪うことになるとは思わなかった。
船長が付きまとうどころか、船員がジブンのお守りをしたくないがために厳しく見張られる可能性がある。


夜に外に出る機会が増えたその時に、お星さまにお願いしたら良かった。どうか疑われませんように。あんまり風邪を引きませんようにって。


何を願ってもどうしようもないか。眠れますようにって願ったのにダメだったから。


あんなに無理に寝ようとしなくても良かったのかもしれないけど、眠れないと考え事が続いて不安だったから頑張るしかなかった。


ジブンなりに頑張ったのに、星も見られなくなっちゃった。
風邪っていつもどのくらいで治ってたっけ…覚えてないな。


ここには薬も暖かい毛布も足りてない。村にいたなら、眠れないのも風邪も気にしなくて良いのに。

風邪を引いてる時にまで村の思い出で苦しくなるなんて。やっぱり、一人で寝てると色々と考えてしまう。


だからって船長が自由にしてくれる訳ないしな…。船員だってキャノヤーたち以外にも「ちゃんと寝てろ」って叱ってくるヤツがいるだろう。


村の大人に似たヤツらはいるのに、ここは村とは似ても似つかない。いつもと違う場所で変なことをするものじゃないんだな。

大人しくしてるのが正解ってこと?でも、無理なことをしたおかげで大陸に行けるかもしれないし…。

もういいや、寝よう。いくら考えたって風邪は治らないんだ。
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