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二章 孤独な少女の小さな願い
動き出す者達
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今日の起床は朝8時。そこから朝食バイキングを終え、現在9時。アディルは今日も支店へと行き、エリスも図書館へ行くと言ってすぐに行ってしまった。
つまり今日もお子様2人の面倒を見るという事だ。まあ、問題を起こさなければ楽に観光出来そうだな。
・・・・・・・。
「・・・こんな物騒な所でしか出来ないんだろうか」
「ん? にいちゃんなんか言ったか?」
「なにも言ってないよ」
・・・絶対に聞こえてただろ。と、言いたくなる表情でベルがにぱっと笑う。
周囲を見渡すと、ガヤガヤと武装したグループで溢れかえっており、その中心には掲示板には仕事の依頼書が大量に貼ってある。
今、俺達がいるのは冒険者組合レプテンダール支部だ。非常時におけるこの街での戦闘許可と滞在登録を行っている。
「はい。許可致しましたカストルス様。ようこそレプテンダールへ」
受付嬢が宣言した。これで俺達はもしもの時に戦闘を行う事が出来る。・・・滞在は一週間くらいだからそのもしもが起こらなければいいのだが。
「よっし! ・・・こっからどうする? 合流時間の4時半までに終わる依頼でもやってみるか?」
やる事も無かったし、俺はそれでもいいのだが・・・
「私は行く!」
有彩が乗り気なので俺も首を縦に振る。
「じゃ、受付さん! よさげな仕事はあるか? 出来ればこの街の中で終わるやつ」
「そうですね・・・。少し時間を頂けますか?」
「おう」
そう言って受付嬢は後ろへ下がっていく。そうして、しばらくすると何枚かの紙をもって来る。
「お、お待たせしました。・・・依頼の件ですが、カストルス様がいらっしゃるので、こちらの案件で構いませんか?」
俺はその紙を覗いてみる。・・・ちょっと待て。
「この街に潜む裏組織の排除って、これ冒険者への依頼なんですか?」
その問いに受付嬢も微妙な顔をしていた。
「え、ええ。今、高難易度の依頼は無くてですね。それに、カストルス様への依頼ですので・・・。という事で国の方へ掛けた結果、これが出てきたという訳です」
どうやらその組織はゴキブリ並の撤退の速さとしぶとさだから冒険者に依頼してもすぐに元に戻ってしまうため放置という形になっていたのだ。
無茶だと思ったが、当のベルはというと・・・
「おお! やるぜ! 絶対楽しい!」
ノリノリだ。多分これで決まりだろう。
「報酬は・・・19万マルクですが、本日の進捗状況に応じて報酬は変更されますので予めご了承ください」
つまり、今日中に最後までやれば日本円で19万が手に入るという訳か。
「よっしゃ! お仕事開始だぜ!
ベルはまず、衛兵の詰所へと向かい、何かの交渉をした。そして詰所に見た目は普通の地図を置いて向かったのは地下の水路だ。
ベル曰く、この街の外へ水を出すための大きな水路がどこかにあり、昨日見ても地上には隠れ家は無い。だから裏組織が拠点にするなら地下の水路だと思う。との事だ。
そしてそれは実際に当たっていた。裏組織は水路の端にある人が歩くける所や広いスペースを拠点にしていた。そこへベルが駆け込む。
「ひぃぃぃぃ! 逃げろ! こいつは化け物だ!」
「『魔法剣士』!? なんでここに!」
「無理無理! 勝てる訳無いでしょ!」
チリジリになる30人程の裏組織の面々。実力差は圧倒的だ。
数秒で30人程の武装を壊し、剣を鞘に収めた。
「・・・うるせえな。喋ってる暇あったら剣を取れ。取らないなら失せな」
いや、取る訳無いだろ。
と、やはり全員手を上げて降伏する。
「さてと、ここだな。・・・ほいっと」
ベルが地下のマップを取り出し、丁度この場所に印を付ける。
「何をしたんだ?」
「複印の地図ってな。この地図に書かれた事はもう1つの同じ地図にも同じく書かれるっていう魔道具だぜ」
こうして少し経った後、複数の衛兵が来た。そのまま裏組織の人達は連行されて行った。つまりこの地図を見た衛兵が来たのだろう。
「さてと、あと2つだが・・・。これを見てれば多分二手に別れて良さそうだな。にいちゃんはチビ助の事頼んだぜ」
と言ってベルが恐ろしい速さで走り出す。
「っ! ちょっと・・・」
と言ったが既にベルの姿は無い。・・・ホントにむちゃくちゃな速さである。
「・・・行こう」
「そうだな・・・。あ、でも有彩は戦えるのか?」
その問いに有彩が縦に首を振る。まああの爺さんの20倍の魔力だし、転移者だ。弱いはずが無い。
俺もベレッタMCを構えて前へと進み出す。
~~~~~~~~~~~~~~~
王都アイクレルトより南へ2000kmに位置するガルデン都市国家連合国との国境にあるのが城塞都市エステザンである。ここではガルデン都市国家連合国との戦闘が絶えないのだ。
これまでガルデン都市国家連合国はアイクレルト王国へと進軍しようと大量の兵を進軍させてきた。その数は1度で20万を優に超えているだろう。
しかし、その軍を瞬く間に壊滅させる1人の少女が城壁の塀の上に座っていた。その少女は蒼の髪のロングヘア、そしてそれに見合う蒼眼で身長の割に幼顔だ。
そしてこの瞬間、唐突に雪が降り出した。
「・・・雪?」
ガルデンの兵士が狼狽える。ここはアイクレルト王国の南側。ましてや今この世界では10月上旬で、雪など降るはず無いのだ。
それを大人しく見ていた少女が口を開く。
「ひとーつ。私の前では全てが凍るー」
少女がそう呟くだけで少女の視界内にある全てが凍りつく。大地や空気、人や木々すら動きが止まる。
「ふたーつ。私の前には何もなーい」
再び呟くとその凍りついた世界の中にいたガルデンの兵が爆散する。そしてその氷の世界も爆散し、何もかもが跡形も無く消え失せる。
「みーっつ。私の声は届かなーい」
その少女が城壁にいる味方の兵を見る。味方の兵の目には瞬時に敵兵を殺し尽くした少女への驚きも、自分の国が勝った時の感動も、自分の手柄が無かった時の虚しさも無い。
ただ、彼らの胸の内には恐怖と納得の意があった。
彼女はアイクレルト王国魔法師序列第二位。『凍棘の魔女』の異名で知られるへスティア・エイリプトである。
へスティアはまだ未成年の17歳だが、超級種SSSランク『氷晶の霜龍王』の契約者であり、エリスとは違い龍王の力を完璧に使いこなす事が出来る正真正銘の魔女だ。
「あーあ。つまんない。・・・もっと強い人と戦いたいなー」
へスティアからすればこの戦場はただの作業場。これが100万でも200万でも結果は変わらない。それほど実力差が開いていた。
「エイリプト様。陛下から書面にて司令が届きました。・・・至急、レプテンダールへ向かって欲しいとの事です」
後ろから来た伝達兵を興味無さげに見たへスティアは王の司令の件を考える。
「ん~。行ってみようかな。たしかその近くにエリスさんもいたはずだし」
「はっ! かしこまりました。 今すぐに準備を・・・」
「要らないよ」
へスティアは伝達兵の言葉を遮って断る。
「〈開門〉・〈氷晶の霜龍王〉」
へスティアは魔法を使用し、超級種SSSランクの龍王を虚空へ召喚する。
全長は30m程。鱗の様な白い物に覆われた体に至る所から飛び出す氷棘。翼は水晶の如く、角は不純物の無い宝石の如き輝きを放つ。そして全体が本物の氷で出来てるかのような美しさ。
そんな美しくも圧倒的な力の存在が姿を現す。
「ぐっ!」
アイクレルトの兵達がその圧力に悲鳴を上げた。当然の事だ。人類が束になっても勝てない絶対的な存在。そんな存在の放つオーラは絶大だ。
「荷物は全部レプテンダールに送っといて。・・・行くよ、メル」
へスティアが飛び乗る。すると氷晶の霜龍王は翼を羽ばたかせ、急上昇。爆風を撒き散らしながら北西へと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~
「ふんふ~ん」
地下道の裏組織「カルナ」でもイルバが姿を現した。カルナの本拠地は以前水路工事で使う為に作られた部屋を拠点としている。部屋と言ってもそれなりの数が有り、総勢100名近い集団を一室に入れる事が出来る。
その内の小さな個室ではカルナのリーダーとイルバが商談を行おうとしていた。
「これは、イルバ様。本日はどのようなご要件でしょうか?」
柄の悪そうな男がイルバへ深々と敬礼する。
「別にぃ~。そろそろ時期だからぁ~。いつものを買いに来ただけだよぉ~」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
イルバが語尾を伸ばす特有の話し方をしながら構成員の男を待つ。
裏組織カルナは特殊な薬の密売や製造、運び屋等の事をしている犯罪組織だ。薬は麻薬や人体に危険が及ぶ物である。
「こちらご所望の薬『CCS23』です」
「はぁ~い」
イルバが25万マルクを渡し薬を受け取る。
「この薬は契約生物を強制的に従わせる効果ですが・・・。イルバ様ともなればこれは必要無いのでは?」
男の声にイルバはニヤリと笑う。そして虚空からピエロの仮面を取り出し、被る。
「だってぇ~。これを使うのイルバじゃないんだも~ん」
「・・・確か、イルバ様は魔王ディステル様の幹部でしたよね。・・・でしたら、これを使った実験でしょうか?」
「う~ん。惜しいねぇ~。これを使うのは計画の為なのぉ~。ま、君達には言う必要ないねぇ~」
と言ってイルバが立ち去ろうとする。・・・その時
「大変です! 何者かに支部を1つ潰されました!」
部屋に入ってきた組織の警備員がリーダーにそう告げる。
「数は分かりませんが、恐らく少数! 相当な手練だとの事です!」
「くそっ! こっから撤退するぞ! 準備を・・・」
その言葉をイルバがジェスチャーで遮る。
「もぉ~う。しょうがないなぁ~。イルバが相手をするよ~。ここを潰されるのは不味いし」
「イルバ様!? しかし・・・」
警備員は否定的だ。外部の存在に借りを作るのは良くないと判断したのだろう。
「いや、ここはイルバ様におまかせしよう。だが、我々の役目は変わらない。急げ!」
「はい!」
リーダーの声に反応して警備員は急いで部屋から出ていく。すぐにでも撤退が開始されるだろう。
「まぁ~必要ないと思うけどねぇ~。・・・で、分かってるよねぇ?」
「はい。数回分のCCS23を無償提供します」
「いいねぇ~。そう来なくっちゃ」
イルバは意気揚揚と部屋の外へ出て行った。
つまり今日もお子様2人の面倒を見るという事だ。まあ、問題を起こさなければ楽に観光出来そうだな。
・・・・・・・。
「・・・こんな物騒な所でしか出来ないんだろうか」
「ん? にいちゃんなんか言ったか?」
「なにも言ってないよ」
・・・絶対に聞こえてただろ。と、言いたくなる表情でベルがにぱっと笑う。
周囲を見渡すと、ガヤガヤと武装したグループで溢れかえっており、その中心には掲示板には仕事の依頼書が大量に貼ってある。
今、俺達がいるのは冒険者組合レプテンダール支部だ。非常時におけるこの街での戦闘許可と滞在登録を行っている。
「はい。許可致しましたカストルス様。ようこそレプテンダールへ」
受付嬢が宣言した。これで俺達はもしもの時に戦闘を行う事が出来る。・・・滞在は一週間くらいだからそのもしもが起こらなければいいのだが。
「よっし! ・・・こっからどうする? 合流時間の4時半までに終わる依頼でもやってみるか?」
やる事も無かったし、俺はそれでもいいのだが・・・
「私は行く!」
有彩が乗り気なので俺も首を縦に振る。
「じゃ、受付さん! よさげな仕事はあるか? 出来ればこの街の中で終わるやつ」
「そうですね・・・。少し時間を頂けますか?」
「おう」
そう言って受付嬢は後ろへ下がっていく。そうして、しばらくすると何枚かの紙をもって来る。
「お、お待たせしました。・・・依頼の件ですが、カストルス様がいらっしゃるので、こちらの案件で構いませんか?」
俺はその紙を覗いてみる。・・・ちょっと待て。
「この街に潜む裏組織の排除って、これ冒険者への依頼なんですか?」
その問いに受付嬢も微妙な顔をしていた。
「え、ええ。今、高難易度の依頼は無くてですね。それに、カストルス様への依頼ですので・・・。という事で国の方へ掛けた結果、これが出てきたという訳です」
どうやらその組織はゴキブリ並の撤退の速さとしぶとさだから冒険者に依頼してもすぐに元に戻ってしまうため放置という形になっていたのだ。
無茶だと思ったが、当のベルはというと・・・
「おお! やるぜ! 絶対楽しい!」
ノリノリだ。多分これで決まりだろう。
「報酬は・・・19万マルクですが、本日の進捗状況に応じて報酬は変更されますので予めご了承ください」
つまり、今日中に最後までやれば日本円で19万が手に入るという訳か。
「よっしゃ! お仕事開始だぜ!
ベルはまず、衛兵の詰所へと向かい、何かの交渉をした。そして詰所に見た目は普通の地図を置いて向かったのは地下の水路だ。
ベル曰く、この街の外へ水を出すための大きな水路がどこかにあり、昨日見ても地上には隠れ家は無い。だから裏組織が拠点にするなら地下の水路だと思う。との事だ。
そしてそれは実際に当たっていた。裏組織は水路の端にある人が歩くける所や広いスペースを拠点にしていた。そこへベルが駆け込む。
「ひぃぃぃぃ! 逃げろ! こいつは化け物だ!」
「『魔法剣士』!? なんでここに!」
「無理無理! 勝てる訳無いでしょ!」
チリジリになる30人程の裏組織の面々。実力差は圧倒的だ。
数秒で30人程の武装を壊し、剣を鞘に収めた。
「・・・うるせえな。喋ってる暇あったら剣を取れ。取らないなら失せな」
いや、取る訳無いだろ。
と、やはり全員手を上げて降伏する。
「さてと、ここだな。・・・ほいっと」
ベルが地下のマップを取り出し、丁度この場所に印を付ける。
「何をしたんだ?」
「複印の地図ってな。この地図に書かれた事はもう1つの同じ地図にも同じく書かれるっていう魔道具だぜ」
こうして少し経った後、複数の衛兵が来た。そのまま裏組織の人達は連行されて行った。つまりこの地図を見た衛兵が来たのだろう。
「さてと、あと2つだが・・・。これを見てれば多分二手に別れて良さそうだな。にいちゃんはチビ助の事頼んだぜ」
と言ってベルが恐ろしい速さで走り出す。
「っ! ちょっと・・・」
と言ったが既にベルの姿は無い。・・・ホントにむちゃくちゃな速さである。
「・・・行こう」
「そうだな・・・。あ、でも有彩は戦えるのか?」
その問いに有彩が縦に首を振る。まああの爺さんの20倍の魔力だし、転移者だ。弱いはずが無い。
俺もベレッタMCを構えて前へと進み出す。
~~~~~~~~~~~~~~~
王都アイクレルトより南へ2000kmに位置するガルデン都市国家連合国との国境にあるのが城塞都市エステザンである。ここではガルデン都市国家連合国との戦闘が絶えないのだ。
これまでガルデン都市国家連合国はアイクレルト王国へと進軍しようと大量の兵を進軍させてきた。その数は1度で20万を優に超えているだろう。
しかし、その軍を瞬く間に壊滅させる1人の少女が城壁の塀の上に座っていた。その少女は蒼の髪のロングヘア、そしてそれに見合う蒼眼で身長の割に幼顔だ。
そしてこの瞬間、唐突に雪が降り出した。
「・・・雪?」
ガルデンの兵士が狼狽える。ここはアイクレルト王国の南側。ましてや今この世界では10月上旬で、雪など降るはず無いのだ。
それを大人しく見ていた少女が口を開く。
「ひとーつ。私の前では全てが凍るー」
少女がそう呟くだけで少女の視界内にある全てが凍りつく。大地や空気、人や木々すら動きが止まる。
「ふたーつ。私の前には何もなーい」
再び呟くとその凍りついた世界の中にいたガルデンの兵が爆散する。そしてその氷の世界も爆散し、何もかもが跡形も無く消え失せる。
「みーっつ。私の声は届かなーい」
その少女が城壁にいる味方の兵を見る。味方の兵の目には瞬時に敵兵を殺し尽くした少女への驚きも、自分の国が勝った時の感動も、自分の手柄が無かった時の虚しさも無い。
ただ、彼らの胸の内には恐怖と納得の意があった。
彼女はアイクレルト王国魔法師序列第二位。『凍棘の魔女』の異名で知られるへスティア・エイリプトである。
へスティアはまだ未成年の17歳だが、超級種SSSランク『氷晶の霜龍王』の契約者であり、エリスとは違い龍王の力を完璧に使いこなす事が出来る正真正銘の魔女だ。
「あーあ。つまんない。・・・もっと強い人と戦いたいなー」
へスティアからすればこの戦場はただの作業場。これが100万でも200万でも結果は変わらない。それほど実力差が開いていた。
「エイリプト様。陛下から書面にて司令が届きました。・・・至急、レプテンダールへ向かって欲しいとの事です」
後ろから来た伝達兵を興味無さげに見たへスティアは王の司令の件を考える。
「ん~。行ってみようかな。たしかその近くにエリスさんもいたはずだし」
「はっ! かしこまりました。 今すぐに準備を・・・」
「要らないよ」
へスティアは伝達兵の言葉を遮って断る。
「〈開門〉・〈氷晶の霜龍王〉」
へスティアは魔法を使用し、超級種SSSランクの龍王を虚空へ召喚する。
全長は30m程。鱗の様な白い物に覆われた体に至る所から飛び出す氷棘。翼は水晶の如く、角は不純物の無い宝石の如き輝きを放つ。そして全体が本物の氷で出来てるかのような美しさ。
そんな美しくも圧倒的な力の存在が姿を現す。
「ぐっ!」
アイクレルトの兵達がその圧力に悲鳴を上げた。当然の事だ。人類が束になっても勝てない絶対的な存在。そんな存在の放つオーラは絶大だ。
「荷物は全部レプテンダールに送っといて。・・・行くよ、メル」
へスティアが飛び乗る。すると氷晶の霜龍王は翼を羽ばたかせ、急上昇。爆風を撒き散らしながら北西へと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~
「ふんふ~ん」
地下道の裏組織「カルナ」でもイルバが姿を現した。カルナの本拠地は以前水路工事で使う為に作られた部屋を拠点としている。部屋と言ってもそれなりの数が有り、総勢100名近い集団を一室に入れる事が出来る。
その内の小さな個室ではカルナのリーダーとイルバが商談を行おうとしていた。
「これは、イルバ様。本日はどのようなご要件でしょうか?」
柄の悪そうな男がイルバへ深々と敬礼する。
「別にぃ~。そろそろ時期だからぁ~。いつものを買いに来ただけだよぉ~」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
イルバが語尾を伸ばす特有の話し方をしながら構成員の男を待つ。
裏組織カルナは特殊な薬の密売や製造、運び屋等の事をしている犯罪組織だ。薬は麻薬や人体に危険が及ぶ物である。
「こちらご所望の薬『CCS23』です」
「はぁ~い」
イルバが25万マルクを渡し薬を受け取る。
「この薬は契約生物を強制的に従わせる効果ですが・・・。イルバ様ともなればこれは必要無いのでは?」
男の声にイルバはニヤリと笑う。そして虚空からピエロの仮面を取り出し、被る。
「だってぇ~。これを使うのイルバじゃないんだも~ん」
「・・・確か、イルバ様は魔王ディステル様の幹部でしたよね。・・・でしたら、これを使った実験でしょうか?」
「う~ん。惜しいねぇ~。これを使うのは計画の為なのぉ~。ま、君達には言う必要ないねぇ~」
と言ってイルバが立ち去ろうとする。・・・その時
「大変です! 何者かに支部を1つ潰されました!」
部屋に入ってきた組織の警備員がリーダーにそう告げる。
「数は分かりませんが、恐らく少数! 相当な手練だとの事です!」
「くそっ! こっから撤退するぞ! 準備を・・・」
その言葉をイルバがジェスチャーで遮る。
「もぉ~う。しょうがないなぁ~。イルバが相手をするよ~。ここを潰されるのは不味いし」
「イルバ様!? しかし・・・」
警備員は否定的だ。外部の存在に借りを作るのは良くないと判断したのだろう。
「いや、ここはイルバ様におまかせしよう。だが、我々の役目は変わらない。急げ!」
「はい!」
リーダーの声に反応して警備員は急いで部屋から出ていく。すぐにでも撤退が開始されるだろう。
「まぁ~必要ないと思うけどねぇ~。・・・で、分かってるよねぇ?」
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イルバは意気揚揚と部屋の外へ出て行った。
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