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1話
しおりを挟む婚約と同時に同居することを求められ、仕方なくそれを受け入れ従った私だったのだが……。
「おい! トイレ掃除しろよ!」
「は、はい!」
見事にこき使われてしまっている。
どのみち結婚するのだから一緒に住むくらい問題ないだろう、なんて思ったのが間違いだった。
「とろいんだよ! 自分で考えてやれ! それともなんだ、俺のためにはできないってのか!?」
「違います!」
「じゃあやれよ! さっさと! あー、だる、もうとろいやつは捨てちゃおっかなぁ~」
婚約者アデミムは元々はもう少し優しい人だったのだ。しかし同居開始と同時に急激に高圧的に支配的になった。まるで暴君のよう。そして今もそんな振る舞いが続いている。
特に、押し付けられるのはトイレ掃除が多い。
やたらと多い。
それこそ一日に数回やらされる。
しかも、敢えて派手に汚してから掃除をさせてくるから厄介だ。
自分の家のトイレなのだからもっと綺麗に使えばいいのに……、なんて思ってしまう。
「掃除できました!」
「うるさいわ! 遅い、遅すぎるッ」
「え……」
「ああ? 何だその目は? 俺に何か言いたいのか? ああそうか! くちごたえしようとしているんだな!? 生意気な女だ!!」
「いえ、そうではなくて……」
「容姿も並、能力は下、それで忠誠心も下か! あーあーほんとクズだわな。どうしようもないやつ」
彼は少し考えて。
「決めた! 婚約は破棄だ!」
急にそんな宣言。
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