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3話
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あの後アデミムが私に対してやってきたことを世に流した。
情報を流すことを得意とする職種の人が親の知り合いにいたので、その人に頼んで広く流してもらったのだ。
その結果アデミムは『婚約者にトイレ掃除をはじめとした雑用を大量にさせたうえ理不尽な言葉をかけ続けた男』として有名になり、あっという間に、皆から睨まれひそひそ話をされるような存在となってしまった。
それによって心を病んだアデミム。
彼はもう次の女性へはいけなくなって。
結果的に、独り身のまま、数年経って自ら死を選んだ。
彼は心が弱かったようだ。
己が弱いからあんな風に私をこき使い見下していたのか――その時になってその事実に気づいた。
多分、彼は、自分が弱いからこそ下となる人間が欲しかったのだろう。それであんな風に理不尽を押し付け圧迫するようなことばかりしてきていたのだろう。それほどに、彼は弱く、また歪な人間だったのだ。
でも、だからといって罪が消えるわけではない。
心が弱ければ何をしてもいいのか?
問いの答えはノーだ。
己が弱いのなら、弱いなりに、他人の痛みにも気づける人になるべきだ。なのに彼はそれを目指さなかった。それどころか、他者を傷つけることばかりして。自分の痛みには敏感でも他人の痛みに鈍感なのでは話にならない。
ちなみに私はというと、今、宿でバイトをしている。
毎日とても忙しい。
大変だったり、心折れそうだったり、そういうことも多々あった。
でも嬉しいこともあって――というのも、先日、客として宿に来た高貴な家柄の青年から声をかけてもらったのだ。
それから彼と親しくなって。
ちょくちょく会って話をするようになって。
自分で言うのも何だが、結構良い感じだ。
アデミムとの縁はあんな感じで切れてしまったが、私の人生はまだ終わっていない。
否、むしろここからが始まり。
未来への道はいくつもあり、希望の光だって何度も射し込むのだ。
◆終わり◆
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