わがまま妹、自爆する

四季

文字の大きさ
1 / 4

1話

しおりを挟む
 思えば、損してばかりの人生だった。

 資産を有する家に長女として生まれた私——ニナは、五歳の時妹が生まれたことをきっかけに放置されるようになった。

 いや、放置はさすがに言い過ぎかもしれないけれど。でも、そう言いたくなるくらい、冷たい待遇を受けることになってしまったのだ。

 食事は与えられる。けれども妹のレーナとは異なる内容である。レーナはいつも豪華なメニューだが、私はというとほぼ毎日一品。多い時でも二品くらいのもの。

 明らかに目に見える扱いの差がそこにはあった。

 また、服やアクセサリーなども、レーナはいつも父親に買ってもらっていた。それも、結構高価なものを、である。

 一方、私はというと、服など滅多に買ってもらえない。

 身体が大きくなって以前の服がぱつぱつになってもまだ買ってもらえない。持っている服が着られなくなるか、穴が空いてどうにもならない状態になって、ようやく買ってもらえる。ただ、もちろん、レーナのような高級なものではない。私に与えられるのは限りなく安価なものだ。

 それでも私は大人しくしていた。

 父親がこんなおかしな人になってしまったのは愛する妻が亡くなったからで、いつかは元に戻ってくれるだろう——そう信じていたから。

 というのも、私の母親は妹のレーナを生んだ直後に亡くなったのだ。
 出産による死亡だったと聞く。

 ショックが大き過ぎたのだ。それで父親はおかしくなってしまったのだ。いつか精神状態が回復したなら、きっと、昔のように優しい人に戻ってくれる。だって、レーナが生まれるまでは、こんな心ないことばかりしなかったのだから。

 私は自分にそう言い聞かせながら、辛い日々を耐え抜き続けた。

 レーナばかりが良い服を着せてもらっていても。レーナは最高級食材を使った料理をたくさん食べていて、私は一品二品でも。

 それでもいつかは昔のように戻る日が来ると信じて、私は、細々と生きる。


 ◆


 そんなある日、レーナに婚約の話が舞い込んできた。

 うちと同じように資産を有する家の息子——その人がレーナの婚約者になるかもしれない人だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者の凱旋

豆狸
恋愛
好みの問題。 なろう様でも公開中です。

あなただけが頼りなの

こもろう
恋愛
宰相子息エンドだったはずのヒロインが何か言ってきます。 その時、元取り巻きはどうするのか?

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

婚約者が妹にフラついていたので相談してみた

crown
恋愛
本人に。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

処理中です...