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1話
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思えば、損してばかりの人生だった。
資産を有する家に長女として生まれた私——ニナは、五歳の時妹が生まれたことをきっかけに放置されるようになった。
いや、放置はさすがに言い過ぎかもしれないけれど。でも、そう言いたくなるくらい、冷たい待遇を受けることになってしまったのだ。
食事は与えられる。けれども妹のレーナとは異なる内容である。レーナはいつも豪華なメニューだが、私はというとほぼ毎日一品。多い時でも二品くらいのもの。
明らかに目に見える扱いの差がそこにはあった。
また、服やアクセサリーなども、レーナはいつも父親に買ってもらっていた。それも、結構高価なものを、である。
一方、私はというと、服など滅多に買ってもらえない。
身体が大きくなって以前の服がぱつぱつになってもまだ買ってもらえない。持っている服が着られなくなるか、穴が空いてどうにもならない状態になって、ようやく買ってもらえる。ただ、もちろん、レーナのような高級なものではない。私に与えられるのは限りなく安価なものだ。
それでも私は大人しくしていた。
父親がこんなおかしな人になってしまったのは愛する妻が亡くなったからで、いつかは元に戻ってくれるだろう——そう信じていたから。
というのも、私の母親は妹のレーナを生んだ直後に亡くなったのだ。
出産による死亡だったと聞く。
ショックが大き過ぎたのだ。それで父親はおかしくなってしまったのだ。いつか精神状態が回復したなら、きっと、昔のように優しい人に戻ってくれる。だって、レーナが生まれるまでは、こんな心ないことばかりしなかったのだから。
私は自分にそう言い聞かせながら、辛い日々を耐え抜き続けた。
レーナばかりが良い服を着せてもらっていても。レーナは最高級食材を使った料理をたくさん食べていて、私は一品二品でも。
それでもいつかは昔のように戻る日が来ると信じて、私は、細々と生きる。
◆
そんなある日、レーナに婚約の話が舞い込んできた。
うちと同じように資産を有する家の息子——その人がレーナの婚約者になるかもしれない人だ。
資産を有する家に長女として生まれた私——ニナは、五歳の時妹が生まれたことをきっかけに放置されるようになった。
いや、放置はさすがに言い過ぎかもしれないけれど。でも、そう言いたくなるくらい、冷たい待遇を受けることになってしまったのだ。
食事は与えられる。けれども妹のレーナとは異なる内容である。レーナはいつも豪華なメニューだが、私はというとほぼ毎日一品。多い時でも二品くらいのもの。
明らかに目に見える扱いの差がそこにはあった。
また、服やアクセサリーなども、レーナはいつも父親に買ってもらっていた。それも、結構高価なものを、である。
一方、私はというと、服など滅多に買ってもらえない。
身体が大きくなって以前の服がぱつぱつになってもまだ買ってもらえない。持っている服が着られなくなるか、穴が空いてどうにもならない状態になって、ようやく買ってもらえる。ただ、もちろん、レーナのような高級なものではない。私に与えられるのは限りなく安価なものだ。
それでも私は大人しくしていた。
父親がこんなおかしな人になってしまったのは愛する妻が亡くなったからで、いつかは元に戻ってくれるだろう——そう信じていたから。
というのも、私の母親は妹のレーナを生んだ直後に亡くなったのだ。
出産による死亡だったと聞く。
ショックが大き過ぎたのだ。それで父親はおかしくなってしまったのだ。いつか精神状態が回復したなら、きっと、昔のように優しい人に戻ってくれる。だって、レーナが生まれるまでは、こんな心ないことばかりしなかったのだから。
私は自分にそう言い聞かせながら、辛い日々を耐え抜き続けた。
レーナばかりが良い服を着せてもらっていても。レーナは最高級食材を使った料理をたくさん食べていて、私は一品二品でも。
それでもいつかは昔のように戻る日が来ると信じて、私は、細々と生きる。
◆
そんなある日、レーナに婚約の話が舞い込んできた。
うちと同じように資産を有する家の息子——その人がレーナの婚約者になるかもしれない人だ。
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