1 / 2
前編
しおりを挟む母は私を愛していた。
多分。
でもその一方で憎くもあるようだった。
彼女は父のいない時やたらと当たり散らした。日頃の生活で生まれたありとあらゆる苛立ちを私にぶつけて発散しているようだった。
でも私は母を嫌いだとは思っていなかった。
彼女はそういう人、それに、悪い時ばかりではない――血の繋がっている人である母に対してだからこそそんな風に考えていたのだと思う。
たとえ心なく扱われても。
雑用を押し付けられても。
それでも私はそれを受け入れ適応して生きていた。
私にはかつて一度婚約者がいたことがある。しかしその彼との関わりは母が激怒したことによって終わってしまった。
君の母の振る舞いは酷い、どうしても受け入れられない。
そんな風に言われて。
それによって婚約破棄されてしまったのだ。
彼の言っていることも分からないではない。確かに、結婚相手の母親が情緒不安定気味な人であれば嫌にもなるだろう。将来を考えるだけで嫌な気分になるだろうし、関係を解消したくもなるに違いない。
だからこそ、私はその婚約破棄を受け入れた。
そうして私はまた母のもとへ戻った。
それからも、良い時は良いのだが悪い時は酷い目に遭わされるといった毎日が続いていた――そんなある日、もうすべてを終わりにしてしまいたいと考えて向かった崖にて、一人の青年と出会う。
「待ってください。お願いです、死ぬ前に少し話を聞いてください」
彼は今にも死のうとしていた私に対してそう言った。
10
あなたにおすすめの小説
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。
しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる