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後編

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 ◆


 私は牢で死んだはずだった。

 けれどもどういうわけか今もここにいる。

 いや、身体は消滅した、つまり本当の亡くなったのだけれど。ただ、心だけはここに残ってしまったみたいで。今は一日中この牢にいるしかない。

 でも、ここにいることにはもう慣れた。
 この薄暗い空間も、段々好きになってきたくらい。

 たまに罪人と話す時、私は細やかな幸せを感じる。

 罪人の中には私と同じようにでっちあげに巻き込まれたという人もいるの。そういう人とは話が合う。共感し合うことができるから。

 そういう事情で仲良くなった人が亡くなってしまった時はとても悲しいけれどね。

 そんな今の私を、人々はこう呼ぶ。

『牢の女神』


◆終わり◆
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