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前編
しおりを挟む私には不思議な女神が宿っている。
彼女はとても美しい。
長い金の髪をふわりとなびかせ我が身に寄り添ってくれる愛らしい女性。
――ただし、その名は『裸の女神』である。
「ああ可愛いメリア、愛しているわ」
「え、いや、ちょっと待ってください」
「湖に飛び込んできてくれたのって……そういうこと、でしょう? うふふ、嬉しいわ……愛しているわよ、だから愛してあげるの……」
そう、彼女に出会ったのは幼き雨の日の湖だった。
私は走っていてうっかり足を滑らせた。で、そのまま転倒、勢いがついていたために坂を転がり落ちてしまって。その果てに湖に転落したのだ。
そして彼女と出会った。
「あんな大胆なプロポーズ……うふふ、久々で、ねぇ? とーっても嬉しかったのよ……?」
「いえですからあれはプロポーズではなく事故で」
「でも可愛い顔見せてくれたじゃない、息苦しそうなあの顔……もう最高だったのよ……?」
「やめてください! 私には婚約者がいます!」
私と彼女はいつもこんな感じで関わり合っている。
「あら、残念ね」
◆
その日、私は婚約者ダランより婚約の破棄を宣言された。
「え……」
「だから言っているだろう、婚約は破棄するんだ」
「えええ!?」
「何度も言わせるな面倒臭い。俺はお前が嫌いなんだ。特にそういうところだよ、馬鹿でだらしなくて頭の回転も遅い……そういうところが嫌いなんだ!!」
あまりにも唐突で。
しかしもはや止めることなどできず。
私はそのまま捨てられることとなった。
「二度と俺の前に現れるなよ!」
ダランは鬼みたいな顔をしていた。
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