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前編
しおりを挟む私には幼馴染みがいる。
その幼馴染みというのは、名はドロテアといい、この国の王女だった。
彼女はゆくゆく女王となる予定の人だ。
◆
「君と生きていくのは無理だ! 生涯のお供はやはりもっと素晴らしい女性でなくては! よって、婚約は破棄とする!!」
婚約者オールドレッツは片手を前へ伸ばしわざとらしいポーズで婚約の破棄を告げてきた。
もう少し普通な感じで言えないものだろうか?
不思議でならない。
なぜそんなに演技じみたことをする必要があるのだろう?
よく分からない。
とはいえ、彼の心が私へ向いていないということは分かったので、そういうことならこちらとしてもこれ以上踏み込む気はない。
「承知しました。では、さようなら」
それだけ言って、私は彼の前から去った。
オールドレッツを始めに紹介してくれたのはドロテアだった。
それだけに彼女には言いづらい。
一方的に婚約破棄された、なんて言ったら、彼女に恥をかかせようとしているかのようで。
どうしても気まずさを感じてしまうのだ。
だからドロテアにこのことを伝えるかどうかは悩んだ。
でも嘘をついていてもいずればれる。
ならば今言っておく方がましだろう。
だから決めた――本当のことを話すことを。
「オールドレッツさんとの婚約、破棄になりました」
「ええっ!?」
やはりドロテアはかなり驚いていた。
無理もないか。
ここまで来て話が消えるなんて。
どうしても申し訳ない気持ちに包まれてしまう。
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