「婚約を機に冒険者の仕事は辞めてもらうよ」と言われ冒険者を辞めた私でしたが、一方で彼は好き放題していて……。

１話

「婚約を機に冒険者の仕事は辞めてもらうよ」
「えっ……」

　それは、婚約する数日前のことだった。

「妻となる女性が冒険者の仕事をしているとは周囲に言いづらい。だからなんだ。これは僕らが上手くいくようにするためなんだよ。分かるかい？」
「え……ま、まぁ。でも、どうして？　冒険者ってそんなに社会的な評判が悪いの？　そんなことないわよね」

　婚約者ルトーカスが想定外のことを言ってきたのだ。

「男ならね。でも、女で冒険者をしているなんていうのは、中には良く思わない人だっているんだ」
「それはそうかもしれないけれど、でも、辞めるなんて……」
「何だって!?　辞められないというのかい？　僕のためだというのに？」
「だって私、冒険者を辞める気なんてちっともなくて」

　もちろん、いつまでも働くとは言っていない。家に入るつもりではいる。ただ、せっかくこれまで時間をかけて築いてきたものをわざわざ壊す必要はないのではないか、と思うのだ。そのままにしておくくらい良いのではないか、と思うのだけれど。

　だがルトーカスはそれすらも許さず。

「だとしても僕と婚約するなら辞めてもらうよ！」

　圧をかけてきて。

　それによって私は冒険者を辞めることとなってしまったのだった。