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14話「評価右肩上がり」
しおりを挟む掃除、洗濯、そしてお茶淹れ――様々なことを習い着実に成長していくレイビア。
その能力アップ率は凄まじいもので。
器用ではないが、それなりに、誰もがあっと驚くほどに多くの知識を身に着け技術も高めていった。
「ねえ聞いた? 最近レイビアさん一人で広間の掃除なさっているみたいよ。凄くない!?」
「出世ねぇ~」
そして、それと同時に、その噂も広まってゆく。
「あそこの掃除、特別な役割だもんねっ。普通やらせてもらえないしっ」
「あんたはもうちょっと真面目にやらんかい!」
「ええー、やってるよっ」
「でもレイビアさん、とても良い人よね。尊敬するわ。しなくてもいいのに働こうとするなんて偉大な人だわ」
今や彼女は時の人となっている。
誰もが注目する女性だ。
「レイビアさんが王妃になってくださったらきっと良い国になるでしょうに……」
「でも彼女は人間なのよ、難しいわ。嫌がるでしょうきっと。レイビアさんにだって選ぶ権利はあるわよ。そこを忘れてはならないわ」
「けどさっ、人間嫌いみたいだし、ちょうどいいんじゃない? できればこの国に永住してほしいよねっ」
レイビアに魔王の妻となってほしい、というような意見まで出てきているほどである。
「レイビアさーん!」
その日も窓拭きを黙々とこなしていたレイビアだが、いきなり後ろから誰かに抱きつかれる。
「あ、スレオ」
「今お掃除中?」
ぷにゅぷにゅした彼、スレオは、少々幼稚なところがあって――たびたびレイビアに飛びついたり急に抱きついたりする。
だがそこに悪意はない。
彼はただレイビアを良き友と思っているだけ、当然それ以上の感情などありはしないのだ。
「ええそうよ」
「レイビアさんってさ、魔王様に興味ない?」
「え、何よそれどういうこと」
「結婚してほしいっていう主張が出てきてるみたいなんだよね!」
「えええ!?」
レイビアは目を大きく開く。
「何よそれ!? 無礼でしょう!? アドラスト様が気を悪くされるわよ!?」
「でも実際希望が出てるんだ」
「ネタでしょ? そうよ、間違いないわ。ネタに決まってる!」
「いやそれがそうでもなくてさー」
「スレオ、ふざけるのはいい加減にして」
「ふざけてない! 真面目に言ってるよ。魔王様に興味ない?」
スレオに絡まれたレイビアは溜め息をこぼしつつも手は動かしている。
「もういい? こっち忙しいのよ」
「でーもーでーもー」
「まだ何かあるのかしら」
「魔王様と結婚しようよ! ね!」
「ああもうやめて。いいから黙っていて。失礼よ、そういうの――彼に対して」
レイビアとてアドラストを嫌っているわけではない。
が、だからこそ、変な噂が流れていることには申し訳なさを感じるのだ。
「彼は彼に相応しい女性と結婚するでしょう、それは私ではないわ」
彼女はそこまで言いきった。
――だが。
「おお、ちょうど良かった。お主、今日はここにいたのだな」
そこへアドラストが現れて。
「あ、はい」
「掃除中か?」
「そうです」
「実はな、話があってな……」
何やら言いづらそうに言葉を紡いでいる彼を見て、レイビアは「どうしたのだろう?」と少しばかり不思議に思う。
「頼みがあるのだ」
「私に?」
「そうだ、すまないが今から少し時間を貰ってもいいか」
「ええと……けど、掃除が……」
「その仕事は他の者に回すようこちらから言おう」
「では行けます」
「よし! 決まりだ! では共に来てほしい」
「はい」
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