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6話「迷惑令嬢の絡み」
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「あーら、馬鹿娘じゃない! ごきげんよう!」
ほら来た……。
出会うと絡まれるのはいつものことだが、絡まれた時の絶望感は今も昔も変わらない。
「あ、こんにちは」
なるべく刺激せず、あっさりと最低限の言葉だけを述べて、早めに会話を終わらせたい。それが私の本心だ。彼女は長引けば長引くほど面脳臭くなる人物だから。
「聞きましたわよ? ジジ様に婚約破棄されたとか。残念でしたわね!」
「はい」
こういう時は最低限の返事しかしないに限る。
本当は最低限の返事さえしたくない。無視していたいくらいだ。でも、プライドの高い彼女は、無視したらきっと怒り出す。余計にややこしいことになるに違いない。だから仕方なく最低限の返事だけはするのだ。
「そうなると分かっていたから……貴女はジジ様に相応しくないと忠告しておきましたのに」
知るか。婚約を決めたのは親、私ではない。
「無理矢理婚約などなさるから残念なことになるのですわ」
「いえ、これで良かったと思います」
「まぁ! ついに分かられましたのね! 安心しましたわ、これでもう貴女は間違いを犯さない。このカサブランカ、とっても嬉しくてよ!」
カサブランカはご機嫌だ。声は歌のように軽やかかつ晴れやか、そして可憐。彼女は惜しい人だ、性格をもう少し改善すれば良い女性になれるだろうに。その分かりやすさが良い方に出ていたなら、きっと可愛らしいお嬢様になれただろうに。
「この勝負、わたくしの勝ちのようですわね」
いや、待って待って。
私は彼女と勝負なんてしていない。勝負しよう、などと話した記憶もない。それなのになぜそんな話になっているのか、謎でしかない。もはや十割妄想である。
「おーっほっほ! ジジ様はわたくしがいただきますわよ!」
カサブランカは片手で口を隠すようにしながら豪快かつ高飛車風な笑い声を放つ。
口もとを隠すあたり上品に見せようとしているようなのだが、声が呆れるほど大きいのですべてが台無し。
「あの、カサブランカさん」
「……負け惜しみでも仰るおつもりですの?」
「違います。お伝えしておきたいことが」
「構いませんわ、どうぞ」
「ジジ様は浮気が多過ぎます。カサブランカさんも気をつけられた方が良いと思います」
私がそう述べた瞬間、彼女の顔面が硬直した。
「無礼者! わたくしは浮気されるような魅力不足女ではありませんわ!」
怒り出すカサブランカ。
何となく勢いで言ってしまったが、言わない方が良かったかもしれない。彼女のことを思っての発言でも怒り出すというのが彼女の大きな特徴なのだから。
「貴女が浮気されたのは貴女に魅力がないから! わたくしは浮気なぞされませんわ!」
言いながら、カサブランカは去っていった。
二人のおつきもそれに従う。ただ、別れしなに「調子乗ってんじゃねーですわ!」「相変わらず嫌な女ですね。少し綺麗だからと勘違いして」と吐き捨てられてしまった。
失礼なことを言われているが、私の心にダメージはなかった。
彼女たちが失礼かつ鬱陶しいのはいつものことだからだ。
私はそれより、カサブランカがジジにどんな目に遭わせられるかということの方が気になっている。
カサブランカは以前からジジに憧れていたようだったから、私が婚約破棄されたのを幸運と思い、ジジに接近するだろう。そして、あわよくばジジの妻になろうと動くはずだ。もしかしたら婚約まで進むかもしれない。最初のほんの少しの間だけは可愛がられ、良い気分になるだろう。でもそれは最初だけ。ジジにとって女は奴隷であり玩具。彼はカサブランカのこともいずれ捨てるに違いない。
「何だか鬱陶しい人たちですねー……」
「あっ。すみません、フルービルさん。あの人たちはいつもああなんです。お騒がせしてしまい失礼しました」
ほら来た……。
出会うと絡まれるのはいつものことだが、絡まれた時の絶望感は今も昔も変わらない。
「あ、こんにちは」
なるべく刺激せず、あっさりと最低限の言葉だけを述べて、早めに会話を終わらせたい。それが私の本心だ。彼女は長引けば長引くほど面脳臭くなる人物だから。
「聞きましたわよ? ジジ様に婚約破棄されたとか。残念でしたわね!」
「はい」
こういう時は最低限の返事しかしないに限る。
本当は最低限の返事さえしたくない。無視していたいくらいだ。でも、プライドの高い彼女は、無視したらきっと怒り出す。余計にややこしいことになるに違いない。だから仕方なく最低限の返事だけはするのだ。
「そうなると分かっていたから……貴女はジジ様に相応しくないと忠告しておきましたのに」
知るか。婚約を決めたのは親、私ではない。
「無理矢理婚約などなさるから残念なことになるのですわ」
「いえ、これで良かったと思います」
「まぁ! ついに分かられましたのね! 安心しましたわ、これでもう貴女は間違いを犯さない。このカサブランカ、とっても嬉しくてよ!」
カサブランカはご機嫌だ。声は歌のように軽やかかつ晴れやか、そして可憐。彼女は惜しい人だ、性格をもう少し改善すれば良い女性になれるだろうに。その分かりやすさが良い方に出ていたなら、きっと可愛らしいお嬢様になれただろうに。
「この勝負、わたくしの勝ちのようですわね」
いや、待って待って。
私は彼女と勝負なんてしていない。勝負しよう、などと話した記憶もない。それなのになぜそんな話になっているのか、謎でしかない。もはや十割妄想である。
「おーっほっほ! ジジ様はわたくしがいただきますわよ!」
カサブランカは片手で口を隠すようにしながら豪快かつ高飛車風な笑い声を放つ。
口もとを隠すあたり上品に見せようとしているようなのだが、声が呆れるほど大きいのですべてが台無し。
「あの、カサブランカさん」
「……負け惜しみでも仰るおつもりですの?」
「違います。お伝えしておきたいことが」
「構いませんわ、どうぞ」
「ジジ様は浮気が多過ぎます。カサブランカさんも気をつけられた方が良いと思います」
私がそう述べた瞬間、彼女の顔面が硬直した。
「無礼者! わたくしは浮気されるような魅力不足女ではありませんわ!」
怒り出すカサブランカ。
何となく勢いで言ってしまったが、言わない方が良かったかもしれない。彼女のことを思っての発言でも怒り出すというのが彼女の大きな特徴なのだから。
「貴女が浮気されたのは貴女に魅力がないから! わたくしは浮気なぞされませんわ!」
言いながら、カサブランカは去っていった。
二人のおつきもそれに従う。ただ、別れしなに「調子乗ってんじゃねーですわ!」「相変わらず嫌な女ですね。少し綺麗だからと勘違いして」と吐き捨てられてしまった。
失礼なことを言われているが、私の心にダメージはなかった。
彼女たちが失礼かつ鬱陶しいのはいつものことだからだ。
私はそれより、カサブランカがジジにどんな目に遭わせられるかということの方が気になっている。
カサブランカは以前からジジに憧れていたようだったから、私が婚約破棄されたのを幸運と思い、ジジに接近するだろう。そして、あわよくばジジの妻になろうと動くはずだ。もしかしたら婚約まで進むかもしれない。最初のほんの少しの間だけは可愛がられ、良い気分になるだろう。でもそれは最初だけ。ジジにとって女は奴隷であり玩具。彼はカサブランカのこともいずれ捨てるに違いない。
「何だか鬱陶しい人たちですねー……」
「あっ。すみません、フルービルさん。あの人たちはいつもああなんです。お騒がせしてしまい失礼しました」
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