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3話
しおりを挟むラシェットは私に謝罪。
それから「改めてもう一度婚約……するか?」と言われたけれど、首を横に振った。
彼と生きていく気はもうないから。
今私にはもっと大事なものがある。
そっと抱いていたい存在がいる。
だからもうラシェットとか王妃とかそんなのはどうでもいいことなのだ。
「お疲れ様でした」
帰り道、オーラがそんな風に声をかけてくれる。
「付き合ってくださってありがとうございました」
「いえいえ」
「あの……少し、良いですか?」
「はい、何でしょう」
「私、その……貴方のことが好きです!」
え、というような顔をされてしまう。
でもいい。
たとえどんな顔をされたとしても、気持ちだけは伝えたい。
生まれてしまった感情を放置することはできないのだ。
「すみません、単純ですよね少し親切にしてもらっただけで……切り捨ててもらって構いません、本当に、でも聞いてほしかったのですただそれだけで……」
色々言っていると。
「いえ、僕も同じ気持ちでした」
意外な返答が飛んできて。
「え……」
「貴女と生きてみたいです」
思わぬ展開に瞳が震える。
「共に歩みましょう」
――こうして私たちは結ばれることとなったのだった。
◆
五年後。
私とオーラは夫婦となり、共に穏やかに暮らしている。
既に子も二人生まれて。
今では四人家族となっている。
子どものいる暮らしというのはとにかく色々大変だ。ただ、お手伝いさんがいてくれるので、少しは楽になっている。私一人で家のすべてのことをこなさなくてはならないとなったら大変だが、誰かが協力してくれるなら話は別。大変なことも、誰かと一緒にやれば少しは楽になる。
そうそう、モーラはあの後島流しにされたそうだ。
ラシェットが彼女に対して怒り、二度と一般社会へ戻れないようにそういう対処をしたそうである。
モーラは今、罪人たちが暮らす隔離された島で生きているそうだ。
まぁ、妥当だろう。
だって彼女は私という人間一人の人生を終わらせようとしたのだから。
自分の人生を失うことで償えばいい。
◆終わり◆
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