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5.生徒として一日過ごした!
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一限目は数学だった。
フレアは特別好きなわけではない。が、城で専任の教師から教わってきたから、ある程度は理解している。ガーベラ学院の数学はそこまで高難易度ではなかったため、フレアは苦なく授業内容を掴むことができたし、途中からはミルフィに教えたりもしていた。
続く二限目は国語。
これもフレアはさほど苦労なく乗り切ることができた。
三限目、魔術基礎。
フレアは最初戸惑いの嵐に襲われた。というのも、城での教育の中には魔術関連のものはなかったのだ。そのため、魔術に関する授業というのは初めての経験で。しかし、話を聞いているうちに段々興味が湧いてきて、最終的には楽しめた。
また、カステラが意外とやる気になっていた。
無論、彼女のおっちょこちょいさが解消されることはなく、鉛筆をうっかり教室の一番前まで飛ばしてしまったりしていたのだが。
そうして、フレアの学校生活一日目は無事終了した。
帰ろうとしていると、フレアはミルフィに声をかけられた。
「フレアちゃん! もし良かったら、施設を見学していかない?」
「え。いいの?」
「もちろん! ……って言っても、あたしもそこまで詳しくはないのよね。でも、フレアちゃんよりは知ってると思うわ」
授業が終わると、皆、そそくさと教室から出ていってしまった。ミルフィの話によると、自主的に鍛錬を行なったり寮の部屋に帰ったりしているらしい。ちなみに、カステラは成績不良者が呼ばれる補習に出ているとか。
「お願いしたいわ! あ。でも、リカルド……」
フレアは気まずそうに振り返りリカルドの方を見る。渋いものを食べたような顔をしていたリカルドは、「二人で行くなら警戒を怠るなよ」とぶっきらぼうに言った。だが、それは彼の優しさでもあったのだ。フレアがミルフィと二人で歩くことを許可したのだから。
その後、フレアはミルフィに連れられて色々なところを歩き回った。
教室や魔術実習室などがある本館。食堂、図書館、二階建ての学生寮。芝生が植わっている中庭や裏庭。
見るものすべてが、フレアにとっては特別なもの。
彼女は嬉しさのあまり途中から踊り出していた。
「そろそろ帰りましょっか」
陽はまだ傾いていないが、ひと通り見終えたので、ミルフィは部屋へ帰ることを提案する。
「えぇ! そうね!」
「ふふ。フレアちゃん、楽しそうにしてくれて嬉しいわ」
「ミルフィのおかげよ」
「……あら、照れちゃうわ」
敷地内の見学を終え、フレアとミルフィは寮の自室へと戻る。
二階に上がって廊下を歩いていると、二人の部屋の前に人影——リカルドだった。
「見学は終わったのか、王女」
ミルフィは露骨に不愉快そうな顔をしたが、リカルドは微塵も気にせず、当然のようにフレアに話しかける。
「えぇ! それで帰ってきたのよ!」
「怪しい輩はいなかったか」
「もちろん! 何事もなかったわ。リカルドって案外心配性ね!」
フレアにはっきり言われたリカルドは、ぷいとそっぽを向く。
「……心配とか、べつにしてねぇし」
くるりと体を回転させて、フレアたちがいるのとは逆の方向へ歩き出す。
「じゃ、またな」
去っていくリカルドの背に向けて、ミルフィはひらひらと手を振る。彼が去っていくことが嬉しかったのか、珍しく笑顔だ。
夜、寮の一室で、フレアはミルフィと話をする。
「少し尋ねても構わない?」
「もちろん!」
フレアはベッドの上に寝転がって。ミルフィは手鏡を覗いて口紅の色を確かめながら。それぞれ思い思いのことをしながらも、二人は言葉を交わす。
「確か、フレアちゃんは第二王女なのよね?」
「そうよ」
「で、城内ではあまり良く思われていなかったって、そう言っていたわよね」
「そうなの! 本当に感じ悪いんだから!」
ミルフィは幾本も口紅を持っている。それを順番に唇にあてがって、鏡で色みを確認していた。化粧の研究をしているようである。
「いじめられていたの?」
「うーん、そうかどうかは分かんないけど。でも、そんな感じはしたわ。前妃の派閥の人たちって、本当に性格が悪かったもの」
喋りながら、フレアはベッドから下りた。そして、脇に置いている鞄の口を開けて、中からノートを取り出す。開いたのは、魔術基礎のページ。フレアは復習も兼ねてノートを読み始める。
「……フレアちゃん? それは一体、何を?」
フレアがノートを読んでいることに気づいたミルフィは驚いた顔をする。
「え。何をって、ノートを読んでるだけよ」
「もしかして、復習?」
「その日取った分のノートは見返すものじゃないの」
「そ、そう……真面目なのね……」
ミルフィは少々戸惑ったような顔をしていた。
城にいた頃、専属の教師から「夜にはその日の分のノートを見返すこと」と指示されていたのだ。そのためフレアは、勉強とはそういうものなのだと思い込んでいる。ミルフィに驚かれたのがなぜなのかも理解できていない。
「そうだ。今度歓迎会をしたいなって思っているのだけれど、どうかしら」
「え、私のために?」
「そうよ! もっちろん! と言っても、どのくらい参加してもらえるかは分からないのだけど。カステラちゃんくらいは来てくれそうねー」
夕暮れ時から早めの夜にかけては廊下からよく音が聞こえてきていた寮内も、今は静まり返っている。皆、既に自室へ戻ったのだろう。足音の一つさえ聞こえてこない。
「その歓迎会はリカルドも入れてもらえる?」
「う……男は、ちょっと……でも、彼は貴女の大切な人だものね。仕方ないわ。良しとしましょう」
「ありがとう! 嬉しいわ!」
静かな時の中、二人は語り合う。
「ところで、明日の一限目って、魔術実技よね?」
「えぇ」
「魔術実技って何するの?」
「そうねー……いわば魔法の授業、って感じかしら」
魔術実技について聞き、フレアは「へぇー!」と派手に感心する。
いろんな意味で驚くと共に、触れたことのない世界に触れられた喜びを感じてもいるのだろう。
「でもあたしは『格闘術』の方が好きだわ。明日の二限目」
「か、格闘って……戦うの?」
「そうよ。でも、護身術としても使えるわ。便利よー?」
「そうなんだ……」
火曜日の時間割りは、魔術実技・格闘術・数学・歴史である。
フレアは特別好きなわけではない。が、城で専任の教師から教わってきたから、ある程度は理解している。ガーベラ学院の数学はそこまで高難易度ではなかったため、フレアは苦なく授業内容を掴むことができたし、途中からはミルフィに教えたりもしていた。
続く二限目は国語。
これもフレアはさほど苦労なく乗り切ることができた。
三限目、魔術基礎。
フレアは最初戸惑いの嵐に襲われた。というのも、城での教育の中には魔術関連のものはなかったのだ。そのため、魔術に関する授業というのは初めての経験で。しかし、話を聞いているうちに段々興味が湧いてきて、最終的には楽しめた。
また、カステラが意外とやる気になっていた。
無論、彼女のおっちょこちょいさが解消されることはなく、鉛筆をうっかり教室の一番前まで飛ばしてしまったりしていたのだが。
そうして、フレアの学校生活一日目は無事終了した。
帰ろうとしていると、フレアはミルフィに声をかけられた。
「フレアちゃん! もし良かったら、施設を見学していかない?」
「え。いいの?」
「もちろん! ……って言っても、あたしもそこまで詳しくはないのよね。でも、フレアちゃんよりは知ってると思うわ」
授業が終わると、皆、そそくさと教室から出ていってしまった。ミルフィの話によると、自主的に鍛錬を行なったり寮の部屋に帰ったりしているらしい。ちなみに、カステラは成績不良者が呼ばれる補習に出ているとか。
「お願いしたいわ! あ。でも、リカルド……」
フレアは気まずそうに振り返りリカルドの方を見る。渋いものを食べたような顔をしていたリカルドは、「二人で行くなら警戒を怠るなよ」とぶっきらぼうに言った。だが、それは彼の優しさでもあったのだ。フレアがミルフィと二人で歩くことを許可したのだから。
その後、フレアはミルフィに連れられて色々なところを歩き回った。
教室や魔術実習室などがある本館。食堂、図書館、二階建ての学生寮。芝生が植わっている中庭や裏庭。
見るものすべてが、フレアにとっては特別なもの。
彼女は嬉しさのあまり途中から踊り出していた。
「そろそろ帰りましょっか」
陽はまだ傾いていないが、ひと通り見終えたので、ミルフィは部屋へ帰ることを提案する。
「えぇ! そうね!」
「ふふ。フレアちゃん、楽しそうにしてくれて嬉しいわ」
「ミルフィのおかげよ」
「……あら、照れちゃうわ」
敷地内の見学を終え、フレアとミルフィは寮の自室へと戻る。
二階に上がって廊下を歩いていると、二人の部屋の前に人影——リカルドだった。
「見学は終わったのか、王女」
ミルフィは露骨に不愉快そうな顔をしたが、リカルドは微塵も気にせず、当然のようにフレアに話しかける。
「えぇ! それで帰ってきたのよ!」
「怪しい輩はいなかったか」
「もちろん! 何事もなかったわ。リカルドって案外心配性ね!」
フレアにはっきり言われたリカルドは、ぷいとそっぽを向く。
「……心配とか、べつにしてねぇし」
くるりと体を回転させて、フレアたちがいるのとは逆の方向へ歩き出す。
「じゃ、またな」
去っていくリカルドの背に向けて、ミルフィはひらひらと手を振る。彼が去っていくことが嬉しかったのか、珍しく笑顔だ。
夜、寮の一室で、フレアはミルフィと話をする。
「少し尋ねても構わない?」
「もちろん!」
フレアはベッドの上に寝転がって。ミルフィは手鏡を覗いて口紅の色を確かめながら。それぞれ思い思いのことをしながらも、二人は言葉を交わす。
「確か、フレアちゃんは第二王女なのよね?」
「そうよ」
「で、城内ではあまり良く思われていなかったって、そう言っていたわよね」
「そうなの! 本当に感じ悪いんだから!」
ミルフィは幾本も口紅を持っている。それを順番に唇にあてがって、鏡で色みを確認していた。化粧の研究をしているようである。
「いじめられていたの?」
「うーん、そうかどうかは分かんないけど。でも、そんな感じはしたわ。前妃の派閥の人たちって、本当に性格が悪かったもの」
喋りながら、フレアはベッドから下りた。そして、脇に置いている鞄の口を開けて、中からノートを取り出す。開いたのは、魔術基礎のページ。フレアは復習も兼ねてノートを読み始める。
「……フレアちゃん? それは一体、何を?」
フレアがノートを読んでいることに気づいたミルフィは驚いた顔をする。
「え。何をって、ノートを読んでるだけよ」
「もしかして、復習?」
「その日取った分のノートは見返すものじゃないの」
「そ、そう……真面目なのね……」
ミルフィは少々戸惑ったような顔をしていた。
城にいた頃、専属の教師から「夜にはその日の分のノートを見返すこと」と指示されていたのだ。そのためフレアは、勉強とはそういうものなのだと思い込んでいる。ミルフィに驚かれたのがなぜなのかも理解できていない。
「そうだ。今度歓迎会をしたいなって思っているのだけれど、どうかしら」
「え、私のために?」
「そうよ! もっちろん! と言っても、どのくらい参加してもらえるかは分からないのだけど。カステラちゃんくらいは来てくれそうねー」
夕暮れ時から早めの夜にかけては廊下からよく音が聞こえてきていた寮内も、今は静まり返っている。皆、既に自室へ戻ったのだろう。足音の一つさえ聞こえてこない。
「その歓迎会はリカルドも入れてもらえる?」
「う……男は、ちょっと……でも、彼は貴女の大切な人だものね。仕方ないわ。良しとしましょう」
「ありがとう! 嬉しいわ!」
静かな時の中、二人は語り合う。
「ところで、明日の一限目って、魔術実技よね?」
「えぇ」
「魔術実技って何するの?」
「そうねー……いわば魔法の授業、って感じかしら」
魔術実技について聞き、フレアは「へぇー!」と派手に感心する。
いろんな意味で驚くと共に、触れたことのない世界に触れられた喜びを感じてもいるのだろう。
「でもあたしは『格闘術』の方が好きだわ。明日の二限目」
「か、格闘って……戦うの?」
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