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17.自主的に訓練頑張る!
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準備運動の段階ともいえる走りと体操を終え、フレアたちは休憩する。
一人体力とやる気に満ちているアダルベルトは、仕方なく、個人で鍛錬を行っていた。
そして、休憩開始から三十分ほどが過ぎ、特訓が再開される。
一同は花組の教室から出て開けたところへ移動。石造りの屋根がついた廊下から繋がっているスペースだ。屋根があるおかげで強い日差しの直撃を食らわずには済むが、少々視界が暗い。
「よし! 皆、ここで鍛錬しよう! 訓練用剣はここにある!」
合宿の企画から運営までを積極的に行っているアダルベルトは、口で言うだけではなく、準備もきちんとこなしていた。皆で訓練するために使用する訓練用の剣も、参加人数分間違いなく借りてきている。
「……ったく、だるいな」
リカルドは遠慮なく愚痴を漏らしつつ、アダルベルトから訓練用の剣を受け取る。片手で素早く、という、少々乱暴さを感じさせる受け取り方だった。
「ありがとう! アダルベルト!」
「剣は得意かな? フレア王女」
「いいえ、あまり得意じゃないわ」
フレアは両手で訓練用の剣を受け取りつつ、問いに素早く答えた。
「んなっ!?」
アダルベルトは大袈裟に驚く。
リカルドとミルフィの鋭い視線が彼の両腕に突き刺さっていた。
「どうして驚くのかしら」
「い、いや。すまない。失礼な反応を……」
「失礼とかそういうのじゃないけど、どうして驚いたの?」
「それはだね、自身が得意でないということをすんなり認めるというのが、意外でだね……」
特訓合宿という名の奇妙な会に参加した生徒たちは、本物の刃のついていない剣を握って訓練に勤しむ。素振りをしたり、近くの生徒と斬り合う形を確認したり。
ミルフィは途中で耐えきれなくなっていなくなってしまった。
フレアは近くにいたリカルドとペアを組んで剣の練習をする。
とはいえ、本気での練習ではない。というのも、フレアとリカルドでは剣を使って戦う能力に大きな差があるのだ。二人の剣の腕は、比べようもないほどのもの。だから、本気の斬り合いを行うことは不可能なのである。
「どうだった? リカルド」
数十秒斬り合うような動作を続け、対決が一旦終わると、フレアは期待に瞳を輝かせながら尋ねた。
「まぁそれなりだな」
「やった! 褒められたっ」
「……褒めてねぇ」
「またまたー。そんなこと言ってー」
そんな時、道の向こうから一人の男性が歩いてきた。
花組担任のカッタルである。
「リカルド。今、少しいいか」
静かに歩いてきたカッタルはリカルドとフレアの近くで足を止める。そして、体の向きを僅かに変え、リカルドの方へと向いた。リカルドは、唐突にやって来たカッタルに話しかけられたことに戸惑いつつも、「はい」と返す。
「前期の授業の内容について、君の意見を聞きたくてな」
「皆にですか」
「あぁ。今から聞く予定でいる」
リカルドはカッタルに連れられて歩いていく。
フレアは笑顔で「いってらっしゃーい」と見送った。
ペアを組んでいたリカルドがいなくなってしまったフレアは、しばらくの運動で疲れていたこともあって、近くの柱にもたれるようにして腰を下ろした。濃い影ができているところに入って休憩。優雅な時間を過ごす。
だが、そんな彼女の前に、突如見知らぬ男が現れた。
茶色い頭巾を被った男。鼻の下のヒゲは伸び放題で、荒地のような顔面だ。身なりもあまり良さそうでなく、いかにも不潔そう。体臭もややきつめ。
ただ、表情は柔らかい。
ひたすら相手を安心させようとしているかのような笑顔だ。
「フレアさんて、君かい?」
「えっ……」
「おじさん、フレアさんて人を探してるんだけど」
「私ですけど……何かご用ですか?」
「そうかい。オッケーオッケー」
刹那、男は刃物を取り出した。
フレアは警戒して即座に立ち上がる。
「死んでくれぃ!」
「きゃあ!!」
振り下ろされた刃物を何とかかわす。が、フレアは恐怖のあまり脚に力を入れられない。悲鳴をあげることはできたが、その場にへたり込んでしまう。
「天国逝き一名様ぁ!」
もう駄目だ、とフレアが諦めかけた瞬間、「待て!」という声が空気を揺らした。
直後、飛んできた棒状の物体が男の顔面に命中する。
「ぶへぶしぃっ!」
顔面に棒状の物体を当てられた男は後ろ向けに倒れ込み、そのまま気絶。
「あ、アダルベルト……」
「フレア王女! 大丈夫かい!?」
今度は安堵で立つ力を失ってしまっているフレアに、アダルベルトは駆け寄ってくる。
「立てるかい?」
アダルベルトは積極的に手を差し出す。座り込んだままのフレアは、彼の手を取ることはしたが、立ち上がることはできず困ったような顔になる。
「え、えっと……その、今は無理そう……」
今のフレアは、すぐに立ち上がることができるような状態ではなかった。
「まさか怪我を!?」
大きな声を発して心配するアダルベルトに、フレアは首を左右に振る。そして、彼女は、自身が陥っている状況について言葉で簡単に説明する。
「いいえ、違うわ。ただ、安心しちゃって力が入らないの」
今度はアダルベルトが安堵する番だった。
「……そ、そうか。それならまだ良かった」
アダルベルトはフレアの近くにしゃがみ込み、「本当に怪我はないんだね?」と確認。フレアは微笑みつつ頷いていた。
そんな時だ、カッタルとリカルドが戻ってきたのは。
「おお! 先生! ちょうどいいところに!」
「何だ」
「この不審者がフレア王女を襲ったんです! 彼女は一応無事です。が! 危ないところでした!」
アダルベルトから状況の説明を受けたカッタルは「そんなことが……」と呟いて驚きを露わにする。が、顔面に驚きの色を浮かべたのは束の間だけ。すぐに男を掴み上げ、連れ去っていった。
「大丈夫かよ、王女」
「えぇ。平気よ。リカルドこそ、困ったことはなかった?」
「……無理すんなよ」
「何よ、それ! 心配してあげたのに!」
一人体力とやる気に満ちているアダルベルトは、仕方なく、個人で鍛錬を行っていた。
そして、休憩開始から三十分ほどが過ぎ、特訓が再開される。
一同は花組の教室から出て開けたところへ移動。石造りの屋根がついた廊下から繋がっているスペースだ。屋根があるおかげで強い日差しの直撃を食らわずには済むが、少々視界が暗い。
「よし! 皆、ここで鍛錬しよう! 訓練用剣はここにある!」
合宿の企画から運営までを積極的に行っているアダルベルトは、口で言うだけではなく、準備もきちんとこなしていた。皆で訓練するために使用する訓練用の剣も、参加人数分間違いなく借りてきている。
「……ったく、だるいな」
リカルドは遠慮なく愚痴を漏らしつつ、アダルベルトから訓練用の剣を受け取る。片手で素早く、という、少々乱暴さを感じさせる受け取り方だった。
「ありがとう! アダルベルト!」
「剣は得意かな? フレア王女」
「いいえ、あまり得意じゃないわ」
フレアは両手で訓練用の剣を受け取りつつ、問いに素早く答えた。
「んなっ!?」
アダルベルトは大袈裟に驚く。
リカルドとミルフィの鋭い視線が彼の両腕に突き刺さっていた。
「どうして驚くのかしら」
「い、いや。すまない。失礼な反応を……」
「失礼とかそういうのじゃないけど、どうして驚いたの?」
「それはだね、自身が得意でないということをすんなり認めるというのが、意外でだね……」
特訓合宿という名の奇妙な会に参加した生徒たちは、本物の刃のついていない剣を握って訓練に勤しむ。素振りをしたり、近くの生徒と斬り合う形を確認したり。
ミルフィは途中で耐えきれなくなっていなくなってしまった。
フレアは近くにいたリカルドとペアを組んで剣の練習をする。
とはいえ、本気での練習ではない。というのも、フレアとリカルドでは剣を使って戦う能力に大きな差があるのだ。二人の剣の腕は、比べようもないほどのもの。だから、本気の斬り合いを行うことは不可能なのである。
「どうだった? リカルド」
数十秒斬り合うような動作を続け、対決が一旦終わると、フレアは期待に瞳を輝かせながら尋ねた。
「まぁそれなりだな」
「やった! 褒められたっ」
「……褒めてねぇ」
「またまたー。そんなこと言ってー」
そんな時、道の向こうから一人の男性が歩いてきた。
花組担任のカッタルである。
「リカルド。今、少しいいか」
静かに歩いてきたカッタルはリカルドとフレアの近くで足を止める。そして、体の向きを僅かに変え、リカルドの方へと向いた。リカルドは、唐突にやって来たカッタルに話しかけられたことに戸惑いつつも、「はい」と返す。
「前期の授業の内容について、君の意見を聞きたくてな」
「皆にですか」
「あぁ。今から聞く予定でいる」
リカルドはカッタルに連れられて歩いていく。
フレアは笑顔で「いってらっしゃーい」と見送った。
ペアを組んでいたリカルドがいなくなってしまったフレアは、しばらくの運動で疲れていたこともあって、近くの柱にもたれるようにして腰を下ろした。濃い影ができているところに入って休憩。優雅な時間を過ごす。
だが、そんな彼女の前に、突如見知らぬ男が現れた。
茶色い頭巾を被った男。鼻の下のヒゲは伸び放題で、荒地のような顔面だ。身なりもあまり良さそうでなく、いかにも不潔そう。体臭もややきつめ。
ただ、表情は柔らかい。
ひたすら相手を安心させようとしているかのような笑顔だ。
「フレアさんて、君かい?」
「えっ……」
「おじさん、フレアさんて人を探してるんだけど」
「私ですけど……何かご用ですか?」
「そうかい。オッケーオッケー」
刹那、男は刃物を取り出した。
フレアは警戒して即座に立ち上がる。
「死んでくれぃ!」
「きゃあ!!」
振り下ろされた刃物を何とかかわす。が、フレアは恐怖のあまり脚に力を入れられない。悲鳴をあげることはできたが、その場にへたり込んでしまう。
「天国逝き一名様ぁ!」
もう駄目だ、とフレアが諦めかけた瞬間、「待て!」という声が空気を揺らした。
直後、飛んできた棒状の物体が男の顔面に命中する。
「ぶへぶしぃっ!」
顔面に棒状の物体を当てられた男は後ろ向けに倒れ込み、そのまま気絶。
「あ、アダルベルト……」
「フレア王女! 大丈夫かい!?」
今度は安堵で立つ力を失ってしまっているフレアに、アダルベルトは駆け寄ってくる。
「立てるかい?」
アダルベルトは積極的に手を差し出す。座り込んだままのフレアは、彼の手を取ることはしたが、立ち上がることはできず困ったような顔になる。
「え、えっと……その、今は無理そう……」
今のフレアは、すぐに立ち上がることができるような状態ではなかった。
「まさか怪我を!?」
大きな声を発して心配するアダルベルトに、フレアは首を左右に振る。そして、彼女は、自身が陥っている状況について言葉で簡単に説明する。
「いいえ、違うわ。ただ、安心しちゃって力が入らないの」
今度はアダルベルトが安堵する番だった。
「……そ、そうか。それならまだ良かった」
アダルベルトはフレアの近くにしゃがみ込み、「本当に怪我はないんだね?」と確認。フレアは微笑みつつ頷いていた。
そんな時だ、カッタルとリカルドが戻ってきたのは。
「おお! 先生! ちょうどいいところに!」
「何だ」
「この不審者がフレア王女を襲ったんです! 彼女は一応無事です。が! 危ないところでした!」
アダルベルトから状況の説明を受けたカッタルは「そんなことが……」と呟いて驚きを露わにする。が、顔面に驚きの色を浮かべたのは束の間だけ。すぐに男を掴み上げ、連れ去っていった。
「大丈夫かよ、王女」
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