19 / 51
19.新しい時間割り!
しおりを挟む
約一ヶ月にわたる夏期休暇、フレアはミルフィやリカルドと静かに暮らした。
ミルフィに誘われて街へ出掛けたり、夏限定メニューのかき氷を五つの味すべて食べるよう頑張ったり。地味ながら充実した休暇となった。
そして訪れる、夏期休暇最後の週。
帰省していた生徒たちも段々学院の敷地内へと戻ってきて、賑やかになってくる。
だが、皆が戻ってきたからといってすべてが普段通りになるわけではなく。授業はないので、ゆっくりと過ごすことができる日々はもうしばらく続く。
そして九月。
まだ暑い中、授業が再開されていく。
初日は比較的短時間で解散。というのも、久々に集まって、生徒たちの体調を確認することが主な目的なのだ。それに加え、これからの日程についてもひと通り説明がある。時間割りや行事予定などを担任から聞いたら、初日はおわりである。
「元気そうで何よりだわ、カステラちゃーん」
「みんな揃って良かったですーっ!」
「しばらく会えなくて寂しかったわ。カステラちゃん、またお茶しましょ?」
「はい!」
ミルフィとカステラは再会を喜んでいた。
花組は一人も欠けることなく無事集まることができ、こうして、後期が幕開けるのだった。
火曜日、一限目は生徒たちの間で人気低めの古代文。
夏休み明けの一発目がこの科目だったので、皆、いきなりやる気を喪失しかけていた。
「この記号がついている際には、文字をこうこうこうという順に読み進め……」
席替えはないので、座っている席の位置は七月までと同じ。
「あーねっむいわー」
「ミルフィ? いきなりやる気なくしてるけど、大丈夫?」
「やる気ある人の方が少ないわよー」
「そう? まぁ、確かに、かなり難しいけど……」
古代文の静かな授業は眠気を誘いがち。実際、古代文の授業中には眠っている生徒も少なくない。ミルフィもまた、そのうちの一人だった。そももそ座学が得意でないミルフィからすれば、やたら難解なこの授業は苦痛以外の何物でもないのだろう。
カステラはまたもや魔術関連の本を熟読している。
リカルドは、きちんとノートを取りつつも、布で剣を磨いていた。
その日は、二限目以降も座学が続く時間割りだった。
二限目は魔術発展、三限目が数学2で、ラストの四限目は歴史2。ちなみに、魔術発展は魔術基礎の続きに当たる内容であり、数学2と歴史2も、当然、数学や歴史の続きの内容である。
「あー! あったま痛ーい!」
解散になるや否や、ミルフィが大きな声を発した。
ミルフィは半分くらいは寝ていたが、それでも、座学ばかりの時間割りはかなりきつかったようだ。
「聞いて下さいー! カステラ、一冊読めましたーっ!」
「……自慢になってないだろ」
カステラの主張に突っ込みを入れたのはリカルド。
意外な者からの突っ込みに、カステラは驚いた顔をした。
「リカルド……さん?」
「……あぁ。いや、すまん。つい突っ込んでしまった」
「ついに! カステラと友達になって下さるんですねっ!?」
「いや、それは無理」
「ふぇ!?」
珍しくリカルドとカステラが交流しているのを、フレアは穏やかな気持ちで眺めていた。
水曜日は、体を動かす授業が多い日だった。
一限目は授業なし、という意味では楽さもあるのだが、実技が得意でないフレアからするとそれなりにハードな日だ。
ミルフィが好きな格闘術から始まり、魔術実技、体力作りと続く。教室移動も忙しい。そして最後、五限目だけは、教室で行われる座学。数学2である。
昨日の時間割りとは逆に、体を動かしたい派の生徒が有利な構成になっていた。
もう少し均等に配分できないものか、とフレアは内心思う。が、愚痴を言っても何も変えられないことは彼女も知っている。だからフレアは、特に何も言わず、できる範囲で取り組んでいた。
続く、木曜日。
一限目は魔術系の座学である魔術発展、二限目は治療学習という治療基礎の応用的な内容のもの、そして三限目は国語2である。比較的無難な構成であり、しかも早めに終了するという、生徒たちからすれば嬉しくありがたい曜日だった。
そして、週の最終日とも言える金曜日。
この日は五限すべてが埋まっているという、生徒からすると若干厄介な日だ。
一限目から順に並べると——国語2、剣術、格闘術、歴史2、芸術という構成。その中でも、五限目の芸術は複数のグループに分かれて選択した内容について学ぶ仕組みになっている。絵画のグループ、彫刻のグループ、工作のグループなどがあり、その中から好きな一つを選択するのだ。特殊な形の授業である。
「お疲れ様! フレアちゃん!」
「えぇ、お疲れ様。ミルフィ、今日は何だか元気そうね」
「だって明日から休みよ!」
「そういうこと。土曜日だものね」
休みが楽しみで仕方ないミルフィを見て、フレアは苦笑するのだった。
夜、ふと目覚めてしまったフレアは、夜風を浴びようとこっそり部屋から抜け出す。
すると偶然リカルドに遭遇した。
「リカルド……! どうしてこんな時間に……?」
ばったりリカルドに出会ったフレアは、寝巻きの薄いワンピースのまま出てきたことを少し後悔したようで、己の体をチラチラ見ていた。
「眠れなくてな」
リカルドは寝巻きではない。ガーベラ学院の制服だ。
「……眠れなかったの?」
「そう言ったろ。繰り返さなくていい」
「もー。何その言い方」
既に消灯時間も過ぎているため、寮の廊下は薄暗い。万が一に備えて完全には消灯されていないので互いの顔が見えるくらいの明るさはあるのだが、さすがに「明るい」とは言えない程度の光量だ。
「学校生活はどうだ、王女」
一分ほど経って、リカルドは口を開いた。
「え?」
「来たかったんだろ、こういうところに」
フレアは数秒考えてから答える。
「……うん」
両手を腹の前で組みながら、フレアは話す。
「憧れてたの。城の外の世界に」
「で、感想は」
「憧れてた通りよ! 素晴らしいところだわ。皆優しいし」
無邪気に答えるフレアを見たリカルドは、やや暗い表情で目を細めた。
「……城には厄介な輩が多かったもんな」
ミルフィに誘われて街へ出掛けたり、夏限定メニューのかき氷を五つの味すべて食べるよう頑張ったり。地味ながら充実した休暇となった。
そして訪れる、夏期休暇最後の週。
帰省していた生徒たちも段々学院の敷地内へと戻ってきて、賑やかになってくる。
だが、皆が戻ってきたからといってすべてが普段通りになるわけではなく。授業はないので、ゆっくりと過ごすことができる日々はもうしばらく続く。
そして九月。
まだ暑い中、授業が再開されていく。
初日は比較的短時間で解散。というのも、久々に集まって、生徒たちの体調を確認することが主な目的なのだ。それに加え、これからの日程についてもひと通り説明がある。時間割りや行事予定などを担任から聞いたら、初日はおわりである。
「元気そうで何よりだわ、カステラちゃーん」
「みんな揃って良かったですーっ!」
「しばらく会えなくて寂しかったわ。カステラちゃん、またお茶しましょ?」
「はい!」
ミルフィとカステラは再会を喜んでいた。
花組は一人も欠けることなく無事集まることができ、こうして、後期が幕開けるのだった。
火曜日、一限目は生徒たちの間で人気低めの古代文。
夏休み明けの一発目がこの科目だったので、皆、いきなりやる気を喪失しかけていた。
「この記号がついている際には、文字をこうこうこうという順に読み進め……」
席替えはないので、座っている席の位置は七月までと同じ。
「あーねっむいわー」
「ミルフィ? いきなりやる気なくしてるけど、大丈夫?」
「やる気ある人の方が少ないわよー」
「そう? まぁ、確かに、かなり難しいけど……」
古代文の静かな授業は眠気を誘いがち。実際、古代文の授業中には眠っている生徒も少なくない。ミルフィもまた、そのうちの一人だった。そももそ座学が得意でないミルフィからすれば、やたら難解なこの授業は苦痛以外の何物でもないのだろう。
カステラはまたもや魔術関連の本を熟読している。
リカルドは、きちんとノートを取りつつも、布で剣を磨いていた。
その日は、二限目以降も座学が続く時間割りだった。
二限目は魔術発展、三限目が数学2で、ラストの四限目は歴史2。ちなみに、魔術発展は魔術基礎の続きに当たる内容であり、数学2と歴史2も、当然、数学や歴史の続きの内容である。
「あー! あったま痛ーい!」
解散になるや否や、ミルフィが大きな声を発した。
ミルフィは半分くらいは寝ていたが、それでも、座学ばかりの時間割りはかなりきつかったようだ。
「聞いて下さいー! カステラ、一冊読めましたーっ!」
「……自慢になってないだろ」
カステラの主張に突っ込みを入れたのはリカルド。
意外な者からの突っ込みに、カステラは驚いた顔をした。
「リカルド……さん?」
「……あぁ。いや、すまん。つい突っ込んでしまった」
「ついに! カステラと友達になって下さるんですねっ!?」
「いや、それは無理」
「ふぇ!?」
珍しくリカルドとカステラが交流しているのを、フレアは穏やかな気持ちで眺めていた。
水曜日は、体を動かす授業が多い日だった。
一限目は授業なし、という意味では楽さもあるのだが、実技が得意でないフレアからするとそれなりにハードな日だ。
ミルフィが好きな格闘術から始まり、魔術実技、体力作りと続く。教室移動も忙しい。そして最後、五限目だけは、教室で行われる座学。数学2である。
昨日の時間割りとは逆に、体を動かしたい派の生徒が有利な構成になっていた。
もう少し均等に配分できないものか、とフレアは内心思う。が、愚痴を言っても何も変えられないことは彼女も知っている。だからフレアは、特に何も言わず、できる範囲で取り組んでいた。
続く、木曜日。
一限目は魔術系の座学である魔術発展、二限目は治療学習という治療基礎の応用的な内容のもの、そして三限目は国語2である。比較的無難な構成であり、しかも早めに終了するという、生徒たちからすれば嬉しくありがたい曜日だった。
そして、週の最終日とも言える金曜日。
この日は五限すべてが埋まっているという、生徒からすると若干厄介な日だ。
一限目から順に並べると——国語2、剣術、格闘術、歴史2、芸術という構成。その中でも、五限目の芸術は複数のグループに分かれて選択した内容について学ぶ仕組みになっている。絵画のグループ、彫刻のグループ、工作のグループなどがあり、その中から好きな一つを選択するのだ。特殊な形の授業である。
「お疲れ様! フレアちゃん!」
「えぇ、お疲れ様。ミルフィ、今日は何だか元気そうね」
「だって明日から休みよ!」
「そういうこと。土曜日だものね」
休みが楽しみで仕方ないミルフィを見て、フレアは苦笑するのだった。
夜、ふと目覚めてしまったフレアは、夜風を浴びようとこっそり部屋から抜け出す。
すると偶然リカルドに遭遇した。
「リカルド……! どうしてこんな時間に……?」
ばったりリカルドに出会ったフレアは、寝巻きの薄いワンピースのまま出てきたことを少し後悔したようで、己の体をチラチラ見ていた。
「眠れなくてな」
リカルドは寝巻きではない。ガーベラ学院の制服だ。
「……眠れなかったの?」
「そう言ったろ。繰り返さなくていい」
「もー。何その言い方」
既に消灯時間も過ぎているため、寮の廊下は薄暗い。万が一に備えて完全には消灯されていないので互いの顔が見えるくらいの明るさはあるのだが、さすがに「明るい」とは言えない程度の光量だ。
「学校生活はどうだ、王女」
一分ほど経って、リカルドは口を開いた。
「え?」
「来たかったんだろ、こういうところに」
フレアは数秒考えてから答える。
「……うん」
両手を腹の前で組みながら、フレアは話す。
「憧れてたの。城の外の世界に」
「で、感想は」
「憧れてた通りよ! 素晴らしいところだわ。皆優しいし」
無邪気に答えるフレアを見たリカルドは、やや暗い表情で目を細めた。
「……城には厄介な輩が多かったもんな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる