青春を謳歌したい! 〜剣と魔法の学校生活〜

四季

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20.よく分からない月曜日!

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 休みである土日が過ぎ、月曜日の朝。
 花組の教室へ向かうべくミルフィと共に図書館の前を通過していっていた時、フレアの視界に一人の女子生徒が入った。

 図書館の窓辺の席に、美しい少女が座っていたのだ。
 一人ぽつんと座って本を読むその少女は、詩集にでも出てきそうな雰囲気の、儚げな娘。

「フレアちゃん? 何見てるの?」
「……あの窓辺の席の人。綺麗な人だなぁ、って」

 フレアがシンプルに答えると、ミルフィは両手を合わせて「ああ! あの子!」と楽しげな声を発する。急に嬉しそうな顔になるミルフィを見て、フレアは「知り合い?」と尋ねた。するとミルフィは「そうねぇ。一度くらいは話したことはあるわよ」と笑う。その間も、フレアは読書する彼女に見惚れていた。

 陶器人形のように滑らかな肌。触れるだけで壊れてしまいそうな細く白い指。黒髪は艶やかで、ただ一つに結んでいるだけという素朴な髪型であっても雰囲気がある。

 だが、そうこうしているうちに始業時間が近づいてきた。

 フレアとミルフィは教室まで走る。


「来るの遅過ぎなんだよね」

 フレアとミルフィが教室に駆け込むと、既に着席していたイノアが毒を吐いた。
 ミルフィはイノアを睨み付ける。

「黙って下さるかしら」

 機嫌が悪くなったミルフィの睨み付け攻撃は凄まじい怖さをはらんでいる。目つきだけで敵を倒せるのではないかと思うほど迫力のある睨み方を、彼女は平気でするのだ。

「まぁまぁ。ミルフィ、落ち着いて」
「フレアちゃんのお願いでもそれは無理だわ。ごめんなさいね」

 険悪な空気を何とかしようとして宥めに入ったフレアだったが、ミルフィを宥めることはできなかった。

「そ、そう……まぁ仕方ないわね」

 今のミルフィを宥めることはできないと悟ったフレアは、適当にごまかして着席した。


 朝の連絡がひと通り終わると、一限目の授業が始まる。
 戦争史。それは、この国及び周辺国の戦いの歴史を学ぶものである。戦いの歴史と人類の歴史はイコールであるからこそ、学ぶべき内容と定められているのだ。

「ハインはまた水着の本?」
「そうぞよ」

 授業は既に始まっているというのに、フレアの前の席の男子生徒であるハインは一切躊躇いなく水着の本を熟読している。

 ちなみに、今読んでいるのは、二十歳くらいの金髪女性のビキニ写真集。
 真っ赤なビキニを来た女性の後ろ姿が表紙だ。

「そのピンクの水着可愛いわね」
「お好きか」
「えぇ。フリルが素敵。そういう水着って、確か、大人の女の人が海で着るのよね」
「実際には見たことがないが」
「それは私もよ。でもいいわね、いろんな水着。可愛いし綺麗だし」

 フレアと水着の話をするハインは楽しそうだった。
 授業中なので当然喋る声は小さめにしているが、それでも、表情から喜びが溢れている。

「ハインは水着集めてるの?」
「い、いや。それはない」
「ふぅん。買えばいいのに」
「……男一人で女性の水着を買いに行くのは、さすがに」

 二限目は、術式。
 他の授業の時にはいつも関係ないことをしているカステラが、妙にやる気になっていた。が、その一方でフレアはあまり楽しさを感じなかった。小難しさに頭痛を起こしそうになったほど。

 三限目は、魔術実技。
 これまたカステラが好きな教科だ。実習室に移動して行う。

「ねぇカステラ。これ、どうやって描くの?」

 その日の内容は、聖樹の汁を使って発光現象を作り出すというものだった。

 まず、聖樹と呼ばれる木から採取される液体をスポイトで吸い上げる。それから、浅く砂の入ったトレイの上にその汁を垂らし、発光現象を起こすという図形を描く。

 手順はそれだけなのだが、素人には難しい。

 フレアも途中までは自力で頑張ってみていたが、どんなに試しても上手くいかず、奥の手としてカステラに手伝いを頼んだのだ。

「これはですねーっ! ここをこうして、こう、こう、描いて……完成ですー!」

 頼まれたカステラは、フレア用のスポイトを手に取り、速やかに聖樹の汁を吸い上げる。そして、滴が垂れないよう気をつけながらスポイトをトレイの真上へ。そこから、慎重に、一滴一滴垂らしてゆく。やがて、指定の図形が完成すると、液が垂れたところから光が溢れた。

「凄い! 光ったわね!」

 フレアができなかったことを、カステラはすんなりとやってのけた。

「綺麗ですよねーっ」
「本当。美しいわ」
「はい! ぜひやってみて下さい!」
「できるかしら……」
「大丈夫ですーっ! 慣れれば楽勝ですよーぅ!」


 その日、ミルフィが呼び出しを受けてしまったため、フレアは先に寮の部屋へ帰っておくことになった。付き添っていたリカルドと部屋の前で別れ、フレアは部屋に入る。そして、自身のベッドへ視線を向けた時、違和感を覚えた。ベッドの上に見覚えのない紙が置かれていたからだ。

 フレアは不思議に思いつつも、プリントか何かだろうと思ってその紙を手に取った。
 しかし、その紙の正体を目にした瞬間、彼女の体は一瞬にして硬直する。

『次はお前だ、王女』

 そんなメッセージが書かれていたからである。

 だが、フレアはその言葉の意味を即座には理解できなかった。差出人も書かれていない謎のメモがベッドに置かれていたという衝撃が大きくて、思考力が飛んでしまったのかもしれない。とにかく何も考えられない状態になっている。

「……な、何これ」

 フレアは震える声で呟く。
 額から、背中から、冷たい汗が噴き出していた。

 恐ろしく不気味なメモを入手した。それは、本当なら、すぐに走っていってリカルドに伝えねばならないような出来事だ。だが、判断力を失ったフレアには相応しい対応が見つけられなくて。彼女は紙を鞄の中にしまった。なぜか、隠さなくては、というような心理状態になっていたのだ。

 相談するべきだった。
 騒げば良かった。

 けれどもフレアは、そういうことをできなかった。
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