43 / 51
43.疲れた時こそ!
しおりを挟む
卒業試験三日目。
今日は、行われる試験三つのうち、三つともが座学だ。
そのため、前日の夜から忙しかった。そして、今朝もまた、とても忙しい。ノートを見直したり、どのような問題が出るかを予想したり、やるべきことが盛りだくさん。試験開始の直前まで、準備は終わらない。
「ど、ど、どうしましょーっ! ミルフィさんカステラ、不安しかないですよぅーっ!」
「あらあら。朝から元気ねぇ」
「元気ねぇ……じゃないんですぅーっ! このままじゃ不合格になっちゃいますよーっ!」
カステラは朝から騒々しい。
合格点を取る自信がなくて騒いでいるようだ。
フレアが個人的に思ったのは、「取れそうにないなら取れそうなくらいまで勉強すれば良いのに」ということ。自信がないからこそ準備をきちんと行うべきではないか、というのが、フレアの考えだ。ただ、それを直接言ってしまうと傷つけることになりかねないので、フレアは黙っておいた。
「まぁまぁ落ち着いて。カステラちゃん、慌てることはないのよ?」
「ふぇ……? そ、そうなのですか……?」
「えぇ! だーってほら、あたしも自信ないもの!」
それでいいのか? と内心思うフレア。
「そ、そうなんですねーっ! ミルフィさんも一緒なんですね!!」
カステラはカステラで、なぜそれをすんなり受け入れるのか。
フレアからすると謎で仕方がない。
——そんな時。
「ちょっと。朝からうるさいよ」
はっきりした発言が飛んでくる。その声の主はイノアだった。
勉強家な彼は、今も試験のための勉強を継続している。日頃から復習を欠かしていないが、それでも、試験前にはさらに復習を行っているようである。地味にかなりの勉強量だろう。
「……は?」
いきなり嫌み混じりに注意され、ミルフィは不快そうな顔をする。
「試験の朝ぐらい静かにしたらどう。馬鹿じゃないならさ」
「どうしてそんなことを言われなくちゃならないのか、意味不明なんですけど?」
机の上のノートを閉じつつ、イノアは静かにするよう言い放つ。
しかし、それに素直に従うミルフィではなかった。
もしこの注意したのが女子であったなら、ミルフィの対応はもう少し良いものになっていたかもしれない。相手が嫌いなイノアでなければ、きっと、少しは聞く耳を持っていたことだろう。
「勉強してる人もいるんだよ。ギャーギャー騒がれたら迷惑」
「はぁ偉そうに何を。騒がしいのが嫌なら、そちらが出ていくというのはどうですかー?」
イノアとミルフィの激突が始まる。
止まらない。終わらない。
「そう思ってる人は多分他にもいると思うよ。もっと周囲を見たらどうかな」
「偉そうに! よくそんなことが言えますねぇ。何様のつもりかしら」
「知ってる? 勉強っていうのは、静かに行うものなんだよ。小さい頃に習わなかったのかな」
フレアはつい狼狽えてしまう。
どう反応すれば良いのかが分からないからだ。
イノアの言い方が相手をイラつかせるようなものであることは確か。だが、言っていること自体は正論のようにも思える。つまり、内容より言い方に問題があるということだ。
「放っておいてちょうだい! 貴方には関係ありませんから」
「……ふん。あっそ。ま、静かにするなら何でもいいよ」
朝から教室内が殺伐とした空気になってしまった。
三つめの試験が終了し、解答用紙の回収が終わるや否や、カステラは巨大な溜め息を漏らす。
あどけなさの残る愛らしい顔に濃く浮かんでいるのは心労の色。
フレアは、今日の試験も何とかクリアできたような気がしている。手応えは確かにあるのだ。全部満点ということはないだろうが、不合格ではないはず。そう思えるくらいには解答できた。
「大丈夫? カステラ。何だか疲れているみたいだけど」
「は、はいー……大丈夫……ですぅー……」
見るからに弱っているカステラを心配してフレアが声をかけると、カステラは大丈夫だと述べた。が、その言い方には明らかに元気がなくて。とても大丈夫そうには見えない。
「テストが上手くできなかったの?」
「い、いえ……何とか……」
「良かったじゃない! だったらもっと元気出して!」
フレアは敢えて明るい声を作って、励ましの言葉をかける。
だがカステラは元気を取り戻せない。
「疲れてるわねぇ、カステラちゃん」
とうに荷物をまとめ帰る気満々のミルフィが、フレアとカステラの会話に入ってくる。
「ふぇ!? ミルフィさん!?」
「あらあら。そんなにびっくりしなくていいのよ。あたしが話に参加してくるのはよくあることじゃない?ふふ」
イノアやハインは試験が終わるなり教室から出ていった。荷物をまとめ退室するまでが異様に早い。その素早さは、フレアにはとても真似できそうになかった。
「カステラちゃん、今からちょっと食堂にでも行かなーい?」
「え? ええっ!?」
「お菓子食べるの。スイーツをね。そしたらきっと元気になれるわよ?」
ミルフィは意外な提案をする。
そのような案、フレアは欠片ほども考えてみなかった。
けれども、それを耳にした時、フレアは密かにハッとした。そういう切り替え方もあるのだ、と気づいて。
「スイーツは好きですぅ……でも……」
疲れた時には甘いもの。
そういう意味では、ミルフィが出した案もあながち間違ってはいないのだろう。
「試験中ですぅ……」
カステラの思考はどちらかというとフレア寄りだった。彼女もまた、試験中だからといって、楽しいことから自身を遠ざけてしまっていたのだ。
「べつにいいじゃない? 試験中に美味しいもの食べたって!」
けれども、ミルフィは、今が試験期間中であることなど全然気にしていない。それどころか、そんなことは関係ないとでも言いたげだ。
「そ、そうなんですかぁ……?」
「そーよ! 疲れた時こそ甘くて美味しいものを食べなくちゃ!」
こうして、ミルフィとカステラは食堂へ直行することに。もちろんフレアもそこに参加した。一人寮に帰るのは寂しいから、である。そして、フレアの参加が決まったので、リカルドもどさくさに紛れて参加することに。結局四人で食堂へ行くこととなったのだった。
今日は、行われる試験三つのうち、三つともが座学だ。
そのため、前日の夜から忙しかった。そして、今朝もまた、とても忙しい。ノートを見直したり、どのような問題が出るかを予想したり、やるべきことが盛りだくさん。試験開始の直前まで、準備は終わらない。
「ど、ど、どうしましょーっ! ミルフィさんカステラ、不安しかないですよぅーっ!」
「あらあら。朝から元気ねぇ」
「元気ねぇ……じゃないんですぅーっ! このままじゃ不合格になっちゃいますよーっ!」
カステラは朝から騒々しい。
合格点を取る自信がなくて騒いでいるようだ。
フレアが個人的に思ったのは、「取れそうにないなら取れそうなくらいまで勉強すれば良いのに」ということ。自信がないからこそ準備をきちんと行うべきではないか、というのが、フレアの考えだ。ただ、それを直接言ってしまうと傷つけることになりかねないので、フレアは黙っておいた。
「まぁまぁ落ち着いて。カステラちゃん、慌てることはないのよ?」
「ふぇ……? そ、そうなのですか……?」
「えぇ! だーってほら、あたしも自信ないもの!」
それでいいのか? と内心思うフレア。
「そ、そうなんですねーっ! ミルフィさんも一緒なんですね!!」
カステラはカステラで、なぜそれをすんなり受け入れるのか。
フレアからすると謎で仕方がない。
——そんな時。
「ちょっと。朝からうるさいよ」
はっきりした発言が飛んでくる。その声の主はイノアだった。
勉強家な彼は、今も試験のための勉強を継続している。日頃から復習を欠かしていないが、それでも、試験前にはさらに復習を行っているようである。地味にかなりの勉強量だろう。
「……は?」
いきなり嫌み混じりに注意され、ミルフィは不快そうな顔をする。
「試験の朝ぐらい静かにしたらどう。馬鹿じゃないならさ」
「どうしてそんなことを言われなくちゃならないのか、意味不明なんですけど?」
机の上のノートを閉じつつ、イノアは静かにするよう言い放つ。
しかし、それに素直に従うミルフィではなかった。
もしこの注意したのが女子であったなら、ミルフィの対応はもう少し良いものになっていたかもしれない。相手が嫌いなイノアでなければ、きっと、少しは聞く耳を持っていたことだろう。
「勉強してる人もいるんだよ。ギャーギャー騒がれたら迷惑」
「はぁ偉そうに何を。騒がしいのが嫌なら、そちらが出ていくというのはどうですかー?」
イノアとミルフィの激突が始まる。
止まらない。終わらない。
「そう思ってる人は多分他にもいると思うよ。もっと周囲を見たらどうかな」
「偉そうに! よくそんなことが言えますねぇ。何様のつもりかしら」
「知ってる? 勉強っていうのは、静かに行うものなんだよ。小さい頃に習わなかったのかな」
フレアはつい狼狽えてしまう。
どう反応すれば良いのかが分からないからだ。
イノアの言い方が相手をイラつかせるようなものであることは確か。だが、言っていること自体は正論のようにも思える。つまり、内容より言い方に問題があるということだ。
「放っておいてちょうだい! 貴方には関係ありませんから」
「……ふん。あっそ。ま、静かにするなら何でもいいよ」
朝から教室内が殺伐とした空気になってしまった。
三つめの試験が終了し、解答用紙の回収が終わるや否や、カステラは巨大な溜め息を漏らす。
あどけなさの残る愛らしい顔に濃く浮かんでいるのは心労の色。
フレアは、今日の試験も何とかクリアできたような気がしている。手応えは確かにあるのだ。全部満点ということはないだろうが、不合格ではないはず。そう思えるくらいには解答できた。
「大丈夫? カステラ。何だか疲れているみたいだけど」
「は、はいー……大丈夫……ですぅー……」
見るからに弱っているカステラを心配してフレアが声をかけると、カステラは大丈夫だと述べた。が、その言い方には明らかに元気がなくて。とても大丈夫そうには見えない。
「テストが上手くできなかったの?」
「い、いえ……何とか……」
「良かったじゃない! だったらもっと元気出して!」
フレアは敢えて明るい声を作って、励ましの言葉をかける。
だがカステラは元気を取り戻せない。
「疲れてるわねぇ、カステラちゃん」
とうに荷物をまとめ帰る気満々のミルフィが、フレアとカステラの会話に入ってくる。
「ふぇ!? ミルフィさん!?」
「あらあら。そんなにびっくりしなくていいのよ。あたしが話に参加してくるのはよくあることじゃない?ふふ」
イノアやハインは試験が終わるなり教室から出ていった。荷物をまとめ退室するまでが異様に早い。その素早さは、フレアにはとても真似できそうになかった。
「カステラちゃん、今からちょっと食堂にでも行かなーい?」
「え? ええっ!?」
「お菓子食べるの。スイーツをね。そしたらきっと元気になれるわよ?」
ミルフィは意外な提案をする。
そのような案、フレアは欠片ほども考えてみなかった。
けれども、それを耳にした時、フレアは密かにハッとした。そういう切り替え方もあるのだ、と気づいて。
「スイーツは好きですぅ……でも……」
疲れた時には甘いもの。
そういう意味では、ミルフィが出した案もあながち間違ってはいないのだろう。
「試験中ですぅ……」
カステラの思考はどちらかというとフレア寄りだった。彼女もまた、試験中だからといって、楽しいことから自身を遠ざけてしまっていたのだ。
「べつにいいじゃない? 試験中に美味しいもの食べたって!」
けれども、ミルフィは、今が試験期間中であることなど全然気にしていない。それどころか、そんなことは関係ないとでも言いたげだ。
「そ、そうなんですかぁ……?」
「そーよ! 疲れた時こそ甘くて美味しいものを食べなくちゃ!」
こうして、ミルフィとカステラは食堂へ直行することに。もちろんフレアもそこに参加した。一人寮に帰るのは寂しいから、である。そして、フレアの参加が決まったので、リカルドもどさくさに紛れて参加することに。結局四人で食堂へ行くこととなったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる