44 / 51
44.ついに解放の時が来た!
しおりを挟む
「ふぁうぅぅぅーっ! 美味しいですぅーっ!!」
今日のスイーツだったオレンジジェラートを口に含むや否や、カステラは甲高い声を発した。手を頬に当て、スイーツの美味しさに歓喜する。
食堂には、毎日、日替わりのスイーツがある。それは『今日のスイーツ』と呼ばれていて、日頃よりお手頃価格で注文することができるのだ。当日になってみないと『今日のスイーツ』が何かは分からない。そのためくじ引きのようなところはあるのだが、好きなものが当たった日は最高の気分になれる。
「カステラちゃん、嬉しそうねぇ」
「オレンジジェラート! 最高ですぅーっ!!」
透明なグラスに入った、オレンジ色の丸いジェラート。
ミントのような爽やかな香りとオレンジの酸味が、魅惑的な世界を作り出している。
フレアもこのメニューは好きだった。以前一度口にしたことがあったのだが、その時とても美味しくて、一気に惚れ込んでしまったのだ。口にした回数は少ないが、思い出のスイーツの一つである。
「美味しいわよね! リカルド」
「……はぁ」
ミルフィとカステラが話しているのを邪魔しないため、フレアはリカルドに話を振ってみた。しかし思ったような言葉が返ってこない。リカルドはただ溜め息を漏らすだけだ。
「どうしたの? 好みに合わない?」
「いや」
「じゃあ何? どうして溜め息なんてつくのよ」
「……女子会は暇だ」
一言で男子と言っても、色々な性格の者がいる。女子の中に入って盛り上がるのが好きな者もいれば、女子とはあまり関わりたくないという者もいるのだ。そして、リカルドは後者だった。女子の中に一人入れられるというのは、彼にとって嬉しいことではなかったのだ。
「退屈ーってこと?」
「……あぁ。そういうこった」
試験期間中だからだろうか、食堂にいる生徒の数は少ない。
日頃なら友達同士で集まって喋っている者もそこそこ見かけるのだが。
「じゃあどうしてついてきたの?」
フレアは純粋な疑問を口から出す。
「王女に何かあったらまずいから、だろ」
リカルドにはフレアを護る義務がある。そのためフレアを放置し続けるわけにはいかない。ただ、女子会くらいは嫌なら同席しないことも可能だろう。四六時中フレアの横にいなければならないわけではないのだし。
「ふぅーん。でも一緒に来ない時もあるじゃない」
「あれは、やむを得ん用事があった時だ」
「へぇー? それ、本気で言ってるのー?」
フレアに同行することを選択しているのは、結局のところリカルド自身だ。
誰も彼に絶対的な命令を下してはない。それゆえ、心の底から嫌なのであれば、リカルドはフレアの傍にいないことだってできる。一時より危険度が下がった今なら、なおさら。
「……何が言いたい」
「ううん、何でもない! ただ、リカルドは優しいなーって。そう思ってただけなの!」
刹那、リカルドは拍子抜けしたような顔になった。
そんな彼の顔面を、フレアは真っ直ぐに見つめる。純粋な色の丸い瞳で、フレアはリカルドを数秒じっと見た。そして、やがて、ふふっと軽やかな笑みをこぼす。
フレアの純粋な笑みに、リカルドはやられた。
リカルドはらしくなく顔を赤らめ、片手で額を押さえる。フレアに視線を向けることはできない。
「ったく、何だよそれは。……調子が狂う」
卒業試験も残り一日。
あと二つの試験を終わらせれば、卒業が見えてくる。
厳密な日数的には、卒業まではまだ時間がある。今は二月で、卒業は三月。ほぼ一カ月以上あると言っても過言ではない。が、乗り切らねばならない山という意味では、今が一番厳しい時だ。
卒業試験最終日は意外にもあっという間に終わった。
これにて試験はすべて終了だ。
「皆お疲れ様ァ! 出来はどんな感じダィ!?」
解散の前に、タルタルが教室の一番前で話す。
「これで卒業試験の内容は全部終わったネ! ちょいホッとしたかナ?」
タルタルの声は教室の後ろ寄りの席にまできちんと届く。最初の女性教師よりも、カッタルよりも、タルタルの声が一番大きく質も良い。
「ちょこっと感想聞いてみよーかナァ? じゃ、アダール」
「はい!」
フレアは正直早く帰りたい。数多の試験から解放された自由な時間を過ごしたいのだ。だが、そんな日に限って、タルタルの話がいつもより長い。なかなか解散にならないのが、フレアにとっては苦痛でしかなかった。
「試験の出来はドゥ?」
「大体できたと思います! 努力はしましたし!」
「さすがアダール。やるネ」
「ありがとうございます! 先生」
退屈過ぎて辛いフレアは、そっと後ろを向いてみる。すると、机に突っ伏して居眠りしているミルフィと魔術の分厚い本を熟読しているカステラが視界に入った。いつも通りだなぁ、と思いつつ、フレアは視線を前へと戻す。
「イノアくんはどうダィ!?」
「そういうくだらない質問に興味はないんですけど」
先ほどのアダルベルトとは対照的。
イノアは呆れ果てたような顔をしている。
「早く解散にして下さい。やらなくちゃならない勉強が他にあるんで」
フレアは内心ガッツポーズ。今はイノアに感謝の気持ちしかない。というのも、彼はフレアの気持ちを見事に代弁してくれていたのだ。
よく言った、と、褒めたい気分。
言いにくいことを平気で言ってのけるイノアのことを、フレアは尊敬した。
「自主勉があるんだナァ!? 偉い! 生徒の鏡だゼィ!!」
「もう終わりにしませんか」
「そうだナァ! じゃ、優秀な生徒に合わせて。本日はこれにて解散ッ!!」
フレアは内心歓喜する。
試験も終わったし、何をしようかワクワクして仕方ない。
荷物をまとめ教室を出た瞬間、フレアの視界に見覚えのある顔が入った。
「コザクラ! ……どうしてここに?」
特に何も約束はしていなかった。それなのに、花組の教室を出てすぐのところにコザクラが立っていた。フレアはなぜ彼女がいるのか理解できない。
「あの……フレアさん。もし良ければ、食堂に……行きませんか?」
「え。もしかして誘いに来てくれたの」
「は、はい。そうです。試験も終わりましたし……」
コザクラの顔の肌は今日も滑らかだ。毛穴の一つさえ見えない。
「いいわね! お菓子食べる?」
「は、はい……」
「ミルフィも一緒で大丈夫?」
「それは、もちろんです。ミルフィさんにも、お世話になって……いるので」
今日のスイーツだったオレンジジェラートを口に含むや否や、カステラは甲高い声を発した。手を頬に当て、スイーツの美味しさに歓喜する。
食堂には、毎日、日替わりのスイーツがある。それは『今日のスイーツ』と呼ばれていて、日頃よりお手頃価格で注文することができるのだ。当日になってみないと『今日のスイーツ』が何かは分からない。そのためくじ引きのようなところはあるのだが、好きなものが当たった日は最高の気分になれる。
「カステラちゃん、嬉しそうねぇ」
「オレンジジェラート! 最高ですぅーっ!!」
透明なグラスに入った、オレンジ色の丸いジェラート。
ミントのような爽やかな香りとオレンジの酸味が、魅惑的な世界を作り出している。
フレアもこのメニューは好きだった。以前一度口にしたことがあったのだが、その時とても美味しくて、一気に惚れ込んでしまったのだ。口にした回数は少ないが、思い出のスイーツの一つである。
「美味しいわよね! リカルド」
「……はぁ」
ミルフィとカステラが話しているのを邪魔しないため、フレアはリカルドに話を振ってみた。しかし思ったような言葉が返ってこない。リカルドはただ溜め息を漏らすだけだ。
「どうしたの? 好みに合わない?」
「いや」
「じゃあ何? どうして溜め息なんてつくのよ」
「……女子会は暇だ」
一言で男子と言っても、色々な性格の者がいる。女子の中に入って盛り上がるのが好きな者もいれば、女子とはあまり関わりたくないという者もいるのだ。そして、リカルドは後者だった。女子の中に一人入れられるというのは、彼にとって嬉しいことではなかったのだ。
「退屈ーってこと?」
「……あぁ。そういうこった」
試験期間中だからだろうか、食堂にいる生徒の数は少ない。
日頃なら友達同士で集まって喋っている者もそこそこ見かけるのだが。
「じゃあどうしてついてきたの?」
フレアは純粋な疑問を口から出す。
「王女に何かあったらまずいから、だろ」
リカルドにはフレアを護る義務がある。そのためフレアを放置し続けるわけにはいかない。ただ、女子会くらいは嫌なら同席しないことも可能だろう。四六時中フレアの横にいなければならないわけではないのだし。
「ふぅーん。でも一緒に来ない時もあるじゃない」
「あれは、やむを得ん用事があった時だ」
「へぇー? それ、本気で言ってるのー?」
フレアに同行することを選択しているのは、結局のところリカルド自身だ。
誰も彼に絶対的な命令を下してはない。それゆえ、心の底から嫌なのであれば、リカルドはフレアの傍にいないことだってできる。一時より危険度が下がった今なら、なおさら。
「……何が言いたい」
「ううん、何でもない! ただ、リカルドは優しいなーって。そう思ってただけなの!」
刹那、リカルドは拍子抜けしたような顔になった。
そんな彼の顔面を、フレアは真っ直ぐに見つめる。純粋な色の丸い瞳で、フレアはリカルドを数秒じっと見た。そして、やがて、ふふっと軽やかな笑みをこぼす。
フレアの純粋な笑みに、リカルドはやられた。
リカルドはらしくなく顔を赤らめ、片手で額を押さえる。フレアに視線を向けることはできない。
「ったく、何だよそれは。……調子が狂う」
卒業試験も残り一日。
あと二つの試験を終わらせれば、卒業が見えてくる。
厳密な日数的には、卒業まではまだ時間がある。今は二月で、卒業は三月。ほぼ一カ月以上あると言っても過言ではない。が、乗り切らねばならない山という意味では、今が一番厳しい時だ。
卒業試験最終日は意外にもあっという間に終わった。
これにて試験はすべて終了だ。
「皆お疲れ様ァ! 出来はどんな感じダィ!?」
解散の前に、タルタルが教室の一番前で話す。
「これで卒業試験の内容は全部終わったネ! ちょいホッとしたかナ?」
タルタルの声は教室の後ろ寄りの席にまできちんと届く。最初の女性教師よりも、カッタルよりも、タルタルの声が一番大きく質も良い。
「ちょこっと感想聞いてみよーかナァ? じゃ、アダール」
「はい!」
フレアは正直早く帰りたい。数多の試験から解放された自由な時間を過ごしたいのだ。だが、そんな日に限って、タルタルの話がいつもより長い。なかなか解散にならないのが、フレアにとっては苦痛でしかなかった。
「試験の出来はドゥ?」
「大体できたと思います! 努力はしましたし!」
「さすがアダール。やるネ」
「ありがとうございます! 先生」
退屈過ぎて辛いフレアは、そっと後ろを向いてみる。すると、机に突っ伏して居眠りしているミルフィと魔術の分厚い本を熟読しているカステラが視界に入った。いつも通りだなぁ、と思いつつ、フレアは視線を前へと戻す。
「イノアくんはどうダィ!?」
「そういうくだらない質問に興味はないんですけど」
先ほどのアダルベルトとは対照的。
イノアは呆れ果てたような顔をしている。
「早く解散にして下さい。やらなくちゃならない勉強が他にあるんで」
フレアは内心ガッツポーズ。今はイノアに感謝の気持ちしかない。というのも、彼はフレアの気持ちを見事に代弁してくれていたのだ。
よく言った、と、褒めたい気分。
言いにくいことを平気で言ってのけるイノアのことを、フレアは尊敬した。
「自主勉があるんだナァ!? 偉い! 生徒の鏡だゼィ!!」
「もう終わりにしませんか」
「そうだナァ! じゃ、優秀な生徒に合わせて。本日はこれにて解散ッ!!」
フレアは内心歓喜する。
試験も終わったし、何をしようかワクワクして仕方ない。
荷物をまとめ教室を出た瞬間、フレアの視界に見覚えのある顔が入った。
「コザクラ! ……どうしてここに?」
特に何も約束はしていなかった。それなのに、花組の教室を出てすぐのところにコザクラが立っていた。フレアはなぜ彼女がいるのか理解できない。
「あの……フレアさん。もし良ければ、食堂に……行きませんか?」
「え。もしかして誘いに来てくれたの」
「は、はい。そうです。試験も終わりましたし……」
コザクラの顔の肌は今日も滑らかだ。毛穴の一つさえ見えない。
「いいわね! お菓子食べる?」
「は、はい……」
「ミルフィも一緒で大丈夫?」
「それは、もちろんです。ミルフィさんにも、お世話になって……いるので」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる