青春を謳歌したい! 〜剣と魔法の学校生活〜

四季

文字の大きさ
45 / 51

45.嬉しい誘いあり!

しおりを挟む
 コザクラの誘いで、フレアはミルフィと共に食堂へ行く。

 昨日に続けて今日も女子会的なイベントが開催されることとなった。
 ただし、今日はリカルドはいない。フレアが彼に言わないでおいたのだ。食堂で過ごすだけならどうせ危険などないだろうから、言わなくても良いだろう——それがフレアの判断だった。

 それに、リカルドを誘わなかった理由はもう一つある。

 彼を何度も女子会に参加させるのは酷だから、という理由だ。

 リカルドが女子好きであったなら、もっと気安く呼べただろう。共に盛り上がれたなら一石二鳥だ。

 でも、現実はそうではなかった。

 リカルドは女の子の中に一人入るのがあまり好きではないようなのである。
 そんな彼を二日連続で誘う気にはなれず、フレアはこの会については黙っておくことにした。

「コザクラちゃんが誘ってくれるなんて思わなかったわ! うふふ。幸せ」

 ミルフィはとてつもなく機嫌が良い。男子がいないからか、向こうから誘ってもらえたのが嬉しかったからか、機嫌の良さの訳は定かではないが。ただ、彼女が上機嫌であることは確かだった。

「試験……終わりましたね。ミルフィさんは、できましたか……?」

 今日のスイーツはどら焼きなるもの。
 二枚のパンケーキのような物体で餡を挟んだ焼き菓子だ。
 以前フレアが食堂のおばさんから聞いた話によれば、どら焼きというのはこの国で生まれた菓子ではないらしい。ずっと東にある国にて誕生した菓子が、その国の商人によって広められたのだとか。

「そうねぇ。まぁまぁってところ? あたし、実技の方が好きなのよねー」
「実技……! 凄いですね」
「あら! コザクラちゃんったら褒めてくれるの? やっさしぃ!」
「い、いえ……思ったことを、言っただけ、です」

 食堂は久々に賑わっていた。昨日までとは利用者数が明らかに違う。席の埋まり方も、昨日と今日では大きく異なっている。ということは、ここしばらくおやつの時間の食堂利用者数が減っていたのは試験のせいだったということなのだろう。

「フレアさんは……試験、どうでしたか……?」

 それまでミルフィと喋っていたコザクラが、急にフレアに話を振った。

「私は結構頑張ったわ!」

 フレアは迷いなくそう答えた。
 敢えて控えめに言うこともないかなと思って。

「す、凄い……自信たっぷり、ですね……!」
「でも、成績が良いかどうかは分からないわ。魔術実技なんて怪しいかもしれないし。何とか合格を願いたいけど」

 フレアは包み紙ごとどら焼きを持ち上げる。そして、その端に、思いきって噛みつく。刹那、口腔内に砂糖のような甘い香りが広がった。慎ましい甘さとふんわりした食感が合わさり、見事な美味しさを作り上げている。

「……フレアさん、どら焼き……美味しそうに、食べますね」
「え?」
「何だか……幸せそう」

 ふふっ、と柔らかな笑みをこぼすコザクラは、天使か何かのようである。

 控えめに笑う彼女には人離れした魅力があった。その魅力というのは、同性のフレアでさえうっとりしてしてしまうような魅力。言葉で言い表すのは難しいが、とにかく凄い。

「面白いことを言うのね! コザクラ」

 フレアはどら焼きの一部を咀嚼しながら軽やかに返す。

「あ……は、はい……すみません……」

 フレアは特に深く考えず返していたが、コザクラは少々畏縮してしまっている。

「待って待って。べつに変な意味で言ったわけじゃないのよ」
「すみません、器用でなくて……」
「気にしないで! これからも、言いたいことは何でも言ってちょうだいっ」
「はい……! ありがとうございます」

 王女と異国の地を引く娘。本当なら出会うことのなかった二人だろう。けれども、ここで出会った。そして、出会ったからからこそ、友情が芽生えたのだ。

「ふふ。フレアちゃんとコザクラちゃん、絵になるわねぇ」

 突如、ミルフィがそんな発言をした。
 フレアとコザクラはほぼ同時に「え!」と発してしまう。


 土日を終え、月曜日。
 久々の授業だ。

 とはいえ、試験は終わっているので、がっつりとした授業は行われない。

「今日は二時間通して計算大会をするヨゥ!」

 フレアは何を行うのか知らなかった。が、朝一番タルタルから今日の予定を聞いた。何でも、計算大会を開催するとか。どんな行事なのだろう、と、フレアは密かに胸を高鳴らせる。

「ふぅえぇー……。計算なんてぇ……」
「カステラは計算は嫌い?」
「できないことは……ないですけどー……。とにかく面倒臭いですぅー!」
「そういうことなら、まだましね」

 カステラは嫌がっている。だかフレアはそこまで嫌でない。基本的な計算ならできる、という、ちょっとした自信があるからだ。計算なら、城にいた頃から習ってきた。それゆえ、できないことはないのだ。もちろん、非常に難解な数式などが必要な計算なら、できるかどうか分からないけれど。


 試験の結果が発表される日がついにやって来る。
 結果発表があるということは事前に知らされていた。そのため、その日は朝から皆落ち着かない様子で。誰もが少なからず緊張感を抱えているようだった。

「きょ、きょ、今日……成績……発表の日……ですよねー……?」

 カステラは朝から激しい胃痛に襲われていた。言葉を発するのもやっと、というくらいの、弱りぶりである。これには、フレアもさすがに動揺した。まさかこんなに弱っているとは思わなくて。

「もはや話せてないわよ? カステラ。そんなに体調が悪いの?」
「ふ、ふぅうぅ……ですぅー……」

 卒業できるか否かの別れ道が訪れるのだ、誰だって多少は緊張するだろう。
 もちろんフレアだって今日が来ることに怖さを感じる時もあった。
 できる備えはサボらずすべて行った。持てる限りの力を使って試験を乗り越えた。だからきっと合格しているはず——そう思っていても、緊張というのは案外ゼロにはならないものだ。

 けれども、カステラの緊張は異様だ。

 まともな会話もできなくなるくらい弱っているというのは、驚きである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...