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45.嬉しい誘いあり!
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コザクラの誘いで、フレアはミルフィと共に食堂へ行く。
昨日に続けて今日も女子会的なイベントが開催されることとなった。
ただし、今日はリカルドはいない。フレアが彼に言わないでおいたのだ。食堂で過ごすだけならどうせ危険などないだろうから、言わなくても良いだろう——それがフレアの判断だった。
それに、リカルドを誘わなかった理由はもう一つある。
彼を何度も女子会に参加させるのは酷だから、という理由だ。
リカルドが女子好きであったなら、もっと気安く呼べただろう。共に盛り上がれたなら一石二鳥だ。
でも、現実はそうではなかった。
リカルドは女の子の中に一人入るのがあまり好きではないようなのである。
そんな彼を二日連続で誘う気にはなれず、フレアはこの会については黙っておくことにした。
「コザクラちゃんが誘ってくれるなんて思わなかったわ! うふふ。幸せ」
ミルフィはとてつもなく機嫌が良い。男子がいないからか、向こうから誘ってもらえたのが嬉しかったからか、機嫌の良さの訳は定かではないが。ただ、彼女が上機嫌であることは確かだった。
「試験……終わりましたね。ミルフィさんは、できましたか……?」
今日のスイーツはどら焼きなるもの。
二枚のパンケーキのような物体で餡を挟んだ焼き菓子だ。
以前フレアが食堂のおばさんから聞いた話によれば、どら焼きというのはこの国で生まれた菓子ではないらしい。ずっと東にある国にて誕生した菓子が、その国の商人によって広められたのだとか。
「そうねぇ。まぁまぁってところ? あたし、実技の方が好きなのよねー」
「実技……! 凄いですね」
「あら! コザクラちゃんったら褒めてくれるの? やっさしぃ!」
「い、いえ……思ったことを、言っただけ、です」
食堂は久々に賑わっていた。昨日までとは利用者数が明らかに違う。席の埋まり方も、昨日と今日では大きく異なっている。ということは、ここしばらくおやつの時間の食堂利用者数が減っていたのは試験のせいだったということなのだろう。
「フレアさんは……試験、どうでしたか……?」
それまでミルフィと喋っていたコザクラが、急にフレアに話を振った。
「私は結構頑張ったわ!」
フレアは迷いなくそう答えた。
敢えて控えめに言うこともないかなと思って。
「す、凄い……自信たっぷり、ですね……!」
「でも、成績が良いかどうかは分からないわ。魔術実技なんて怪しいかもしれないし。何とか合格を願いたいけど」
フレアは包み紙ごとどら焼きを持ち上げる。そして、その端に、思いきって噛みつく。刹那、口腔内に砂糖のような甘い香りが広がった。慎ましい甘さとふんわりした食感が合わさり、見事な美味しさを作り上げている。
「……フレアさん、どら焼き……美味しそうに、食べますね」
「え?」
「何だか……幸せそう」
ふふっ、と柔らかな笑みをこぼすコザクラは、天使か何かのようである。
控えめに笑う彼女には人離れした魅力があった。その魅力というのは、同性のフレアでさえうっとりしてしてしまうような魅力。言葉で言い表すのは難しいが、とにかく凄い。
「面白いことを言うのね! コザクラ」
フレアはどら焼きの一部を咀嚼しながら軽やかに返す。
「あ……は、はい……すみません……」
フレアは特に深く考えず返していたが、コザクラは少々畏縮してしまっている。
「待って待って。べつに変な意味で言ったわけじゃないのよ」
「すみません、器用でなくて……」
「気にしないで! これからも、言いたいことは何でも言ってちょうだいっ」
「はい……! ありがとうございます」
王女と異国の地を引く娘。本当なら出会うことのなかった二人だろう。けれども、ここで出会った。そして、出会ったからからこそ、友情が芽生えたのだ。
「ふふ。フレアちゃんとコザクラちゃん、絵になるわねぇ」
突如、ミルフィがそんな発言をした。
フレアとコザクラはほぼ同時に「え!」と発してしまう。
土日を終え、月曜日。
久々の授業だ。
とはいえ、試験は終わっているので、がっつりとした授業は行われない。
「今日は二時間通して計算大会をするヨゥ!」
フレアは何を行うのか知らなかった。が、朝一番タルタルから今日の予定を聞いた。何でも、計算大会を開催するとか。どんな行事なのだろう、と、フレアは密かに胸を高鳴らせる。
「ふぅえぇー……。計算なんてぇ……」
「カステラは計算は嫌い?」
「できないことは……ないですけどー……。とにかく面倒臭いですぅー!」
「そういうことなら、まだましね」
カステラは嫌がっている。だかフレアはそこまで嫌でない。基本的な計算ならできる、という、ちょっとした自信があるからだ。計算なら、城にいた頃から習ってきた。それゆえ、できないことはないのだ。もちろん、非常に難解な数式などが必要な計算なら、できるかどうか分からないけれど。
試験の結果が発表される日がついにやって来る。
結果発表があるということは事前に知らされていた。そのため、その日は朝から皆落ち着かない様子で。誰もが少なからず緊張感を抱えているようだった。
「きょ、きょ、今日……成績……発表の日……ですよねー……?」
カステラは朝から激しい胃痛に襲われていた。言葉を発するのもやっと、というくらいの、弱りぶりである。これには、フレアもさすがに動揺した。まさかこんなに弱っているとは思わなくて。
「もはや話せてないわよ? カステラ。そんなに体調が悪いの?」
「ふ、ふぅうぅ……ですぅー……」
卒業できるか否かの別れ道が訪れるのだ、誰だって多少は緊張するだろう。
もちろんフレアだって今日が来ることに怖さを感じる時もあった。
できる備えはサボらずすべて行った。持てる限りの力を使って試験を乗り越えた。だからきっと合格しているはず——そう思っていても、緊張というのは案外ゼロにはならないものだ。
けれども、カステラの緊張は異様だ。
まともな会話もできなくなるくらい弱っているというのは、驚きである。
昨日に続けて今日も女子会的なイベントが開催されることとなった。
ただし、今日はリカルドはいない。フレアが彼に言わないでおいたのだ。食堂で過ごすだけならどうせ危険などないだろうから、言わなくても良いだろう——それがフレアの判断だった。
それに、リカルドを誘わなかった理由はもう一つある。
彼を何度も女子会に参加させるのは酷だから、という理由だ。
リカルドが女子好きであったなら、もっと気安く呼べただろう。共に盛り上がれたなら一石二鳥だ。
でも、現実はそうではなかった。
リカルドは女の子の中に一人入るのがあまり好きではないようなのである。
そんな彼を二日連続で誘う気にはなれず、フレアはこの会については黙っておくことにした。
「コザクラちゃんが誘ってくれるなんて思わなかったわ! うふふ。幸せ」
ミルフィはとてつもなく機嫌が良い。男子がいないからか、向こうから誘ってもらえたのが嬉しかったからか、機嫌の良さの訳は定かではないが。ただ、彼女が上機嫌であることは確かだった。
「試験……終わりましたね。ミルフィさんは、できましたか……?」
今日のスイーツはどら焼きなるもの。
二枚のパンケーキのような物体で餡を挟んだ焼き菓子だ。
以前フレアが食堂のおばさんから聞いた話によれば、どら焼きというのはこの国で生まれた菓子ではないらしい。ずっと東にある国にて誕生した菓子が、その国の商人によって広められたのだとか。
「そうねぇ。まぁまぁってところ? あたし、実技の方が好きなのよねー」
「実技……! 凄いですね」
「あら! コザクラちゃんったら褒めてくれるの? やっさしぃ!」
「い、いえ……思ったことを、言っただけ、です」
食堂は久々に賑わっていた。昨日までとは利用者数が明らかに違う。席の埋まり方も、昨日と今日では大きく異なっている。ということは、ここしばらくおやつの時間の食堂利用者数が減っていたのは試験のせいだったということなのだろう。
「フレアさんは……試験、どうでしたか……?」
それまでミルフィと喋っていたコザクラが、急にフレアに話を振った。
「私は結構頑張ったわ!」
フレアは迷いなくそう答えた。
敢えて控えめに言うこともないかなと思って。
「す、凄い……自信たっぷり、ですね……!」
「でも、成績が良いかどうかは分からないわ。魔術実技なんて怪しいかもしれないし。何とか合格を願いたいけど」
フレアは包み紙ごとどら焼きを持ち上げる。そして、その端に、思いきって噛みつく。刹那、口腔内に砂糖のような甘い香りが広がった。慎ましい甘さとふんわりした食感が合わさり、見事な美味しさを作り上げている。
「……フレアさん、どら焼き……美味しそうに、食べますね」
「え?」
「何だか……幸せそう」
ふふっ、と柔らかな笑みをこぼすコザクラは、天使か何かのようである。
控えめに笑う彼女には人離れした魅力があった。その魅力というのは、同性のフレアでさえうっとりしてしてしまうような魅力。言葉で言い表すのは難しいが、とにかく凄い。
「面白いことを言うのね! コザクラ」
フレアはどら焼きの一部を咀嚼しながら軽やかに返す。
「あ……は、はい……すみません……」
フレアは特に深く考えず返していたが、コザクラは少々畏縮してしまっている。
「待って待って。べつに変な意味で言ったわけじゃないのよ」
「すみません、器用でなくて……」
「気にしないで! これからも、言いたいことは何でも言ってちょうだいっ」
「はい……! ありがとうございます」
王女と異国の地を引く娘。本当なら出会うことのなかった二人だろう。けれども、ここで出会った。そして、出会ったからからこそ、友情が芽生えたのだ。
「ふふ。フレアちゃんとコザクラちゃん、絵になるわねぇ」
突如、ミルフィがそんな発言をした。
フレアとコザクラはほぼ同時に「え!」と発してしまう。
土日を終え、月曜日。
久々の授業だ。
とはいえ、試験は終わっているので、がっつりとした授業は行われない。
「今日は二時間通して計算大会をするヨゥ!」
フレアは何を行うのか知らなかった。が、朝一番タルタルから今日の予定を聞いた。何でも、計算大会を開催するとか。どんな行事なのだろう、と、フレアは密かに胸を高鳴らせる。
「ふぅえぇー……。計算なんてぇ……」
「カステラは計算は嫌い?」
「できないことは……ないですけどー……。とにかく面倒臭いですぅー!」
「そういうことなら、まだましね」
カステラは嫌がっている。だかフレアはそこまで嫌でない。基本的な計算ならできる、という、ちょっとした自信があるからだ。計算なら、城にいた頃から習ってきた。それゆえ、できないことはないのだ。もちろん、非常に難解な数式などが必要な計算なら、できるかどうか分からないけれど。
試験の結果が発表される日がついにやって来る。
結果発表があるということは事前に知らされていた。そのため、その日は朝から皆落ち着かない様子で。誰もが少なからず緊張感を抱えているようだった。
「きょ、きょ、今日……成績……発表の日……ですよねー……?」
カステラは朝から激しい胃痛に襲われていた。言葉を発するのもやっと、というくらいの、弱りぶりである。これには、フレアもさすがに動揺した。まさかこんなに弱っているとは思わなくて。
「もはや話せてないわよ? カステラ。そんなに体調が悪いの?」
「ふ、ふぅうぅ……ですぅー……」
卒業できるか否かの別れ道が訪れるのだ、誰だって多少は緊張するだろう。
もちろんフレアだって今日が来ることに怖さを感じる時もあった。
できる備えはサボらずすべて行った。持てる限りの力を使って試験を乗り越えた。だからきっと合格しているはず——そう思っていても、緊張というのは案外ゼロにはならないものだ。
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