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前編
しおりを挟む月見うどんを食べながら。
昔の記憶を思い返す。
懐かしくほろ苦いあの記憶を――。
◆
そう、ほろ苦い記憶というのは、ある男性との婚約と婚約破棄までの記憶のこと。
彼と出会ったのは、ある茶会だった。
たまたま席が隣で向こうが声をかけてきてくれたことがきっかけとなって知り合いとなった。
それから定期的に二人で会うようになっていった。
ちなみに会っていた場所は大抵私の実家である。
いつも快くしかも熱心に家へ来てくれる彼を尊敬していたし、彼となら一緒に生きていけるかもしれないと思っていて――それまで結婚なんて考えたことはなかったけれど、彼といると少しそういうことを考えられる気がした。
で、やがて、私たちは将来結婚するという約束を結んだ。
けれど、婚約してから、彼の心は急激に冷めていったようで。
段々私を放置するようになり。
しまいには、他の女性とかなり密に二人きりで会うようになっていって。
それから少しして、彼は婚約の破棄を告げてきた。
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