想定外な理由で突如婚約破棄されてしまったのですが……!? ~嘘でしょ、って感じですけど、私は私の大切なものを優先して生きてゆきます~

四季

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3話

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 ふふ、と笑う母を見て、私も自然と笑顔になれた。

 私がここが好きだ。
 家というこの温かな居場所が。

 だから私は母と一緒にいたいし母の手料理を食べていたい、そして家族と仲良く穏やかに暮らしていきたい。

 ウィニオスに捨てられたって、それでもいい。

 何があったとしても、時が過ぎたとしても、きっと私の中では彼より美味な料理の方が大切な存在であり続けるだろう。


 ◆


 あの婚約破棄から一年、ウィニオスは一方的に捨てた恋人の女性に油をかけられたうえ火をつけられてしまい燃やされてしまったそうだ。

 それで彼は亡くなったようである。

 元恋人に火をつけるなんて、恋人の女性も大概怖い人だが……。

 ただ、ウィニオスが勝手なことを言い勝手な行動をして傷つけたのだろうと考えた時には、女性に対して若干同情してしまう部分もあった。

 だからといって火をつけるのはやり過ぎだろうが……。

 でも、彼女には彼女の思いがあったのだろう。

 そう考えると、どうしても、彼女だけが悪いとは思えないのだ。


 ◆


 あれから数年、私は母の紹介で知り合った三つ年上で艶のある茶色い髪が美しい青年と結婚した。

 彼は私の家族に対して良い印象を持ってくれているようで、母のことも大事にしてくれる。
 だからこそ、私は彼を想った。
 もちろん私のことを想ってくれることが一番嬉しいのだけれど、その私が大事にしている家族を大切なものだと受け入れてくれることも嬉しいことなのだ。

 私は彼を愛している。

 ここから、また、新しい物語を始めてゆこう。

 愛する人と共に。
 新たなる第一歩を踏み出す。


◆終わり◆
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