2 / 2
後編
しおりを挟む
「いや、まぁ、先ほどのは冗談だ。実際には、他にしてみたいことがある」
「してみたいこと?」
「接吻」
ウタは思わず噴き出しそうになった。
幸い、何も口に含んでいなかったので大惨事にはならなかったが。
「ま、また急ね……。でもどうして? もしかして、誰かに何か言われでもした?」
額の汗を拭きつつ、ウタは尋ねる。
「リベルテから『若い妻を放置していては、万が一ということがありますよ! 一度離れた心を取り戻すのは大変です!』と言われた」
ウィクトルは正直に答えた。それも、恥じらいなど微塵もないような真っ直ぐな目つきで。
「それ、絶対楽しまれてるわよ……」
「若い妻はやはり容易く気が変わるものか?」
「貴方だって若いじゃない。それに、私が移り気じゃないことは知っているでしょう」
「それはもちろん! 知っている!」
ウタは特別多くの異性から好まれるタイプではない。言い寄ってこられるという経験をしたことも、そんなにない。それがすべてを物語っている。
「では早速!」
ウィクトルは突然ウタの両肩を持つ。
目つきは真剣そのもの。前線で戦う者のような、敵を寄せ付けないくらい鋭い目つきをしている。
「待って待って待って。さすがにいきなり過ぎよ」
「安心してくれ、ウタくん。先日歯医者で歯垢クリーニングを済ませてきた、虫歯もない。そして、歯磨きも今日起きてから十回は行った。殺菌作用のある薬でうがいもした。何も案ずるな」
「逆に生々しいわ……」
ウィクトルは物凄い勢いで喋り「不衛生でない」ということを主張するが、ウタは少し引いたような顔をしていた。
が、次の瞬間。
ウタはウィクトルの頬に軽く唇を添える。
「これでいいんじゃない?」
そう言って、ウタは微笑む。
「まぁ、正直私も詳しくはないから……よく分からないけど」
すぐ近くにいる二人の視線が静かに重なる。
「このくらいの方が生々しくなくて良いじゃない?」
「確かに。では返そう」
そう述べて、ウィクトルはウタのやや赤みを帯びた頬に軽く口づけをする。
「これで心は離れないな?」
「……いや、べつに、何もしなくても心は離れないのよ」
◆おわり◆
「してみたいこと?」
「接吻」
ウタは思わず噴き出しそうになった。
幸い、何も口に含んでいなかったので大惨事にはならなかったが。
「ま、また急ね……。でもどうして? もしかして、誰かに何か言われでもした?」
額の汗を拭きつつ、ウタは尋ねる。
「リベルテから『若い妻を放置していては、万が一ということがありますよ! 一度離れた心を取り戻すのは大変です!』と言われた」
ウィクトルは正直に答えた。それも、恥じらいなど微塵もないような真っ直ぐな目つきで。
「それ、絶対楽しまれてるわよ……」
「若い妻はやはり容易く気が変わるものか?」
「貴方だって若いじゃない。それに、私が移り気じゃないことは知っているでしょう」
「それはもちろん! 知っている!」
ウタは特別多くの異性から好まれるタイプではない。言い寄ってこられるという経験をしたことも、そんなにない。それがすべてを物語っている。
「では早速!」
ウィクトルは突然ウタの両肩を持つ。
目つきは真剣そのもの。前線で戦う者のような、敵を寄せ付けないくらい鋭い目つきをしている。
「待って待って待って。さすがにいきなり過ぎよ」
「安心してくれ、ウタくん。先日歯医者で歯垢クリーニングを済ませてきた、虫歯もない。そして、歯磨きも今日起きてから十回は行った。殺菌作用のある薬でうがいもした。何も案ずるな」
「逆に生々しいわ……」
ウィクトルは物凄い勢いで喋り「不衛生でない」ということを主張するが、ウタは少し引いたような顔をしていた。
が、次の瞬間。
ウタはウィクトルの頬に軽く唇を添える。
「これでいいんじゃない?」
そう言って、ウタは微笑む。
「まぁ、正直私も詳しくはないから……よく分からないけど」
すぐ近くにいる二人の視線が静かに重なる。
「このくらいの方が生々しくなくて良いじゃない?」
「確かに。では返そう」
そう述べて、ウィクトルはウタのやや赤みを帯びた頬に軽く口づけをする。
「これで心は離れないな?」
「……いや、べつに、何もしなくても心は離れないのよ」
◆おわり◆
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる