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後編

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 ◆


 あれから二年。

 一年ほど前に国内で流行し始めた不治の病を治す効果が私の腕――否、腕を構成する鉱物に――含まれていることが判明したために、私は一躍時の人となった。

 この腕は何度砕いても蘇る。
 それゆえ私はこの奇跡の鉱物を無限に取り出すことができるのだ。

 それを販売し、大金持ちになれた。

 そして、救国の乙女と呼ばれるようになり、求婚してきた王子と結婚。

 今では王子の妻として生きている。

 オージーとは階級が変わった。
 だからもうきっと二度と会うことはないだろう。

 それに、もしどこかで出会ったとしても、以前のような関係ではない。

 私は王子の妻なのだから。

 彼にあれこれ心ない言葉を投げつけられるような、いろんな意味で弱い私は消えた。

 今や私は国を救った英雄。
 もう誰も私を悪く言うことなどできやしない。

「ここへ来てくれてありがとう」
「いえ……」
「君がこうして傍にいてくれて嬉しいよ、本当に」

 王子はいつだって優しい。
 そしてまた私の母のことまでも受け入れてくれている。

 すべてを理解してもなお傍にいてくれる人。

 彼に出会えて本当に良かった。


 ◆


 これは後に聞いた話だが。

 オージーは流行り病にかかるも鉱物を使っての治療を「気持ち悪い」と言って拒否したそう。それによってこじらせてしまったそうで。病状は悪化の一途を辿り、その結果、彼は呼吸機能を八割ほど喪失してしまったそうだ。

 彼はもうまともには生きてゆけないだろう。

 生命があっても、以前のような日常や自立した生活などはどうやっても手に入らない。


◆終わり◆
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