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前編
しおりを挟む「フライドチキン作った!」
一年ほど前に結婚した夫でエッフェルリークは、たびたび意外なことを言ってくる。
「え!?」
「どう? 初めて作ったんだけど~……美味しそうにできた、かな?」
彼が手にしているトレイの上には大量のフライドチキンが乗っている。
「凄いわ!」
「えへへ」
彼と出会ったのは、婚約破棄されて悲しくなっていた雨の日であった。
落ち込んでいた私の話を彼はじっくりと聞いてくれて。そこから徐々に関係は進展していった。で、気づけば婚約者同士になっていて。その流れに乗って結婚に至り、正式に夫婦となった。
「どうやって作ったの!? しかも初めて!?」
「うん、初めて作った」
「ええっ……それなのにこのクオリティなの……!?」
「そうなんだ。……美味しいかどうかは分からないけど」
「素敵ね! さすがだわ、エッフェルリーク。早速食べてみましょう!」
「うんうん! 味見して!」
彼と一緒にいるといつも何かと賑やかで、ちっとも飽きない。
……ただ、驚かされることは多いけれど。
でもそれも含めて彼の良さ。
私はそう思っている。
前向きな意味での意外性、それこそが彼の良い点である。
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