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44.雨の日の進展
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昨夜から降り始めた雨は、止まることを知らず、夜が明けてもなお地上を濡らし続けている。家の中にいても、雫が屋根を叩く規則的な音が聞こえて。雨降りなのだと感じさせる。
雨の日に湧き上がってくる、湿った土の匂い。私はそれが嫌いではない。外へ出づらいという意味では雨は困ってしまうけれど、この世の汚いものすべてを洗い流してくれるような雨自体は好んでいる。
茶葉専門店は一応開けている。
カウンターのところにはダリアが待機しているけれど、客がやって来た音はまだ一度も聞いていない。
この天気では旅行者は来ないだろう。宿で待機するか宿からそこまで離れない場所を散策するかだろうから、こんなところまでは来そうにない。もし来店するとしたら近所の人。しかし、近所の人でいつもうちの店を利用してくれている人といったら限られている。その限られた人たちの中で、敢えて今日買い物に来る人がいるかとなると、誰かが来る可能性はかなり低いはずだ。
ダリアがカウンターのところに待機しているのは、あくまで『もしもに備えて』である。
店を開けている以上、誰かがカウンターのところにいなくてはならないのだ。
「シュヴェーアさん、何をしているの?」
「……素振り」
外に出られなくとも、シュヴェーアの心は変わっていなかった。
彼は家の中で素振りに勤しんでいる。
「頑張るのね」
「……いや、これは……習慣、だ」
銀色の刃のついた剣を他人の家の中で振り回すというのはどうなのだろうか。
いや、べつに、素振りをすることを悪いことだと言う気はないけれど。
「習慣、かぁ。凄いのね」
「……いや、普通だ」
剣が空を切るたび、しゅんと細い音が鳴る。風を切るような軽やかな音は、予想以上に耳ざわりが良かった。理由は分からないが、心地よい。
「……ところで、だが」
「何?」
「……いつ……結婚するのか」
「え!?」
唐突過ぎる話題を振られ、反射的に口を大きく開けてしまう。急過ぎやしないだろうか。
「ど、どうして? いきなり?」
「……いずれ、と、言いつつ……永遠に、その時が……来んということも、考えられる……」
シュヴェーアは珍しく長文を発した。
素振りはもちろん続けている。
「……具体的な、ことを……そろそろ、考えねば」
「た、確かに。それはそうね」
夢をみるのは容易い。いつか、と語るのは容易い。けれども、その理想を実現させるためには行動しなければ意味がないのだ。語りたいだけならそれで問題ないけれど、実現させたいなら語るだけでは不十分。思いつきを実現に繋げるためには、現実的なところを詰めて考えていかなくてはならない。
「でも、何から考えれば良いのかしら」
「……金なら、ある」
「えっ。そうなの?」
「……甲冑を……売ると、いい」
甲冑を売る。その発想は私にはなかった。甲冑は、私が彼に初めて出会った日、彼が身につけていたものだ。今はもう使っていないので、用なしと言えば用なしである。だが、彼にとっては大切なものではないのだろうか。それを売り払ってしまって、後悔はしないのだろうか。後悔する可能性が一パーセントでもあるのならば、私は、売ることに賛成はできない。
「でもあれは大切なものなんじゃ……?」
「……いや、そこまで……大切なもの、ではない」
「そうだったの」
「……あぁ」
頷くシュヴェーアの瞳に偽りはなかった。彼の瞳は空のように澄んでいて、穢れなど知らない赤子のそれのようだ。
「……甲冑を、売れば……結婚式代に、当てられる……そんな、気がする」
妙に生々しい話だ。
でも、シュヴェーアが本当にその気になってくれていることが伝わってくるのは、嬉しいこと。
「うちだって貯金はあるはずよ。母さんに聞いてみるわ」
「……相談、すべきかも……しれん」
我が家の家計を管理しているのはダリア。よって、お金のことはダリアに聞くのが早い。
だから私はカウンターの方へと歩き出す——ダリアに相談してみるために。
「結婚式の費用? あるわよ! もちろん! 用意してるわよー」
ダリアに結婚式の費用について尋ねてみたところ、そんな言葉が返ってきた。
「それより何? もう結婚するのー?」
「シュヴェーアさんは色々考えてくれていたみたいで……」
「あらそう!」
それにしても、結婚話をするダリアはとても楽しそうだ。
私が結婚することが嬉しいのか、それ以外の理由があるのか、そこははっきりしないけれど。
「甲冑を売ったら、とか言ってるの」
シュヴェーアが言っていたことを告げると、ダリアは口を大きく開けながら放つ。
「えぇー!? 売るの? 甲冑を?」
ダリアは物凄く豪快な驚き方をする。
目や口を大きく開け、両手を軽く掲げて。かなりのビッグリアクションだ。
私もダリアのように大きなリアクションを取れる人になってみたい。そうなれたら、もっと楽しく生きられるような気がするから。
感情を露わにするというのは、人間が生きていくうえで大切なこと。私はそう思う。
「大切なものだったらと思うと、どうなのかなって思いはするのだけれど……」
「そうねー。でも、セリナは安心していいのよ」
「……どういうこと?」
「お金ならあるもの! あ、だからね、甲冑は置いていて大丈夫よー」
ダリアが述べた言葉の意味を即座に理解することはできなかった。が、後から色々付け加えてくれたから、何とか理解することができた。甲冑のことは心配しなくていいし売らなくていい、ということなのだろう。
「な、なるほど。そういうことだったのね」
「セリナの結婚のことは任せてちょうだい!」
不安要素が何一つなくなったわけではないけれど、お金の心配をしなくて良いならそれはありがたいことだ。
「でも、いよいよそんなことを考えるようになってきたのねー。あぁ、何だか感慨深いわー」
ダリアは浮かれている。私よりもずっと幸せそうな顔をしていた。まるで彼女が結婚を控えているかのよう。私は母の再婚を迎えるかのような心情にならざるを得ない。
「懐かしいわ。私の結婚式はね、大規模ではなかったけれど、でもそれはもう感動的だったのよー」
「そ、そう……」
母親からいきなり結婚式の時のことを聞かされても、反応に困ってしまう。
こちらから「聞かせて」と頼んだのならともかく。
「純白のドレスを着て! 花束を持って! ああ、懐かしいわぁー」
ダリアは両手を頬に当て、過去を懐かしむような表情で、くるくると回転する。軽やかな足取りが、舞踊のようだ。何という舞踊に似ているか、までは分からないけれど。
とにかく、ダリアは一人幸せそう。
でも、忙しい毎日を過ごしているのだから、たまにはそんな日があっても良いのかもしれない。
雨の日に湧き上がってくる、湿った土の匂い。私はそれが嫌いではない。外へ出づらいという意味では雨は困ってしまうけれど、この世の汚いものすべてを洗い流してくれるような雨自体は好んでいる。
茶葉専門店は一応開けている。
カウンターのところにはダリアが待機しているけれど、客がやって来た音はまだ一度も聞いていない。
この天気では旅行者は来ないだろう。宿で待機するか宿からそこまで離れない場所を散策するかだろうから、こんなところまでは来そうにない。もし来店するとしたら近所の人。しかし、近所の人でいつもうちの店を利用してくれている人といったら限られている。その限られた人たちの中で、敢えて今日買い物に来る人がいるかとなると、誰かが来る可能性はかなり低いはずだ。
ダリアがカウンターのところに待機しているのは、あくまで『もしもに備えて』である。
店を開けている以上、誰かがカウンターのところにいなくてはならないのだ。
「シュヴェーアさん、何をしているの?」
「……素振り」
外に出られなくとも、シュヴェーアの心は変わっていなかった。
彼は家の中で素振りに勤しんでいる。
「頑張るのね」
「……いや、これは……習慣、だ」
銀色の刃のついた剣を他人の家の中で振り回すというのはどうなのだろうか。
いや、べつに、素振りをすることを悪いことだと言う気はないけれど。
「習慣、かぁ。凄いのね」
「……いや、普通だ」
剣が空を切るたび、しゅんと細い音が鳴る。風を切るような軽やかな音は、予想以上に耳ざわりが良かった。理由は分からないが、心地よい。
「……ところで、だが」
「何?」
「……いつ……結婚するのか」
「え!?」
唐突過ぎる話題を振られ、反射的に口を大きく開けてしまう。急過ぎやしないだろうか。
「ど、どうして? いきなり?」
「……いずれ、と、言いつつ……永遠に、その時が……来んということも、考えられる……」
シュヴェーアは珍しく長文を発した。
素振りはもちろん続けている。
「……具体的な、ことを……そろそろ、考えねば」
「た、確かに。それはそうね」
夢をみるのは容易い。いつか、と語るのは容易い。けれども、その理想を実現させるためには行動しなければ意味がないのだ。語りたいだけならそれで問題ないけれど、実現させたいなら語るだけでは不十分。思いつきを実現に繋げるためには、現実的なところを詰めて考えていかなくてはならない。
「でも、何から考えれば良いのかしら」
「……金なら、ある」
「えっ。そうなの?」
「……甲冑を……売ると、いい」
甲冑を売る。その発想は私にはなかった。甲冑は、私が彼に初めて出会った日、彼が身につけていたものだ。今はもう使っていないので、用なしと言えば用なしである。だが、彼にとっては大切なものではないのだろうか。それを売り払ってしまって、後悔はしないのだろうか。後悔する可能性が一パーセントでもあるのならば、私は、売ることに賛成はできない。
「でもあれは大切なものなんじゃ……?」
「……いや、そこまで……大切なもの、ではない」
「そうだったの」
「……あぁ」
頷くシュヴェーアの瞳に偽りはなかった。彼の瞳は空のように澄んでいて、穢れなど知らない赤子のそれのようだ。
「……甲冑を、売れば……結婚式代に、当てられる……そんな、気がする」
妙に生々しい話だ。
でも、シュヴェーアが本当にその気になってくれていることが伝わってくるのは、嬉しいこと。
「うちだって貯金はあるはずよ。母さんに聞いてみるわ」
「……相談、すべきかも……しれん」
我が家の家計を管理しているのはダリア。よって、お金のことはダリアに聞くのが早い。
だから私はカウンターの方へと歩き出す——ダリアに相談してみるために。
「結婚式の費用? あるわよ! もちろん! 用意してるわよー」
ダリアに結婚式の費用について尋ねてみたところ、そんな言葉が返ってきた。
「それより何? もう結婚するのー?」
「シュヴェーアさんは色々考えてくれていたみたいで……」
「あらそう!」
それにしても、結婚話をするダリアはとても楽しそうだ。
私が結婚することが嬉しいのか、それ以外の理由があるのか、そこははっきりしないけれど。
「甲冑を売ったら、とか言ってるの」
シュヴェーアが言っていたことを告げると、ダリアは口を大きく開けながら放つ。
「えぇー!? 売るの? 甲冑を?」
ダリアは物凄く豪快な驚き方をする。
目や口を大きく開け、両手を軽く掲げて。かなりのビッグリアクションだ。
私もダリアのように大きなリアクションを取れる人になってみたい。そうなれたら、もっと楽しく生きられるような気がするから。
感情を露わにするというのは、人間が生きていくうえで大切なこと。私はそう思う。
「大切なものだったらと思うと、どうなのかなって思いはするのだけれど……」
「そうねー。でも、セリナは安心していいのよ」
「……どういうこと?」
「お金ならあるもの! あ、だからね、甲冑は置いていて大丈夫よー」
ダリアが述べた言葉の意味を即座に理解することはできなかった。が、後から色々付け加えてくれたから、何とか理解することができた。甲冑のことは心配しなくていいし売らなくていい、ということなのだろう。
「な、なるほど。そういうことだったのね」
「セリナの結婚のことは任せてちょうだい!」
不安要素が何一つなくなったわけではないけれど、お金の心配をしなくて良いならそれはありがたいことだ。
「でも、いよいよそんなことを考えるようになってきたのねー。あぁ、何だか感慨深いわー」
ダリアは浮かれている。私よりもずっと幸せそうな顔をしていた。まるで彼女が結婚を控えているかのよう。私は母の再婚を迎えるかのような心情にならざるを得ない。
「懐かしいわ。私の結婚式はね、大規模ではなかったけれど、でもそれはもう感動的だったのよー」
「そ、そう……」
母親からいきなり結婚式の時のことを聞かされても、反応に困ってしまう。
こちらから「聞かせて」と頼んだのならともかく。
「純白のドレスを着て! 花束を持って! ああ、懐かしいわぁー」
ダリアは両手を頬に当て、過去を懐かしむような表情で、くるくると回転する。軽やかな足取りが、舞踊のようだ。何という舞踊に似ているか、までは分からないけれど。
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