読書にしか興味のない女に価値はない、本当にそうなのでしょうか？

前編

「貴様のような読書にしか興味のない女、価値などない！　よって、婚約は破棄とする！」

　小規模領主の家の子息である婚約者ボーデルハードより婚約破棄を告げられたのは、地域主催のあるパーティーの最中であった。

　彼はいきなりそんなことを大声で言い出して。
　周囲の人たちには驚いたような戸惑ったようなそんな顔をされてしまう。

　だがそれは仕方ないことだとも思う。だっていきなりそんなことを大きな声で言い出す人物が現れたのだから。そんな状況に遭遇すれば誰だって何とも言えない気持ちになるだろう。私だって第三者としてその場に居合わせたなら皆と同じような反応をしてしまっていたと思うし。

「面白くない女は俺の傍にいる価値がないんだ、分かったか？」
「……本気でそのようなことを仰っているのですか」
「当たり前だろう。女の価値はいかに男を楽しませるかにあるんだ、それゆえ貴様は無価値の極み。読書好き女なんぞに価値はない」

　そこまで言うなら仕方ない。

　別れよう。
　離れよう。

　きっと私たちにはそれしかないのだ。

　分かり合う方法なんてないだろう。