誰もが居場所を求めてる。 ~人と魔の者の物語~

四季

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ノワール 復讐はしない、そんな望みはない。

前編

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 それは、ノワールがゼツボーノを吸い込んだ状態で討伐隊所有の施設に収容されて少し経った頃のこと。

「耐久試験?」

 疑問符のついた表情で聞いた言葉を繰り返すノワール。

「ええ、そうです。我々は魔の者についてそれほど知らない、だからこそ、魔の者に関する情報を色々得たいのです」

 討伐隊の男性隊員は淡々と事情を話した。

「……何すればいいの」

 ノワールは眉を寄せつつ尋ねる。

「そうですね。何をすればどうなるかという実験を行ったり、特殊装置の効果を調べたり、ですかね」

 男性隊員がすらすらと説明すれば。

「そう。……いいよ、それでも」

 少し俯いたまま、ノワールは受け入れた。

「ではそれで、期間は二年間になります」
「……二年」
「まだ良い方でしょう? 二年だけで済むのですから。本来ならもっと長期間自由を奪われるところです」
「ん、分かった」
「ではそういうことで」

 こうして話はまとまって、ノワールは実験体としてその施設内に留まることとなったのである。

 ――しかしそれからの日々は苦難の日々でもあった。

 物理的な攻撃を加えられたり、討伐隊が使っている特殊な成分を含んだ武器で攻撃されたり、果てには特殊な電波や液体を使ってどこまで耐えられるものかの実験を行われたり。とても倫理的に良いとは言えないような内容の実験が並んでいて。けれども、人権などありはしない魔の者を使っての実験に倫理観が求められるはずもなく、死なない範囲でやりたい放題の実験内容が並んでいたのである。

 疲れ果ててベッドへ帰った時、ノワールは、大抵その内側に在るゼツボーノから黒い言葉を囁かれる。
 たとえば『何と理不尽なやつら……あのような心のない輩は消えるべきだろう、復讐すべきだ』とか。
 ゼツボーノはかつて心ない拷問に苦しんだ記憶に今のノワールの姿を重ねて見ては人々に対して苛立っていた。

 だがノワールはいつも「しない」と答えるだけであった。
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