誰もが居場所を求めてる。 ~人と魔の者の物語~

四季

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ゼツボーノ 闇の果て

後編

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「お前は違法に闇魔法を使った罪人だ、よって拘束する」
「あ、あれは……正当防衛です……!」
「知るか! 悪しき術を使っておいて言い逃れできると思うな!」
「ですが……」
「黙れ!」

 ――今日からお前は罪人だ。

 冷ややかな言葉が胸を貫いた。

 以降、我は人として扱われなくなった。
 その身は人であるにも関わらず、だ。
 それほどに恐ろしかったのだろう、我のこの力が。

 拘束されてからの日々は絶望に満ちていた。が、それでもまだ、不運と思える部分はあった。そこが唯一の隙間、光が入ってくる部分でもあったのだが。ただ、それすらも、やがて閉ざされることとなる。

 我は聞いてしまったのだ。
 村の者が意図的に賊をけしかけ我に闇魔法を使わせようと計画していたことを。

 ただ、その時には既に、我の身体は拷問で弱っておった。

 だからこの憎しみ怨みは次へ持ち越すことにした。

 ――が、我は死後、空に還ることができなかった。

 つもりにつもった怨みは我を異形へと変えた。
 そうして我は今の我となる。

 これが、ゼツボーノ・オ・クソコの誕生。

 もはや人という存在を許すことはできぬ。よって復讐する。どこまでも、徹底的に。そうしなければ、この憎しみは消えない。そして我の怒りもまた収まらぬ。だからこそ、人間を消してしまうところまでやる。

 心は決まっていた。


 ◆


 ――ソレア、お前もまた異端よ。

 だが、だからこそ分かり合えると思っておった。

 この苦しみ。
 この痛みを。

 同じように感じているものと。

 だが。

「やめてください!」

 お前は望んではいなかった。

「ゼツボーノさん、こんな戦いは無意味です! 何も生まれません! ですから、もうやめてください!」

 我とお前は、お互い魔法を使える人間ではあるが、同じではなかった。

「ソレアはアンタとは違う!」

 ノワの叫びもまた、我にその事実を突きつける。

 ああそうか、どうせ我を理解し我と共に歩める者などいはしなかったのだ。

 どうせ、誰も我を分からない。
 いや、理解しようとすらしない。

 我は永遠に一人、孤独だ――この世から塵となって消えるその日まで。

 ならばどこまでも寂しく、それでも強く。
 望むものはすべて無理矢理手に入れて。
 そうやって己の望む道を突き進むしかない、そう思った、のに。

 ――なぜだか我はノワに吸い込まれ、気づけばやつの内側に閉じ込められてしまって。

 我が生み出したノワごときに?

 馬鹿な。

「これでもうアンタはソレアに手出しできない……ボクの勝ちだ」

 我を吸い込み体内へ宿したノワは我の抵抗に苦しみつつもそう言って口角を持ち上げた。

 ……こやつはこんなやつだっただろうか?

 我が生み出した時にはもっと淡々としていた気がするが。

 いや、変わったのかもしれない。

 出会い、別れ、様々なことを経験して……誰しもそうやって良くも悪くも少しずつ変わりゆくもの、か。

 ――我もまた、かつてそうであったように。


◆終わり◆
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