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2話「我慢してきた、なのに」
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こちらはずっと彼の女遊びを咎めることなく我慢してきたのに――なぜあんなことだけで捨てられなくてはなかたのだろう。
しかも、股の緩い女、などという汚名を着せられて。
まったくもって理解不能だ。
どうして私だけが悪とならなくてはならないのか。
そんな風にもやもやしながら街で暮らし始めたちょうどその頃。
一人で暮らしている自宅に見知らぬ男性がやって来る。
「貴女が元・王子の婚約者ですね?」
黒い神父のような服を着た男性はいきなりそう尋ねてきて、こちらが戸惑っていると。
「実は、わたくし、魔界から参りました」
すぐには理解できず。
「え……」
それしか言えずにいると。
「本題から話させていただきます――我らが王の妻となってはくださいませんか?」
黒い服の彼はそう言った。
彼の話によれば、彼らの王である魔界の王ポポが私を妻にしたいと言っているのだそう。ちなみに、ポポが私を知ったのは、アンドリアンの婚約者をお披露目する会の時だったらしい。その時、王子の婚約者となる私を目にして、運命を感じたのだそうだ。
もっとも、私は王子の婚約者だったので、向こうはその時すぐに動くことはできなかったようだが――。
「いきなりで申し訳ありません」
「いえ……」
「で、どうでしょうか。考えてみてはいただけませんか?」
魔界の王だというポポのことを私は知らない。
顔を見たことさえない。
それでも……。
もし彼のところへ行ったら、また『股の緩い女』と思われてしまうだろうか? いや、それでもいい。もはや縁の切れた相手からどう思われようが……正直そんなことはどうでもいいことだ。貶められる? やはり、と馬鹿にされる? いやいや、私の評判などもはや崩れ去ったようなもの。これ以上悪化することはない。
――ならば。
「そうですね。前向きに考えてみたいです」
私はそう返事した。
それから数日、魔界から迎えの隊列がやって来る。
私はそれらに囲まれながら国を出る。
魔界へ行くのだ。
しかも、股の緩い女、などという汚名を着せられて。
まったくもって理解不能だ。
どうして私だけが悪とならなくてはならないのか。
そんな風にもやもやしながら街で暮らし始めたちょうどその頃。
一人で暮らしている自宅に見知らぬ男性がやって来る。
「貴女が元・王子の婚約者ですね?」
黒い神父のような服を着た男性はいきなりそう尋ねてきて、こちらが戸惑っていると。
「実は、わたくし、魔界から参りました」
すぐには理解できず。
「え……」
それしか言えずにいると。
「本題から話させていただきます――我らが王の妻となってはくださいませんか?」
黒い服の彼はそう言った。
彼の話によれば、彼らの王である魔界の王ポポが私を妻にしたいと言っているのだそう。ちなみに、ポポが私を知ったのは、アンドリアンの婚約者をお披露目する会の時だったらしい。その時、王子の婚約者となる私を目にして、運命を感じたのだそうだ。
もっとも、私は王子の婚約者だったので、向こうはその時すぐに動くことはできなかったようだが――。
「いきなりで申し訳ありません」
「いえ……」
「で、どうでしょうか。考えてみてはいただけませんか?」
魔界の王だというポポのことを私は知らない。
顔を見たことさえない。
それでも……。
もし彼のところへ行ったら、また『股の緩い女』と思われてしまうだろうか? いや、それでもいい。もはや縁の切れた相手からどう思われようが……正直そんなことはどうでもいいことだ。貶められる? やはり、と馬鹿にされる? いやいや、私の評判などもはや崩れ去ったようなもの。これ以上悪化することはない。
――ならば。
「そうですね。前向きに考えてみたいです」
私はそう返事した。
それから数日、魔界から迎えの隊列がやって来る。
私はそれらに囲まれながら国を出る。
魔界へ行くのだ。
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