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3話「支えられて、生きている」

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 ◆


 あれから十数年、私はポポの妻として魔界で暮らしている。

 二人の子どもにも恵まれた。
 夫とは気が合った。

 かつて暮らしていたあの国へは、もう、十年以上戻っていない。

 最初は慣れないことがたくさんだった。魔界のことなんてまったく知らなかった私にとって、そこは異国中の異国で。そこの文化も礼儀もまったく知らず、すべてがゼロからの始まりで。苦労もしたけれど、いつも夫であるポポが支えてくれて、おかげで心折れることなく生きてこられた。

 それと、私の担当になってくれた侍女フォーリエ、彼女にも感謝している。

 気難しそうで眉間にしわを寄せたような顔つきが完成してしまっている彼女は、淡々としていて時に厳しいが、私が本当に困っている時にはいつも力になってくれた。

 どんな時も味方でいてくれた彼女の存在も大きかった。

 私がかつていたあの国は、今はもうないそうだ。他の国から侵略され、王族は色々な形ではあるが皆殺害されて――国民にも被害が出て、国土は他国のものとなったのだそう。

 でも私は生きている。

 婚約破棄されるなんて不運だと思った瞬間もあったけれど、結果的にはそれによって救われたとも言える。

 ちなみにアンドリアンはというと、敵が城に迫る頃、妻は置いて愛人数名と共にこっそり城を脱出したそうだ。

 だが、屋外で潜んでいる時に我慢しきれず愛人たちと関わりを持ってしまい、その声によって敵兵に発見されたらしい。

 結果――半裸で拘束され、恥をかくこととなったそうだ。


◆終わり◆
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