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はじめから愛していなかった、と言っておきながら、趣味に口出ししてくるなんて……それはもうただの迷惑な人ですよ。
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「お前のことははじめから愛していなかった、よって婚約は破棄とする」
婚約者である彼シヴェールがそんなことを告げてきたのは、なんてことのない平凡な冬のある日であった。
彼は唐突に私の家までやって来て、あまりないことなので珍しいなと不思議に思っていたのだけれど、するとそんなことを告げられたのだった。
「前から思ってたんだけどさ、お前、編み物しすぎじゃね?」
「え……ま、まぁ、確かに……編み物はしていましたけど……しすぎ、というのはよく分かりません」
「だってさぁ! 前! 俺のこと無視しただろ!」
「ええっ」
「編み物してて俺のこと無視したじゃねえか!」
「えええ……」
「何だ、その態度は」
「心当たりがありません」
「お、お前なぁ! 馬鹿にすんなよ? 舐めてんのか! 馬鹿にしやがって! 俺が言ったことが間違ってるわけがねえだろ!」
シヴェールは異様に怒っていて。
「ま、もうどうでもいいわ」
話している間ずっと彼は私を睨んでいた。
「いずれにせよ、お前はもう要らねえ女だ。じゃあな、バイバイ」
こうして私たちの関係はいきなり終わりを迎えることとなる。
――だがその数分後シヴェールは落命した。
心ない言葉を吐き捨てて私の家から出ていったシヴェールは、近くの大通りに出た瞬間前方不注意の暴走馬車にはねられ、そのまま命を落としてしまった。
一瞬にして落命したことはある意味救いであったのかもしれないけれど……ただ、あまりにも突然の死だったので、私もさすがにかなり驚いた。
◆
あれから数年、私は、王家が主催する編み物大会で優勝した。
参加のきっかけはシヴェールに言われた言葉だった。
彼があの時『お前、編み物しすぎじゃね?』といった言葉を投げてきた、そのことが人生のアイデアに繋がり、結果的に成功することができたのだった。
私はこの先も編み物を生業として歩んでゆくことになりそう。
でもそれで良かったと思う。
それでこそ私の人生だと。
この道を選んで良かった、今は迷いなくそう言える。
◆終わり◆
婚約者である彼シヴェールがそんなことを告げてきたのは、なんてことのない平凡な冬のある日であった。
彼は唐突に私の家までやって来て、あまりないことなので珍しいなと不思議に思っていたのだけれど、するとそんなことを告げられたのだった。
「前から思ってたんだけどさ、お前、編み物しすぎじゃね?」
「え……ま、まぁ、確かに……編み物はしていましたけど……しすぎ、というのはよく分かりません」
「だってさぁ! 前! 俺のこと無視しただろ!」
「ええっ」
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――だがその数分後シヴェールは落命した。
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一瞬にして落命したことはある意味救いであったのかもしれないけれど……ただ、あまりにも突然の死だったので、私もさすがにかなり驚いた。
◆
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でもそれで良かったと思う。
それでこそ私の人生だと。
この道を選んで良かった、今は迷いなくそう言える。
◆終わり◆
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