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前編
しおりを挟む「聞いてくれ! やばいんだ!」
かつて私をぼろくそに言って切り捨てた元婚約者の青年アベタスに急に呼び出されたと思ったら。
「婚約者に捨てられた! このままじゃ一人になってしまう!」
「はぁ……」
思わずこぼれる溜め息。
失礼だと思ってはいても意識してとめられるものではない。
「何だその反応! ま、いいさ。で、早速本題に入るが。改めて婚約してくれ――いや、してやってもいい」
「いえ結構です」
「やり直してやると言っているんだ!!」
「いやいやですからもういいんですよ、やり直してほしいなんて思っていません」
一方的に婚約破棄して傷つけておいて、いざ自分が捨てられたら元いた女のところにやって来る。
恥ずかしくはないのだろうか?
一度捨てた女と自分の都合でやり直そうとするなんて、愚かなことだとは思わないのだろうか。
いや、まぁ、そう思うならこんなこと言ってはこないか。
恥じらいなどない。
だからこそ平然とそんなことを言えるのだろう。
でも普通は心理的に抵抗がありそうなものだが。
「やり直せ!!」
「嫌です」
「何だと!? 生意気にもほどがあるぞ!!」
「アベタスさん、貴方がかつて私に何と言ったか……もうお忘れなのですか?」
私は彼に言われたことをすべてそのまま再現、口から出した。
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