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後編
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「ちなみに、婚約時の書類は読まれました?」
「さらっとだけー」
「きちんとは読んでいないのですか」
「何その言い方、父上に言いつけるよ。生意気な女だって騒ぐよ」
「申し訳ありません」
婚約時にこちらが用意した書類には、色々な場合の対応を書いていた。私が直接書いたわけではないけれど。私の身を案じていた親が用意してくれたのだ。
彼はそこにサインをした。
それはつまり、その書類に書かれていることを受け入れたということだ。
「婚約破棄の件、承知しました。それでは手続きを進めましょう」
「助かるー」
婚約破棄すれば損をするのはあちらだ。こちらへのダメージはそれほどなく、あちらはいろんな意味でダメージを受ける。恐らく評判も下がるだろう。それでも彼が婚約破棄したいなら、好きなようにすればいい。
◆
婚約破棄後、書面に記載されている内容に従い、彼側が一定額の支払いを求められることとなった。
相手が貧しくないということもあって、決して小さな額ではない。そのため、彼自身の所持金では足らなかった。彼は自分が所有していた高級品を数点売り払って、それによって得たお金も私への支払いにあてた。
この頃、王は息子の自己中心的な行動に怒り、いつもピリピリしていたらしい。
婚約破棄騒ぎが落ち着いた頃になって、王は彼を勘当すると宣言。もう王子ではない、とまで、国民の前ではっきりと述べた。
彼は城から追放された。
もはやどう頑張っても元の位に戻ることはできない。
それでも、気に入っていた女騎士への気持ちは捨てられず、彼女に何度もアプローチしていたらしい。会おうと言ったり、ちょっとした贈り物をしたり。懸命にアピールしていたそうだ。
けれども女騎士はもう振り向かなかったという。
その理由は、王子でないから、だったそうだ。
女騎士が彼に親切に接していたのは、あくまで、彼が王子という位にある人だったから。ただそれだけのことで。彼のことを愛しているから彼を大切にしている、というわけでなかったようだ。
結局彼は何も手に入れられなかった。
婚約者も、愛しい人も、所持していた高級品やお金も、結局すべてを失うこととなったのだ。
◆終わり◆
「さらっとだけー」
「きちんとは読んでいないのですか」
「何その言い方、父上に言いつけるよ。生意気な女だって騒ぐよ」
「申し訳ありません」
婚約時にこちらが用意した書類には、色々な場合の対応を書いていた。私が直接書いたわけではないけれど。私の身を案じていた親が用意してくれたのだ。
彼はそこにサインをした。
それはつまり、その書類に書かれていることを受け入れたということだ。
「婚約破棄の件、承知しました。それでは手続きを進めましょう」
「助かるー」
婚約破棄すれば損をするのはあちらだ。こちらへのダメージはそれほどなく、あちらはいろんな意味でダメージを受ける。恐らく評判も下がるだろう。それでも彼が婚約破棄したいなら、好きなようにすればいい。
◆
婚約破棄後、書面に記載されている内容に従い、彼側が一定額の支払いを求められることとなった。
相手が貧しくないということもあって、決して小さな額ではない。そのため、彼自身の所持金では足らなかった。彼は自分が所有していた高級品を数点売り払って、それによって得たお金も私への支払いにあてた。
この頃、王は息子の自己中心的な行動に怒り、いつもピリピリしていたらしい。
婚約破棄騒ぎが落ち着いた頃になって、王は彼を勘当すると宣言。もう王子ではない、とまで、国民の前ではっきりと述べた。
彼は城から追放された。
もはやどう頑張っても元の位に戻ることはできない。
それでも、気に入っていた女騎士への気持ちは捨てられず、彼女に何度もアプローチしていたらしい。会おうと言ったり、ちょっとした贈り物をしたり。懸命にアピールしていたそうだ。
けれども女騎士はもう振り向かなかったという。
その理由は、王子でないから、だったそうだ。
女騎士が彼に親切に接していたのは、あくまで、彼が王子という位にある人だったから。ただそれだけのことで。彼のことを愛しているから彼を大切にしている、というわけでなかったようだ。
結局彼は何も手に入れられなかった。
婚約者も、愛しい人も、所持していた高級品やお金も、結局すべてを失うこととなったのだ。
◆終わり◆
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