婚約破棄してもらえてラッキーです！ ～彼は無気力状態になってしまっているようですね～

前編

　婚約から半年。
　ここまで色々あった。

　婚約者オーディオはなかなかに自由人――いや、身勝手な人で――彼は私という婚約者がいてもなお好き放題していた。

　浮気、ギャンブル、暴力事件。

　どうしようもない人だった。

　でも、女性側からは基本的には婚約破棄を告げられない、というのがこの国の常識で。

　だからどうしようもなかった。
　どうあがいても逃げることはできない状態だった。

　――しかしチャンスが巡ってくる。

「なんだよ！　ちょっと遊びで浮気しただけだろ！　なのにやめてほしいだと!?　偉そうなんだよお前!!」
「ですから、意見を申し上げただけで……」
「うるさい！　口ごたえするな！」
「ですが……」
「黙れよ！　俺にあれこれ言うな、女だろ！」
「けれど、私にも心というものはあります。ですからどうか、少しは」

　言いかけて。

「もういい!!」

　遮られる。

「お前との婚約なんか、破棄だ!!」

　――こうして私はようやく彼から解放されたのだった。