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episode.14 謎だらけの一日目
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それからというもの、私はフランシスカと色々な話をした。
好きな食べ物や好みの色。どんな動物か好きかや、どの季節が一番過ごしやすいと思うか。話題はすべて、そんな、たわいないもの。今日出会ったばかりというのもあり、私も彼女も、相手の深いところを詮索するような真似はしなかった。
それでも、楽しい。心からそう思った。
今まであまり同年代の娘と話すことのなかった私にとって、彼女と過ごす時間は、宝石のように輝いて見える——いや、間違いなく輝いていたと思う。
こうして、帝都で過ごす初めての夜は、終わった。
翌朝。
私は何も分からぬまま、フランシスカについていく。
そして、トリスタンと合流した。
「トリスタン、おはよっ!」
「あぁ、おはよう」
「何それー。どうしてそんなに愛想ないの?」
フランシスカは相変わらずのハイテンションでトリスタンに絡んでいく。
トリスタンに接する時と私に接する時では、明らかに雰囲気が異なっている。言葉遣い自体はほぼ同じなのだが……不思議だ。
「マレイちゃん、よく眠れた?」
彼は白い衣装に身を包み、爽やかな青年といった空気を漂わせている。美しい顔立ちも健在だ。
「えぇ。フランさんにも親切にしてもらったわ」
「そっか。それなら良かった」
「フランさんも、トリスタンも、優しいわ。帝国軍、いい人がたくさんね」
今は純粋にそう思う。
まだ全員を知ったわけではない。だが、トリスタンもフランシスカも、悪い人ではなかった。そんな二人の仲間なら、きっと、悪人はいないだろうと思うのだ。
「マレイちゃんに褒められたら、少し照れるな」
「そう?」
意味がよく分からず首を傾げていると、トリスタンは目を細めてはにかむ。
「そうだよ。君なら、僕の深いところまで見てくれそうな気がする」
トリスタンの発言に私はきょとんとする外なかった。
だって、意味が分からないんだもの。
「とにかく行こうか。今日の予定は、朝食の後、簡単な審査だけだよ」
「少ないのね」
「え。もっと増やす?」
「いいえ。そういう意味じゃないわ」
それにしても、審査とは一体何なのだろう。
入隊試験のようなもの? 能力——あの赤い光の強さか何かを審査されるということ?
……いや。そもそも私は、まだ何も知らない。あの赤い光だって、私自身が意図して発したわけではないし。あの時、私はただ、助かることを願っただけ。だから、もう一度あれをできるかと言われれば、分からない。
トリスタンの横を歩けば歩くほど、私の脳内は混乱していく。それはもう、溜め息を漏らしたくなるほどに。
基地内にある広い食堂で朝食をとり、それから私は、基地の近くに建てられた修練場へと向かった。トリスタンによれば、審査はそこで執り行われるらしい。それを聞いて「実技系の審査なのだろうな」と察した私は、上手くやれるのかという不安に包まれながらも、前を向いて歩いた。
今さら逃げるわけにはいかない。
そんな風に、自身を鼓舞しながら。
その後、修練場へ着くと、白いシャツとズボンを渡され、着替えるよう命じられた。
なので私は、更衣室でワインレッドのワンピースを脱ぎ、指定された服に着替える。そして、速やかに更衣室を出る。
「フランさん!」
「遅かったね、マレイちゃん」
更衣室のすぐ外にいたフランシスカは、彼女らしからぬ淡白な声でそう言った。どうやら、あまり機嫌が良くないようだ。
「すみません」
「なーんてね。気にしなくていいよっ」
「……え?」
意図が掴めず戸惑っていると、彼女は呆れ顔になる。
「マレイちゃんって、冗談通じないよね」
「冗談、ですか?」
「あー、もういいもういい」
やれやれ、といったアクションをされてしまった。
私に理解力がないため、呆れられるのも仕方ないといえば仕方ない。だが、ここまで露骨にされると、さすがに少し悲しい気分になる。
「さ、行こっ」
「はい!」
気合いを入れて返事する。
すると彼女は、「マレイちゃんって面白いよね」と言い、クスクスと笑っていた。
もしかしたら私は、ややおかしいのかもしれない。
「マレイ・チャーム・カトレア、か。正直、素人の娘が化け物を倒せるとは思えないが……」
「真実です」
「お前がそう言うのなら、真実なのだろうな」
私とフランシスカが修練場のメインルームへ着いた時、トリスタンは黒い髪の女性と話をしていた。
女性は腰までの黒髪ストレートロング。そして、よく見ると美人だ。漆黒の瞳と血のように赤い口紅が印象的で、美少女のフランシスカでさえくすんで見えるほどの凛々しい美しさである。もちろん私など足下にも及ばない。
またしても美女が現れたことに、私は、動揺する外なかった。この化け物狩り部隊は、どうしてこうも美しい者ばかりなのか……。もはや帝国七不思議の一つと言っても差し支えなさそうである。
そんな彼女が、いきなり私へ歩み寄ってくる。
「グレイブだ。よろしく頼む」
彼女は手を差し出して、落ち着いた声色で挨拶してくれた。
離れていても美人だと分かったが、近くで見ると、その美しさをよりいっそう感じる。私とは完全に別世界の生き物のようだ。
漆黒の瞳は凛々しく、しかし女性らしさを失ってはいない。腰まで伸びた長い黒髪はしっとりと艶があり、まさに大人の女性といった感じである。
「初めまして、マレイです。よろしくお願いします」
「あぁ。これからよろしく」
彼女は、その美しさゆえに、近寄りがたい空気を漂わせている。けれども、感じの悪い人ではなさそうだ。声や口調は淡白だが、冷たさはない。
トリスタンとフランシスカが見守る中、私はそんなグレイブと握手を交わした。
好きな食べ物や好みの色。どんな動物か好きかや、どの季節が一番過ごしやすいと思うか。話題はすべて、そんな、たわいないもの。今日出会ったばかりというのもあり、私も彼女も、相手の深いところを詮索するような真似はしなかった。
それでも、楽しい。心からそう思った。
今まであまり同年代の娘と話すことのなかった私にとって、彼女と過ごす時間は、宝石のように輝いて見える——いや、間違いなく輝いていたと思う。
こうして、帝都で過ごす初めての夜は、終わった。
翌朝。
私は何も分からぬまま、フランシスカについていく。
そして、トリスタンと合流した。
「トリスタン、おはよっ!」
「あぁ、おはよう」
「何それー。どうしてそんなに愛想ないの?」
フランシスカは相変わらずのハイテンションでトリスタンに絡んでいく。
トリスタンに接する時と私に接する時では、明らかに雰囲気が異なっている。言葉遣い自体はほぼ同じなのだが……不思議だ。
「マレイちゃん、よく眠れた?」
彼は白い衣装に身を包み、爽やかな青年といった空気を漂わせている。美しい顔立ちも健在だ。
「えぇ。フランさんにも親切にしてもらったわ」
「そっか。それなら良かった」
「フランさんも、トリスタンも、優しいわ。帝国軍、いい人がたくさんね」
今は純粋にそう思う。
まだ全員を知ったわけではない。だが、トリスタンもフランシスカも、悪い人ではなかった。そんな二人の仲間なら、きっと、悪人はいないだろうと思うのだ。
「マレイちゃんに褒められたら、少し照れるな」
「そう?」
意味がよく分からず首を傾げていると、トリスタンは目を細めてはにかむ。
「そうだよ。君なら、僕の深いところまで見てくれそうな気がする」
トリスタンの発言に私はきょとんとする外なかった。
だって、意味が分からないんだもの。
「とにかく行こうか。今日の予定は、朝食の後、簡単な審査だけだよ」
「少ないのね」
「え。もっと増やす?」
「いいえ。そういう意味じゃないわ」
それにしても、審査とは一体何なのだろう。
入隊試験のようなもの? 能力——あの赤い光の強さか何かを審査されるということ?
……いや。そもそも私は、まだ何も知らない。あの赤い光だって、私自身が意図して発したわけではないし。あの時、私はただ、助かることを願っただけ。だから、もう一度あれをできるかと言われれば、分からない。
トリスタンの横を歩けば歩くほど、私の脳内は混乱していく。それはもう、溜め息を漏らしたくなるほどに。
基地内にある広い食堂で朝食をとり、それから私は、基地の近くに建てられた修練場へと向かった。トリスタンによれば、審査はそこで執り行われるらしい。それを聞いて「実技系の審査なのだろうな」と察した私は、上手くやれるのかという不安に包まれながらも、前を向いて歩いた。
今さら逃げるわけにはいかない。
そんな風に、自身を鼓舞しながら。
その後、修練場へ着くと、白いシャツとズボンを渡され、着替えるよう命じられた。
なので私は、更衣室でワインレッドのワンピースを脱ぎ、指定された服に着替える。そして、速やかに更衣室を出る。
「フランさん!」
「遅かったね、マレイちゃん」
更衣室のすぐ外にいたフランシスカは、彼女らしからぬ淡白な声でそう言った。どうやら、あまり機嫌が良くないようだ。
「すみません」
「なーんてね。気にしなくていいよっ」
「……え?」
意図が掴めず戸惑っていると、彼女は呆れ顔になる。
「マレイちゃんって、冗談通じないよね」
「冗談、ですか?」
「あー、もういいもういい」
やれやれ、といったアクションをされてしまった。
私に理解力がないため、呆れられるのも仕方ないといえば仕方ない。だが、ここまで露骨にされると、さすがに少し悲しい気分になる。
「さ、行こっ」
「はい!」
気合いを入れて返事する。
すると彼女は、「マレイちゃんって面白いよね」と言い、クスクスと笑っていた。
もしかしたら私は、ややおかしいのかもしれない。
「マレイ・チャーム・カトレア、か。正直、素人の娘が化け物を倒せるとは思えないが……」
「真実です」
「お前がそう言うのなら、真実なのだろうな」
私とフランシスカが修練場のメインルームへ着いた時、トリスタンは黒い髪の女性と話をしていた。
女性は腰までの黒髪ストレートロング。そして、よく見ると美人だ。漆黒の瞳と血のように赤い口紅が印象的で、美少女のフランシスカでさえくすんで見えるほどの凛々しい美しさである。もちろん私など足下にも及ばない。
またしても美女が現れたことに、私は、動揺する外なかった。この化け物狩り部隊は、どうしてこうも美しい者ばかりなのか……。もはや帝国七不思議の一つと言っても差し支えなさそうである。
そんな彼女が、いきなり私へ歩み寄ってくる。
「グレイブだ。よろしく頼む」
彼女は手を差し出して、落ち着いた声色で挨拶してくれた。
離れていても美人だと分かったが、近くで見ると、その美しさをよりいっそう感じる。私とは完全に別世界の生き物のようだ。
漆黒の瞳は凛々しく、しかし女性らしさを失ってはいない。腰まで伸びた長い黒髪はしっとりと艶があり、まさに大人の女性といった感じである。
「初めまして、マレイです。よろしくお願いします」
「あぁ。これからよろしく」
彼女は、その美しさゆえに、近寄りがたい空気を漂わせている。けれども、感じの悪い人ではなさそうだ。声や口調は淡白だが、冷たさはない。
トリスタンとフランシスカが見守る中、私はそんなグレイブと握手を交わした。
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